オンライン講座・コーチング契約書のよくある質問18|「返金不可」は書ける?「責任は負わない」は有効?

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法律・税務・士業全般

はじめに:個人がサービスを売る時代の、契約書の疑問


オンライン講座、コーチング、コンサルティング、オンラインサロン。個人が自分の知識やスキルを商品にして、消費者に直接売る商売が当たり前になりました。それにともなって、契約書や利用規約に関するご相談も年々増えています。
この記事では、講座型・伴走型のサービスを売る方からよくいただく質問を、18個のQ&Aの形でまとめました。質問は、実際のご相談の場で繰り返し登場するものから選んでいます。前提として想定しているのは、事業者であるあなたが、消費者であるお客様に、数万円から数十万円程度のサービスを継続的に提供する場面です。事業者同士の契約とはルールが違う部分が多いので、企業向けの解説記事を読んできた方ほど、答えが意外に感じられるかもしれません。
順番に読んでも、気になる質問だけ拾い読みしても使えるように書いています。

Q1.契約書と利用規約、どちらを作ればいいですか?


サービスの売り方によって、向き不向きがあります。
一人ひとりのお客様と個別に締結するなら、契約書。お客様ごとに条件を変える余地があり、高額・長期間のサービスに向きます。署名や電子署名という「合意した」という証拠の強さも利点です。
同じ条件で多数のお客様に販売するなら、利用規約。申し込み画面で規約を表示して同意を取る方式で、販売の手間が軽くなります。ただし、同意の取り方が雑だと「読んでいない」「同意していない」という争いになるので、申し込みの前に規約の全文が確認でき、同意のチェックを経ないと先に進めない、という導線にしておくことが大切です。
高額の個別サービスは契約書、低額で数が出るサービスは利用規約、というのがおおまかな目安です。両方を組み合わせる(基本は規約、個別セッション付きの上位プランだけ契約書)形もあります。

Q2.契約書には、最低限何を書けばいいですか?


骨組みは五つです。誰と誰の契約か。何を提供するか。いくらで、いつ、どうやって支払うか。期間はいつからいつまでか。途中でやめる場合はどうなるか。
このうち、いちばん丁寧に書いてほしいのは「何を提供するか」です。動画なら何本を、どんなペースで配信するのか。セッションなら月に何回、1回何分なのか。質問への回答は含まれるのか、含まれるならどの手段で、どのくらいの頻度まで対応するのか。ここが具体的であるほど、「思っていたサービスと違う」という、講座ビジネスでいちばん多いタイプの不満を入り口で防げます。
書き方のコツは、形容詞を数字に置き換えることです。「随時サポートします」ではなく「月2回、1回60分のオンラインセッション」。「充実の教材」ではなく「動画12本(各30分程度)を週1本ずつ配信」。数字で書けない約束は、たいてい守れているかどうかも判定できない約束です。
提供内容の書き込みが薄い契約書は、注意書きがどれだけ厚くても役に立ちません。逆に、ここがしっかり書けていれば、契約書の仕事の半分以上は終わっています。

Q3.「いかなる理由でも返金不可」と書いてもいいですか?


書くこと自体はできますが、書いたとおりに全部が効くとは限りません。
消費者契約法には、解約にともなって事業者が受け取れる金額のうち、事業者に生じる平均的な損害を超える部分は無効になる、という趣旨の規定があります。「いかなる理由でも」「一切」という全部盛りの書き方は、この規定との関係で、場面によっては一部が通らない可能性を残します。
実務でおすすめしているのは、文言を強くするのではなく、サービスの提供設計で対応することです。たとえば週1回配信の講座なら、受講者の都合で途中離脱があっても、教材の配信は最後まで続けると決めて、そう契約書に書く。約束したものを最後まで提供し切る形にしておけば、対価を受け取ることに根拠ができます。「返さない」という言葉で守るのではなく、「最後まで提供する」という設計で守る、という発想です。
もうひとつ、申し込み直後・提供開始前のキャンセルと、提供開始後の中途解約は、分けて設計してください。開始前なら事業者側の損害は小さいので、その段階まで「全額いただきます」で通すのは難しい。開始前は事務手数料を除いて返金、開始後は提供設計で対応、のように段階を分けておくほうが公平ですし、争いにもなりにくいです。
なお、解約・返金まわりの適切な形は、サービスの中身(動画中心か、セッション中心か、物の送付があるか)によって変わります。ここだけは文例のコピペで済ませず、自分のサービスに合わせて設計してください。

Q4.「当方は一切の責任を負いません」という免責は有効ですか?


消費者向けの契約では、そのままでは通りません。
消費者契約法には、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項や、事業者の故意・重過失による責任まで免除する条項を、無効とする規定があります。お客様が同意していても結論は変わりません。ウェブで拾った免責文例にはこの種の表現がよく含まれているので、流用には注意が必要です。
現実的な書き方は、責任を消すのではなく、上限を決めることです。「本契約から生じる損害賠償は、受け取った料金の額を上限とする」という形なら、事業の規模とリスクの釣り合いが取れますし、全部免除と違って機能する余地があります。あわせて、「消費者契約法が適用される場合は同法の規定に従う」という確認の一文、そして「受講者と第三者とのあいだのトラブルには責任を負わない」という責任範囲の整理。この三点セットで、たいていの講座ビジネスの免責は足ります。
長く立派な免責事項より、短くて全部効く免責事項のほうが、実務では強いです。

Q5.一括払いと分割払いで、料金を変えてもいいですか?


総額に差をつけること自体は、それだけで直ちに違法になるものではありません。分割には事業者側の管理の手間や未回収のリスクがあるので、それが価格に反映される設計は一般的です。
気をつけるのは表示です。申し込みの前に、一括の総額と分割の総額(と回数・各回の金額)がどちらもはっきり分かること。「分割を選んだら結局いくらになるのか」が後から判明する作りは、それ自体が不信とトラブルの元になります。契約書にも両方の金額を並べて明記してください。

Q6.分割払いの途中で、支払いが止まったらどうなりますか?


備えとして、期限の利益喪失の条項を入れておきます。指定の期日に支払いがなかった場合は、残金を一括で支払う、という定番の条文です。分割払いはいわば「残りを待ってあげている」状態なので、約束が守られなくなったときには待つのをやめられる、という仕組みをセットにしておくわけです。
ただし、運用には順番があります。支払いが止まったら、条文を持ち出す前に、まず連絡してください。理由の多くは悪意ではなく事情です。連絡して、事情を聞いて、必要なら支払い計画を相談する。条文はその話し合いがつかないときの最後の足場です。最初から条文で迫ると、払う意思のあった相手まで頑なにしてしまいます。

Q7.「必ず成果が出ます」と宣伝してもいいですか?


おすすめしません。二重の意味でリスクがあります。
まず、講座やコーチングの成果は、受講者の取り組みにも左右されるため、事業者には保証のしようがありません。保証できないことを断定的に約束する表現は、それ自体が法律上の問題になりえます。
もうひとつは、契約書との食い違いです。契約書には通常「成果を保証するものではない」という趣旨の条文を入れます(入れるべきです)。販売ページで「必ず変われる」と謳い、契約書で「保証しない」と書くと、読み比べたお客様の信頼を失いますし、もめたときには「広告で誤解させた」という主張の材料になります。
広告は魅力的に、ただし約束は提供できる範囲で。「こういう内容を、ここまで提供します」という具体性で売るのが、結局いちばん強い宣伝です。

Q8.迷惑な受講生に、退会してもらうことはできますか?


契約書に解除の条文を入れておけば、できます。逆に言うと、入れていないと対応に苦労します。
事業者側から契約を解除できる事由として、たとえば次のようなものを具体的に並べておきます。講師や他の受講生への誹謗中傷、攻撃的な言動があったとき。業務の妨害にあたる行為があったとき。長期間、正当な理由なく連絡が取れないとき。その他、信頼関係が壊れて契約の継続が難しいとき。
この種の条文は「お客様を疑っているようで気が引ける」と言われることがあります。ただ、実際にこの条文が守っているのは、まじめに受講している大多数のお客様です。一人の問題行動への対応に事業者が消耗すれば、講座全体の質が下がります。コミュニティ型のサービス(グループ講座、オンラインサロン)では、特に必須の条文だと考えてください。
あわせて、解除した場合の受講料の精算も決めておきます。提供済みの部分の対価をどうするか、未提供分を返すのかどうか。出口のお金の扱いまで書いてあると、解除の場面で余計な交渉がひとつ減ります。

Q9.受講生から聞いた個人的な話は、どう扱えばいいですか?


契約書に、事業者側の守秘の条文を入れることをおすすめします。
セッションやカウンセリングを含むサービスでは、お客様はかなり個人的な話をします。ひな型の秘密保持条項は事業者の情報(教材、ノウハウ)を守る向きで書かれていることが多いのですが、この種のビジネスでは逆向きが大事です。サービスの中で知ったお客様の個人的な事情を、運営以外の目的に使わない。第三者に漏らさない。お客様の声や事例として紹介する場合は、本人の同意を得て、個人が特定されない形に限る。
書かなくても当然守るべきことですが、契約書に明記してあると、お客様は安心して話せます。個人的な悩みを扱うサービスほど、この条文は営業上もプラスに働きます。あわせて、個人情報の取り扱い方針(プライバシーポリシー)の整備も忘れずに。

Q10.動画教材の転載や、アカウントの使い回しを防ぐには?


教材の利用条件を、契約書に明記しておきます。
動画やテキストなどの教材の著作権は事業者に帰属すること。教材は受講者本人が、受講の目的でのみ利用できること。複製、転載、第三者への共有、SNSやファイル共有サービスへのアップロードを禁止すること。アカウントを第三者に使わせないこと。違反があった場合は契約を解除でき、損害賠償を請求できること。
デジタル教材は、コピーが一瞬で、しかも痕跡が残りにくい商品です。完全に防ぐ技術的な手立てはありませんが、禁止事項と違反時の扱いが契約書に明記してあるかどうかで、実際に流出が起きたときに取れる手段の幅が変わります。それに、明記してあること自体が抑止になります。

Q11.電子契約で締結しても大丈夫ですか?


大丈夫です。電子署名による契約は、日本法のもとで有効に成立します。オンライン完結のビジネスとは相性がよく、紙の郵送で申し込みの熱を冷ますこともありません。
気をつけることは二つ。締結後の契約書の控え(PDFなど)を必ずお客様に渡すこと。受講中に「どういう約束だったか」をいつでも確認できる状態が、無用の行き違いを減らします。もうひとつは、申し込み導線の記録です。販売ページから決済、契約締結、受講開始までの流れの中で、お客様がどの画面で何を見て、何に同意したのか。あとから順番にたどれるようにしておくと、万一の確認作業が格段に楽になります。

Q12.ネット販売なら「特定商取引法に基づく表記」も必要ですか?


オンラインで申し込みを受けて講座やサービスを販売する場合、通信販売として特定商取引法の表示義務の対象になることが一般的です。事業者名、所在地、連絡先、価格、支払い方法、提供時期、返品・キャンセルの条件などを、販売ページに表示しておく必要があります。
ここで大事なのは、契約書・利用規約・特商法表記・販売ページの四つの整合です。たとえば、特商法表記には「キャンセル不可」とあるのに、契約書には途中解約の精算条項がある、というような食い違いは、それ自体が争いの種になります。書面類は別々に作るのではなく、同じ前提でまとめて整えてください。なお、表示義務の細かい適用は販売形態によって変わるので、迷ったら専門家に確認することをおすすめします。

Q13.クーリングオフの対象になりますか?


ネット広告や販売ページを見て申し込みを受ける講座販売は、多くの場合、特定商取引法上の「通信販売」に分類されます。意外に思われることが多いのですが、通信販売にはクーリングオフの制度がありません。代わりに機能するのが返品・キャンセルについての特約です。応じるのか応じないのか、応じるならどんな条件か。これを販売ページにきちんと表示しておくことが、通信販売の基本の守りになります。
ただし、注意がひとつあります。エステティック、語学教室、学習塾、パソコン教室など、法律で指定された継続的なサービスは「特定継続的役務提供」という別の規制の対象になっていて、こちらにはクーリングオフや中途解約の強いルールがあります。自分のサービスがどの扱いになるかは、サービスの内容・期間・金額によって変わります。長期・高額のプログラムを設計するときは、販売を始める前に、自分の商売がどの規制の土俵に乗るのかを確認しておいてください。土俵を間違えたまま作った契約書は、条文の出来以前の問題を抱えることになります。

Q14.「質問し放題」とうたって大丈夫ですか?


うたうこと自体は自由ですが、対応の範囲を決めずに始めると、ほぼ確実に苦しくなります。
「期間中、質問し放題」は魅力的な売り文句で、文字どおりに受け取るお客様は必ずいます。深夜のメッセージに翌朝返信したら「対応が遅い」と不満を持たれる。特定の受講生から1日に何十件も質問が届く。こうなると他のお客様への対応の質が下がり、事業者自身も疲弊します。
契約書か利用規約で決めておくのは四つです。対応する手段(メールか、チャットか)。対応する曜日と時間帯(平日日中のみ、年末年始を除く、など)。返信の目安(2営業日以内、など)。対応の範囲(講座の内容に関する質問に限る、個別案件の相談はセッションの時間内で扱う、など)。
制限のように見えますが、基準が明確なサービスは、お客様の側から見ても安心です。「いつ返事が来るか分からない」という状態のほうが、よほど不満を生みます。

Q15.受講期間の延長や休会を求められたら?


あらかじめルールを決めて、契約書に書いておくことをおすすめします。
数か月にわたるプログラムでは、受講生の体調や仕事の都合で「少し休みたい」「期間を延ばしてほしい」という申し出が、一定の割合で必ず発生します。ルールがないと、その都度の判断になり、人によって対応が変わって不公平が生まれます。気前よく応じた前例が、次のお客様への基準になってしまうこともあります。
設計の例を挙げると、休会は通算1か月まで認めて、その分受講期間を後ろにずらす。延長は1か月単位で追加料金を定める。あるいは、延長・休会は設けない代わりに、教材は受講期間終了後も一定期間視聴できるようにする。どれが正解ということはなく、サービスの性質と運営の負担に合わせて決めれば足ります。大事なのは、決めたルールを書面にして、全員に同じように適用することです。
あわせて、期間の数え方も明確に。「3か月コース」の3か月は、申し込み日からなのか、初回の教材配信日からなのか。起算点が曖昧だと、延長の議論以前に、終わりの日の認識がずれます。

Q16.あとから料金やサービス内容を変えたくなったら?


すでに契約しているお客様と、これから申し込むお客様を、分けて考えてください。
これから申し込む人に対する変更は、原則自由です。価格もカリキュラムも、次の募集から変えれば問題ありません。一方、すでに契約しているお客様との関係では、契約した時点の条件が原則です。途中から料金を上げたり、約束していた提供内容を減らしたりすることは、相手の同意なしにはできません。
利用規約型で運営している場合は、規約の変更に関する条項を置いておきます。変更がありうること、変更時は事前に告知すること、適用時期をどう定めるか。民法には定型約款の変更についてのルールがあり、合理的な変更は所定の手続きで可能とされていますが、お客様に不利益が大きい変更ほど、丁寧な告知と経過措置が求められます。
実務的には、「変更できるかどうか」より「どう伝えるか」でもめます。変更の理由と適用時期を早めに知らせ、既存のお客様には可能な範囲で従前の条件を維持する。この運びができていれば、変更そのものが信頼を壊すことは、あまりありません。

Q17.契約はどのタイミングで結べばいいですか?


順番は、内容の確認と同意が先、決済が後、です。
ありがちなのが、決済が先に完了して、契約書や規約への同意があと、という導線です。この順番だと、「内容を知らされる前にお金を払った」という状態が生まれ、あとから条件を示されても同意の効力が弱くなります。販売ページで内容と条件を確認できる、申し込み時に契約書または規約に同意する、それから決済、そして提供開始。この順番を崩さないでください。
決済サービスや講座プラットフォームを使う場合も同じです。ツールの都合で順番が前後しそうなときは、申し込みフォームに規約の確認と同意のチェックを組み込む、決済前の画面に契約条件を表示するなど、導線の側を工夫します。あとから争いになったとき、「どの時点で、何に同意していたか」が説明できる導線になっているかどうかが、書面の中身と同じくらい効いてきます。

Q18.協議条項や反社条項みたいな「定番の条文」も要りますか?


短くてかまわないので、置いておいてください。
契約書の終盤によくある、決めていない事項は誠意をもって協議する(協議条項)、反社会的勢力でないことを表明する(反社条項)、紛争になったときの裁判所を決めておく(管轄条項)。この種の条文は、ふだんは読まれることもありませんが、置いておくコストがほぼゼロな一方で、ないと困る場面がたまにあります。
ひとつだけ消費者契約ならではの注意を。管轄条項は、事業者の所在地の裁判所を指定するのが通例ですが、消費者契約では、消費者に一方的に不利な合意は争われる余地があります。書いておくこと自体は構いませんが、「書いてあるから絶対」とは考えないでおいてください。

おわりに:契約書は、お客様が最後に読む「商品説明」


18個の質問に答えてきました。全体を貫く考え方を最後にまとめます。
消費者向けの契約書には、書いても効かない条項があります。だから、強い言葉をたくさん書くことには、ほとんど意味がありません。効く範囲を正確に押さえた短い条文と、何をどこまで提供するのかという具体的な中身。この二つがそろった契約書が、実務でいちばん頑丈です。
そして、契約書はお金を払う直前のお客様が読む書面でもあります。そこに何が書いてあるかは、サービスの中身と同じくらい、事業者の印象を左右します。フェアな契約書は、それ自体が信頼の材料になります。
最後にひとつ提案を。この記事の18問に、ご自身のサービスを当てはめて答えてみてください。即答できなかった質問があれば、そこが今の書面の弱点です。売り始める前に全問へ答えられる状態を作っておくと、開業後にトラブル対応へ取られる時間は、目に見えて減ります。契約書づくりは面倒な作業に見えますが、実際には、自分のサービスの輪郭を確定させる作業でもあります。


本記事は、消費者向けサービスの契約書に関する一般的な考え方の解説です。条項の有効性や表示義務の適用は、サービスの内容や販売方法、個別の事情によって変わりますので、実際の作成にあたっては個別の検討をおすすめします。契約書・利用規約の作成・確認のご依頼は、出品中のサービスからお気軽にどうぞ。



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