「教育史点描~最後に残るのは「教育」である~⑩」

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(5)「教育」とは結局「人間観」と「教育制度」である

②国家・社会の持つ「理想的人間像」が「教育制度」を形成する

ケルシェンシュタイナーの「労作教育論」~小さな労作共同体における生活や学習が国家という大きな労働共同体での生活の準備になるという観点から、「労作教育」と「公民教育」を結合し、国民学校と実業補習学校を陶冶の場としました。

ナトルプの「社会的教育学」~意志は集団生活の中で最も重要であると考え、教育の根本は「意志の陶冶」であるとし、「教育の社会的意義」を強調しました。

デュルケームの「教育社会学」~デュルケームは「社会学の父」と呼ばれ、「教育」とは「各社会が固有の理想に従って、個人を社会化すること」「成熟した世代が未成熟の世代に対して行う、組織的社会化の行為」としました。

戦前日本の教育~「忠君愛国」と「資本主義の育成」。

「日本の経済発展の秘密を解く鍵は全く国民教育の普及にある。・・・これを国力の未だ整っていない時に見抜いて、早くも義務教育を強行したのは、経済史にとっても極めて重要な点である。」
(東畑精一『日本資本主義の形成者―さまざまの経済主体―』)

アメリカの初等教育~最大の眼目は英語を教えることでも、数学を教えることでもなく、「アメリカ人であること」を教える所にあります。このため、日本からアメリカの大学院に行った留学生がアメリカ人の大学生に「英語」を教えることすらあるのです。2番目の眼目は「コミュニケーションの仕方」についての教育で、これは多様性に富んだ多民族国家であるので、自分と全く考えの違う人の意見をどう理解し、逆に自分と考えも利害関係も宗教も違う人にどうやって自分の意見を伝えるのかが重要だと考えられているからです。

「私はアメリカ合衆国の国旗に対して、並びにそれが代表する共和国、すなわち神の下にあり、不可分にして、万人のための自由と正義を有する1つの国家に対して忠誠を誓います。」
(アメリカの小学校の教室正面に掲揚されている星条旗に対して、小学生は毎朝、授業が始まる前に起立して敬礼し、右手を胸に当てながらこの忠誠宣誓を行います。)

「私の国よ。お前は自由な美しい国だ。私はお前を歌おう。祖先の人々が眠っている国と。ピルグリムの誇りの国と。」
(アメリカの音楽の教科書に載っている歌)

「我が祖国アメリカ、美しき自由の国、その栄光を我は歌う。・・・我らが祖国、聖なる自由の光をもって永久に栄えあれ。偉大なる我らが主なる神よ、我らを守れ。」
(アメリカの音楽の教科書に載っている歌)

世界中の学校教育に見られる「愛国心」教育~インドネシアの学校では毎週月曜日の一時限目は国旗掲揚式であり、校庭に集合して国旗掲揚、国歌斉唱の後、建国五原則(第一原則は「唯一なる神への信仰」)が朗唱されます。タイの学校でも毎朝朝礼が行われ、国旗掲揚時には国旗に敬礼し、国家を斉唱し、国家に対する忠誠の誓いを立てます。

「私は神と我が祖国とを愛する。私は我が国の国旗を尊ぶ。私は女王(エリザベス2世)に仕え、また喜んで両親、先生、そして国の法律に従う。」
(オーストラリアの学校における誓い)

「偉大なる国旗の下に我々は皆兄弟である。風にはためく美しい色。白は祈り、赤は愛、緑は希望。三色旗よ、永遠なれ。」
(イタリアの小学二年生用教科書に載っている国旗を称える文章)

「我が子よ、私は祖国を愛します。それは私のお母さんがそこで生まれたからです。私の血管を流れている血は、全くそこに属しているからです。おお、お前はまだ完全にはそれを理解できないだろう。この愛国心を。お前は大人になった時、それを感じるだろう。もし異邦人がお前の国を侮辱するのを聞く時、より烈しく、より気高くそれを感じるだろう。」
(フランスの道徳教科書の一節)

「人権」(human rights)と「特権」(privilege)~「子どもの人権」は正確ではなく、認められているのは「子どもの特権」です。「人権」とは人間であるならば、誰でもが当然に持っているはずの固有の権利で、剥奪されれば手を尽くして回復されなければならないものです。「参政権」「投票権」も年齢制限があるので、厳密に言えば、「人権」というより非常に重要な「政治的権利」となります。これに対して、「特権」とは「王権」(絶対王政における「主権」)の反対語であり、一定の要件を備えている人にのみ与えられる「特別な権利」で、誰にどんな「権利」を与えるかは近代民主主義諸国においては「国家(主権)」が決めます。したがって、時代や状況の変化によって、「少年法」の改正などは政治的判断によって行えることになります。

【参考文献】
『人間であること』(時実利彦、岩波新書)
『教育思想史』(中野光・志村鏡一郎編、有斐閣新書)
『0歳児がことばを獲得するとき 行動学からのアプローチ』(正高信男、中公新書)
『人間であること』(時実利彦、岩波新書)
『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は、滅亡する』(小室直樹、ワック出版)
『人にはなぜ教育が必要なのか』(小室直樹・色摩力夫、総合法令)
『世界の学校』(沖原豊編、東信堂)
『世界の学校』(二宮晧、福村出版)
『世界の道徳教育』(唐沢富太郎、中央公論社)
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