挫折感を克服するための心理学⑥:「内なる声」は実は何でも知っている
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これは心理学的には「直観」、哲学的には「良心」、神学的には「内なる神」と言う所でしょう。不思議なもので、何でも「最初に心で思ったこと」「心の第一声」が意外に自分にとって必要なものを突いている場合が多いのです。「学校に通って勉強すべきだ」「英字新聞を読んでみよう」「思い切ってバイトをやめて大学を目指そう」などと、ある情報に触れた時、パッと思ったりするのですが、時間と共に理性が働いてあれこれ「言い訳」をこねくり始め、最初に浮かんだことをすぐに実行に移さない理由を「正当化」していくことが始まります。「別に今じゃなくてもいいじゃないか、もう少し考えてからにしたら」「いきなり英字新聞なんか読めるわけがないじゃない」「バイト先に迷惑もかかるし、しばらく仕事は続けながら、受験勉強もやったらいいんじゃない」などと、次々に最初の決意(アイデア)を骨抜きにかかってきます。なぜかというと、人間はついつい「昨日と同じ今日、今日と同じ明日」を望む存在で、新たな決断をしてそれまでの生活の流れを変え、新しい生活を出発させていくことをなるべく先送りにしたい心理が働きやすいからです。ところが、答えはすでに出ているのです。先入観や偏見、浅知恵など抜きに、真っ先に心が反応したのは「やってみよう、踏み切ってみよう」という答えだったはずです。「自分に正直に生きる」ということは実はこの「直観的感性」「良心の声」「内なる啓示」に従うということで、その障害は外にあるのではなく、本当は内にあるのです。だから、「自分にウソをつかない」ということが大変なことだということがよく分かりますね。しかしながら、「自分に正直に生きる道」「自分にウソをつかない道」を行った時のみ後悔がなく、心から「納得」がいくのであるということも、実は「心では分かっている」のです。
【コラム】
カトリック作家の遠藤周作氏がカウンセリングに関して、ユング心理学の大家河合隼雄氏にかみついたことがあります。遠藤氏が言うのは「神ならぬ人が他の人の行くべき道をどうこうするなんて傲慢だ」ということで、これに対して河合氏は「いや、そうじゃありません。カウンセリングの基本はただ聞くことなんです」といった意味のことを答えています。つまり、ふんふんとずっと聞いていると、クライアント(相談者)の方から「こうなんです、ああなんです、でも結局こうしないといけないんですよねえ、分かっているんですよ、でもですね・・・」と言ってきたりするわけですが、実は「どうすべきか」という答えそのものはクライアント自体が分かっているというのです(無意識的であれ)。ずっと話を聞いているとそれが引き出されてきて、クライアントは「自分の口から出る言葉にカウンセリングされる」わけです。優れたカウンセラーは必ずしも雄弁ではなく、むしろ訥弁であることが多いのも実はこういうわけなんですね。
どんな困った状況、逃げ出したくなる状況の中でも必ず「答え」があるわけですが、その「答え」は他でもない、自分自身の心の奥底にあるというのです。やはり、心を静めて、その「第一声」に耳を傾けてみるべきですね。