挫折感を克服するための心理学④:ワンランクアップの逆攻略作戦

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 「挫折感」を助長するものとして、「現実的不可能性の自覚」(第1章④で述べているように、「現実的可能性の自覚」が「希望」の出発点としたら、これは「絶望」の出発点となります)があります。これは取り組む前から「挫折」を招くものでもありますから、何らかの「予防措置」が必要になってくるでしょう。例えば、「私は英語が苦手だ」→「英文をスラスラ読めないどころか、文法の知識も怪しい」→「英語をイチから始めるとしたら単語だ」→「まず3000語覚えればいいのか」→「1日10個ずつ覚えていこう」→(このままやり続ければ100日後に3000語を一巡しますが、その頃には最初に覚えた単語のほとんどは忘れているでしょう)→「10日ぐらい続けたが、なかなか苦しいな。ちょっとひと休みしよう」。ハイ、これで「挫折のサイクル」完了です。英語の勉強に挫折した哀れな屍がまた1つ増えました。時を経て、再び「やっぱり英語をやらなくちゃ」と思い立った時、やはり同じような思考のサイクルを経て、再び屍を1つ増やすことでしょう。これを何回か重ねていくと、「挫折感」が定着し、場合によっては「恐怖感」にすらなってしまいかねません。「ボクは英語はキライだ。フランス語なら興味がある」とうそぶく人もいますが、それはこの「挫折感」「恐怖感」が攻撃に転じたに過ぎません。では、どうしたらいいのでしょうか。この場合、今の自分の現実から出発して英語を「見上げて」いる限りは、「自分に英語ができるようになるんだろうか」という先取り的な挫折感、恐怖感から永遠に逃れることはできません。実は英語を「見下ろさなければ解決はできない」のです。このために必要な「逆転の発想」が「ワンランクアップの逆攻略」作戦です。
 「英語を克服したければラテン語をやるといい」「ドイツ語、フランス語を学べば英語はよく分かる」と言われたらどうでしょうか。「英語もできないのに、第二、第三の外国語なんてできるわけがない」と思うのが普通でしょう。ところが、「英語の名人・達人」と呼ばれる人は実にラテン語を学んでいることが多いのです。また、「外国語は3つ目当たりからよく分かるようになる」ともよく言われます。これは通時的・歴史的理解(日本語だって、誰もが中学校で「外国語」と言ってもいい古文・漢文を学んでいるではないですか)、共時的・比較言語学的理解(日本人で韓国語を学んだ人は誰でもその「文法の共通性」にビックリし、両者が「兄弟言語」であることに深く関心を持つようになります)からしても、妥当なことなのです。着実に今いる所から一歩一歩現実的に進めていくことも必要ですが、逆に数段階上の立場にアプローチし、そこから立ち返って逆攻略するという方法も必要なのです。これは「現実から未来を見る(あるいは規定する)」方法に対して、「未来から現実を見る」方法であるとも言えるでしょう。
 予備校の中でも東大コース、京大コースといった選抜コースに入っている生徒達は、高い目標を「見上げて」頑張っているわけですが、先生の中には「東大・京大のレベルに合わせて答案を書いてあげなさい」という指導をする人がいます。これは「見下ろしなさい」(「見下げなさい」はありません)という心理上の転換を要求しているわけです。人間関係でも同世代の友人ばかりでなく、上の世代との交流を活発にすると、人の見方、ものの見方が変わってくるのも同じ理由によります。

【コラム】
 「未来」から逆に見るという発想はなかなか難しいものですが、その典型が「結婚」でしょう。普通、男女が結婚するのは、付き合ってみて「この人なら結婚してもいいかな」と思うからですが、その根拠はわずか数年の付き合いという「過去の経緯」です。実際には、結婚してから離婚の危機が訪れやすくなるのは「子どもが生まれてから」です。ここで「男女」が「夫婦」になり、「父母」となって、二人は「共同経営者」として「家庭」という共同体を経営していかなければならなくなったようなものであり、「恋人」時代とは状況が一変してしまうといっても過言ではありません。実はお父さんはCEO(最高経営責任者)、お母さんはCFO(最高財務責任者)のようなもので、収入と支出のマネジメント、内部教育(子どもの教育)など、まさに小なりといえども会社の経営のような手腕が必要とされます(マネジメントに失敗すれば「破綻」します)。会社なら「共同経営者」を単に「気が合うから」「仲のいい友達だから」という理由で選んだりはしないでしょう。ところが、「結婚」になるとこういう観点はほとんど出なくなるんですね。
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