劣等感を克服するための心理学①:コンプレックスは人間関係の中で生まれる
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「コンプレックス(complex)」という言葉は「劣等感(インフィリアリティ・コンプレックス)」だけを指しているのではなく、「優越感(シュピリアリティ・コンプレックス)」「エディプス・コンプレックス(娘の父親に対する思慕・愛着)」「エレクトラ・コンプレックス(息子の母親に対する思慕・愛着)」なども全て「コンプレックス」であるように、元々「潜在的な複合観念」を指しています(第3章③で言う情念のルートの「定着」は「潜在化」に他なりません)が、やはり問題となるのは「劣等感」でしょう。「自分は周りの人と比べて頭が悪い」「自分は中卒だから、高校中退だからダメなんだ」といった「学力コンプレックス」「学歴コンプレックス」はよく見られるところです。
しかしながら、「いいな、鳥は空を飛べて」「岩がうらやましい」などとは普通の人はまず思わないように(詩人ならあるかもしれませんが)、コンプレックスは「対物関係」ではなく、あくまで「対人関係」の中で生じてくるものだということが分かります。つまり、「人間関係」の中で「比較」の結果、生じてくるものであり(例えば、「学力評価」の無い幼稚園・保育園ではそういう「比較」はなく、「学力コンプレックス」は生じようがないでしょう)、それが負けず嫌いに火をつけて「成功動機」となることもありますが、たいていはそのままにしておくと精神的成長の阻害要因となりかねないものなのです。
したがって、「コンプレックスの悩み」というのは「人間関係の悩み」に他ならず、その克服は「人間関係上の工夫」にかかってきます。「人間」は「人の間」と書くように、人間にとって人間関係は本質に関わるものですので、ここで喜び・幸福感も生ずれば、悲しみ・不幸もまた生じてくるのです。これはどうしても取り組まざるを得ないテーマであると言えるでしょう。
【コラム】
有名な経営コンサルタントの神田昌典氏(この人の著書は是非入手すべきです)によれば、いわゆるお金持ち、成功者と呼ばれる人達は強いコンプレックスの持ち主であったことが多いそうです。例えば、「子供時代、貧乏だった」「成績がよくなかった」等々ですが、逆にこういう人ほど「絶対見返してやる!」「絶対お金持ちになるんだ、成功してやるんだ!」という強い動機がバネとなって、実際にお金持ち、成功者になっている人が多いというのです。神田氏はこうした例をかんがみて、最初はこういう「マイナスの情念」を使った方がいいとまで言っています。それが最後までそのままなら、人間的にいただけませんが、成功すると今度は「心の修養」にシフトしていくわけです(したがって成功者の語る「成功哲学」には「心の修養」を説くものが多いのですが、これは成功したあかつきに必要になるのであって、これから成功しようと思っている人にはむしろマイナスになることすらあるというのです)。
自らを「月見草」にたとえ、常に国民に愛され続けた長嶋茂雄氏にコンプレックスを抱き続けた野村克也氏は、「コンチクショウ、コンチクショウ」と言い続けて、とうとう王貞治氏に次ぐ日本で第二番目のホームラン王となって、この分野では長嶋氏を抜きさっています。ある意味ではコンプレックスの強い人ほど、成功のために必要なエネルギーを豊かに持っているとすら言えそうです。