「今、この瞬間を大切に生きる」~終末期に関わった看護師が学んだ人生の意味~

「今、この瞬間を大切に生きる」~終末期に関わった看護師が学んだ人生の意味~

記事
コラム
はじめに
私は高齢者看護、終末期看護を20年以上経験してきました。
 その中で、たくさんの人の「人生の最後」に立ち会い、その瞬間から人生とは?を学んできました。
 その経験を通じてたどり着いた結論の一つは、

「未来ではなく、今を大切に生きること」の重要性です。

 今回は、「未来ではなく、今を大切に生きること」の重要性を少し深掘りしてみたいと思います。

「今を大切に生きる」とは何か?

「今を大切に生きる」という言葉を耳にする機会が多いかもしれません。
知ってるよ。と思われる人も居るでしょう。
 しかし、「今を大切にして満足に生きていますか?」と問いかけられるとどうでしょう?

 毎日満足できる選択をしていますか?

 知っていてもそれを実践するのは簡単なことではありません。
実践できないのにはいろんな理由があると思います。

 これを書いている自分もそうです。
本当は1500円のランチが食べたいけど、お金が無いから我慢して700円の定食を選ぼう。
 そして食べた後に残念な気持ちになります。本当はあっちが食べたかったな…と。
 このように私たちは過去の後悔や未来への不安などに心を奪われがちです。

 高齢者の患者さんでもそれは変わらなかったのです。
過去に後悔し、未来には人生の終わりが若い頃よりもはっきり見えてくる。
 そんな中で毎日を過ごしている患者さんの話を聞きながら、どう関わっていくのか悩んだ時期も自分にはありました。

 でも、とある患者さんが話してくれた一言が、自分のそんな方々とのかかわりを変えてくれました。
「あのね、私は今生きてる事が幸せなんよ。毎朝起きれる。あなたの顔が見れる。ご飯が食べれる。リハビリできる。たまに家族に会える。幸せなんよ。」
と話してくれました。
 私は患者さんと本気で向き合う事を意識しているので、「失礼かもですが…」と前置きした後に「後悔とか不安とか無いんですか?」と聞かせていただきました。
「だって後悔してもそこには戻れない。不安もあるかわからない。いつ人生が終わるのかわからないのにそこを気にするなら毎日を楽しんだ方がいいじゃない。私はみんなと話せるだけで幸せなんよ。」

 正直びっくりしました。
 でも本当にそうだなと。
 起きるかわからない不安と常に生きていくのは辛い事。
だからその不安を自分が少しでも取り除ければいいなと思うと同時に、
「今を生きる」ということについて考えさせれました。

患者さんから学んだ「今」の重み

 入院を余儀なくされている、でも「今」を生きている。
そんな患者さんが話していた事はいくつか共通点があります。
これが「今を大切にする」答えになるのではないかと思うので書き出してみます。

1. 「今ある幸せ」に気づくこと

 病室の窓から見える青空、季節の変化、看護師の声掛け、笑顔。会いたい人に会える事。会えなくなった人の為に今日も生きれた事。
そうした些細な瞬間にも感謝の心を抱かれていました。
 そして笑顔で話す姿が印象的でした。
「幸せは特別な出来事ではなく、日常の中に隠れていて気付けてないのではないか?」という事を教えていただきました。

2. 「やりたい」をすぐに行動に移すこと

 ある患者さんは、自分の最期に近いと悟ると、すぐに家族や友人に「ありがとう」と伝えたいと言いました。特に告知を受けたとかでは無いのに。
でも人はその事を感じるのかもしれません。
 その患者さんに聞くと、「やりたい事はすぐやってきたし、全部自分で判断してきたから後悔は無いよ。思いを言えなかった方が後悔するやろ?」と。
 ついつい先延ばしにしていた自分に「今」行動することの大切さを教えていただきました。

3. 「不完全な今」を受け入れる

 私たちはしばしば、「もっと健康だったら」「もっとお金があれば」などと現状を否定しがちです。
 しかし、現状を冷静に受け止め、自分の身体の状態を受け入れ、その中で可能な喜びを見つけようとする患者さんを見て、今を受け止める事の重要性を学びましたし、その姿に私自身が励まされることもありました。

看護師として、日常に「今」を取り戻す方法

 看護師は、忙しい業務に追われて「今」を見失いやすい職業でもあります。私もかつては、次から次へと押し寄せるタスクに追われ、自分が生きている実感を見失う時期がありました。何のために生きているのだろう?と悩んだ事もありました。でも患者さんの笑顔の為、少しでも幸せに最後を迎える為と頑張って来ました。
 そんな私が周りが見えなくなりそうな時、そんな時には次のような工夫を取り入れていました。

1. 意識的に「一息つく」時間を持つ

 急変が起きた時、想定外の何かが起きた時、パニックになりそうな時、
意識的に目を閉じ、深呼吸をします。
その時間は「まずは落ち着こう」「次にやることは何か?」と冷静になる時間を意識していました。
 また仕事から帰って疲れた時は目を閉じ深呼吸して、ただ呼吸に集中するだけ。「一息をついて」気持ちを切り替えていました。

2. 「今」を確認する質問を自分に投げかける

「今、目の前に何がある?」
「今、この瞬間、何がしたい?」
こうしたシンプルな問いを繰り返すことで、頭の中の雑念が整理され、「今ここ」に意識を戻すことができます。
今が辛いならどうするか?無理をして自分を壊すくらいなら別に環境を変えても良いとも思って行動していました。

3. 小さな喜びを見つける

 忙しい毎日の中でも、小さな喜びを探すようにしていました。
「患者さんが笑顔を見せてくれた」
「患者さんの状態が改善してきた」
「今日一日大きな変化が無く終わる事が出来た。」など、
小さなことでも喜ぶようにしました。

4. 「心地よい疲れ」を感じる瞬間を大切にする

 夜、1日を終えてベッドに入った瞬間、「今日も頑張った」と感じるようにしました。心地よい疲れがある事を幸せに感じる。そう思うと不思議と充実感が湧いてきます。

あなたが「今」を生きるために

「今を生きる」という考え方は、看護師だから、患者さんだからでは無く、日常の中で誰でも実践できるものですし必要な事です。

その為に以下のアプローチを試してみてください。

・感謝を言葉にする
誰かに「ありがとう」と言うだけで、目の前の人との絆が深まります。

・今日できる「小さな挑戦」を探す
やりたいことを少しでも実行する。本当に小さな一歩でいい。その行動が「今」をより意味のあるものにします。

・「心の充電」を意識する
散歩や好きな本を読む、好きな事をする時間を作り、心の疲れを癒すことも「今を生きる」大切な一歩です。

終わりに

 終末期の患者さんたちは、限られた時間の中で「今」を生きることの尊さを私たちに教えてくれます。
 その教えを胸に、私も日々を大切に過ごす努力を続けています。

 どうか、あなたも「今」を見つめる時間を少しだけ増やしてみてください。その瞬間こそが、人生を豊かに彩る力になるはずです。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今日という日が、あなたにとって素晴らしい1日でありますように。
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