はじめに
「自分の財産の一部を、お世話になった団体や社会のために役立てたい」
そう考えて、遺言で寄付をする「遺贈寄付(いぞうきふ)」に関心を持つ方が増えています。
お子さんがいない方やおひとりさまの方だけでなく、「家族に残したうえで、一部を寄付したい」という方からのご相談もあります。
ただ、遺贈寄付は遺言書の書き方ひとつで、寄付先の団体が受け取れないこともあります。今回は、遺贈寄付を考えるときに押さえておきたい「特定遺贈」と「包括遺贈」のちがいについてお話しします。
遺贈には2つの書き方がある
遺言で相続人以外の方に財産を渡す(相続人に遺贈するということもありますが)ことを「遺贈(いぞう)」といいます。
遺贈を使えば、相続人ではない人や団体にも財産を渡すことができます。
遺贈の書き方には、大きく分けて次の2つがあります。
・特定遺贈(とくていいぞう)
・包括遺贈(ほうかついぞう)
どちらも「遺言で財産を渡す」点は同じですが、受け取る側の立場が大きく変わります。
特定遺贈とは
特定遺贈は、遺贈する財産を特定して書く方法です。
たとえば、次のような書き方です。
・「〇〇銀行〇〇支店の預金を〇〇に遺贈する」
・「〇〇市〇〇町の土地を〇〇に遺贈する」
「何を渡すか」がはっきりしているので、受け取る側も内容を確認しやすいのが特徴です。また、受け取るのは指定された財産だけなので、原則として債務などを引き継ぐことはありません。
包括遺贈とは
包括遺贈は、財産を割合で渡す方法です。
たとえば、次のような書き方です。
・「財産の3分の1を〇〇に遺贈する」
・「財産の全部を〇〇に遺贈する」
財産の中身を細かく書かなくてよいので、遺言を書く側にとっては簡単に見えます。ただし、包括遺贈で財産を受け取る人は、法律上「相続人と同じ権利と義務を持つ」とされています。
ここが、寄付先の団体にとって大きな問題になります。
寄付先の団体が包括遺贈を断ることがある理由
包括遺贈を受けると、プラスの財産だけでなく、債務などのマイナスの財産も割合に応じて引き継ぐことになります。
さらに、包括遺贈を受けた団体は、次のような立場にもなります。
・ほかの相続人と一緒に、財産の分け方の話し合い(遺産分割協議)に加わる
・受け取りを断るときは、原則として3か月以内に家庭裁判所で手続きをする
寄付を受ける団体からすると、「どんな債務があるか分からない」「知らない相続人と話し合いをしなければならない」という負担は小さくありません。
そのため、団体によっては包括遺贈を受け付けていないことがあります。
せっかくの気持ちで書いた遺言でも、寄付先が受け取れなければ、思いが届かないことになってしまいます。
遺贈寄付では特定遺贈が選ばれることが多い
こうした理由から、最終的には遺贈寄付では特定遺贈で書くことが多いです。
とくに「預金のうち〇〇万円」のように現金で寄付する形は、多くの団体が受け付けています。
ただし、これはあくまで原則です。
団体によっては包括遺贈を受け付けているところもありますし、不動産など現金以外の財産を受け付けてくれるかどうかも、団体ごとに違います。
「どちらで書けば正解」と決まっているわけではなく、寄付先に合わせて書き方を選ぶことが大切です。
遺言を書く前に寄付先へ確認しておきたいこと
遺贈寄付を考えたら、遺言を書く前に寄付先の団体へ確認しておくと安心です。
・遺贈による寄付を受け付けているか
・特定遺贈と包括遺贈、どちらなら受け取れるか
・現金以外の財産(不動産・株式など)を受け取れるか
・団体の正式な名前と所在地
・寄付の使い道を希望できるか
多くの団体には遺贈寄付の窓口があるので、ホームページや電話で問い合わせてみてください。また、遺言の内容をきちんと実現してもらうために、遺言執行者(遺言の内容を実行する人)を決めておくことも考えておきましょう。
まとめ
・遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」の2つの書き方がある
・包括遺贈は借金も引き継ぐ立場になるため、寄付先が断ることがある
・遺贈寄付では特定遺贈が選ばれることが多いが、団体によって違う
・遺言を書く前に、寄付先へ受け取れるかどうか確認しておく
遺贈寄付は、ご自身の思いを未来へつなぐ方法のひとつです。
その思いがきちんと届くように、書き方にも気を配っていただければと思います。
「自分の場合はどちらで書けばいいのか」「この財産は寄付できるのか」など、迷ったときはお気軽にご相談ください。