不動産の遺贈寄付で要注意!「みなし譲渡所得税」とは? ―― だれが負担する?どんなトラブルが起きる?

不動産の遺贈寄付で要注意!「みなし譲渡所得税」とは? ―― だれが負担する?どんなトラブルが起きる?

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コラム
「自宅や土地を、お世話になった団体に寄付したい」 遺言書で財産を寄付する遺贈寄付(いぞうきふ)を考える方の中には、現金だけでなく、不動産や株式を寄付したいという方もいらっしゃいます。

ところが、不動産や株式を法人に遺贈すると、*「みなし譲渡所得税」*という税金がかかることがあります。しかも、この税金を負担するのは、寄付を受けた団体ではなく、財産を1円も受け取っていない相続人になることもあるのです。

この記事では、遺贈寄付を考えるなら必ず知っておきたい、みなし譲渡所得税のしくみと、だれが負担するのか、そしてどんなトラブルが起こりうるのかを解説します。

※この記事は制度の概要をご紹介するものです。実際の税額の計算や申告等の個別具体的な質問については、税理士にご確認ください。

1. みなし譲渡所得税とは?

不動産や株式を売って利益が出ると、その利益(譲渡所得)に所得税がかかります。ここまでは、ご存じの方も多いと思います。

みなし譲渡所得税とは、実際には売っていないのに、「売ったものとみなして」かかる税金のことです。

法律では、不動産や株式などを法人に遺贈(または贈与)した場合、その財産を時価で売ったものとみなす、と定められています。

売ってないのでもちろん現金化されていないのに、売ったとみなされて税金が課税される。普通に考えるとなかなか怖い税金ですよね。

なぜこのようなルールがあるのでしょうか。 不動産などの値上がり益には、本来、売ったときに所得税がかかります。個人から個人へ相続される場合は、相続した人が将来売ったときに課税されますが、法人に渡ってしまうと、その値上がり益に個人として課税する機会がなくなってしまいます。そこで、法人に渡す時点で、いったん清算して課税する、という考え方がとられているのです。

どのくらいの税金になる?

例を見てみましょう。

以下、前提条件
・先祖代々の土地を、遺言で非営利団体に遺贈した
・亡くなった時点の時価は3,000万円
・いつ・いくらで取得したかの記録が残っていない

取得した金額が分からない場合、原則として*時価(売った金額)の5%*を取得費とみなして計算します。

3,000万円 -(3,000万円 × 5%)= 2,850万円(譲渡所得)
2,850万円 × 約15%(所得税+復興特別所得税)= 約436万円

※長期間所有していた土地の場合の、おおまかな目安です。実際の税額は、個別の事情によって変わります。

昔から持っている土地ほど値上がり益が大きくなりやすく、数百万円単位の税金になることも珍しくありません。

2. どんな財産・どんな相手のときにかかる?

かかる可能性がある財産
みなし譲渡所得税は、値上がり益が生じる財産が対象です。

・土地・建物などの不動産
・株式・投資信託などの有価証券
・美術品など

一方、現金や預貯金には値上がり益がないため、かかりません。

かかる相手
みなし譲渡所得税がかかるのは、法人に遺贈した場合です。公益財団法人、認定NPO法人、学校法人、社会福祉法人など、遺贈寄付の寄付先の多くは法人ですので、不動産や株式を寄付する場合は、ほとんどのケースで関係してきます。

なお、国や地方自治体への遺贈の場合は、この税金はかかりません。また、個人への遺贈の場合も、みなし譲渡所得税ではなく、相続税の対象になります。

だれが申告するの?
みなし譲渡所得税は、亡くなった方(遺言者)の所得として扱われます。

亡くなった方は自分で申告できませんので、その年の1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人などが代わりに申告します。これを準確定申告といい、原則として、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。

では、この「亡くなった方の税金」を、実際にだれが負担するのでしょうか。ここで、遺贈の種類によって答えが分かれます。

3. 特定遺贈の場合の負担者

特定遺贈とは、「◯◯市◯◯町の土地を、団体(実際は団体名)に遺贈する」というように、特定の財産を指定して遺贈する方法です。遺贈寄付では、この形が一般的です。

特定遺贈の場合、みなし譲渡所得税を負担するのは、相続人です。

亡くなった方の税金(納税義務)は、借金と同じように、相続人に引き継がれます。寄付を受けた法人は、あくまで「特定の財産をもらっただけ」なので、亡くなった方の税金までは引き継ぎません。

つまり、

・土地は、寄付先の法人に渡る
・その土地にかかった税金は、相続人が払う

ということになります。(すごく怖い税金ですよね・・・)

土地を1円も受け取っていない相続人が、その土地の税金を払う。ここが、特定遺贈で最も注意しなければならない点です。

なお、みなし譲渡所得税は亡くなった方の「債務」として、相続税の計算のときに財産から差し引くことができます。ただ、それで税金そのものがなくなるわけではありません。

4. 包括遺贈の場合の負担者

包括遺贈とは、「財産の全部を団体(実際の団体名)に包括遺贈する」「財産の3分の1を△△法人に包括遺贈する」というように、財産を割合で指定して遺贈する方法です。

包括遺贈を受けた人(包括受遺者)は、法律上、相続人と同じ権利と義務を持つことになります。プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も、指定された割合で引き継ぎます。

そのため、包括遺贈の場合は、寄付を受けた法人も、その割合に応じて、亡くなった方の税金を負担することになります。

・「全財産を団体(実際の団体名)に」 → 法人がみなし譲渡所得税を負担
・「財産の2分の1を団体(実際の団体名)に」 → 法人と相続人で、割合に応じて負担

一見すると、相続人の負担が減るので良い方法に思えるかもしれません。しかし、包括遺贈には別の問題があります。

法人にとっては、どんな借金や税金を引き継ぐことになるのか分からないというリスクがあるのです。また、包括受遺者は、遺産分割協議に参加したり、各種の手続きに関わったりする必要も出てきます。

そのため、包括遺贈は受け付けない、または慎重に検討する、という団体も少なくありません。

5. トラブル

みなし譲渡所得税は、遺言者本人が知らないまま遺言書を書いてしまうことが多く、相続が始まってからトラブルになりやすい税金です。よくあるケースを見てみましょう。

ケース1 相続人に突然、数百万円の納税
父親が「自宅の土地を、長年応援してきた団体に寄付する」という遺言書を残して亡くなりました。子どもたちは、父の思いを尊重しようと考えていました。

ところが、相続の手続きを進める中で、土地にかかるみなし譲渡所得税を、自分たちが払わなければならないことが判明。土地は団体に渡り、手元に残ったのはわずかな預貯金だけ。その預貯金のほとんどが、税金の支払いに消えてしまいました。

「父の気持ちは分かるけれど、なぜ自分たちが……」 父の思いを込めたはずの遺言書が、家族にわだかまりを残す結果になってしまいました。

ケース2 準確定申告の期限に間に合わない
みなし譲渡所得税の準確定申告は、原則として、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です。

葬儀や四十九日、さまざまな手続きに追われるうちに、税金がかかることに気づかず期限を過ぎてしまうと、延滞税などのペナルティが加わることもあります。

ケース3 寄付先に受け取ってもらえない
「土地を寄付する」と遺言書に書いたものの、亡くなった後に団体に連絡すると、*「不動産の遺贈は受け付けていない」*と断られてしまうケースもあります。

団体が遺贈を放棄すると、その財産は相続人が引き継ぐことになり、寄付したいという思い自体が実現しません。

ケース4 包括遺贈で団体が辞退
「全財産を団体に」という包括遺贈の遺言書を残したところ、団体が、借金や税金を引き継ぐリスクなどを理由に遺贈を辞退。結局、財産は相続人に引き継がれ、遺言者の希望はかないませんでした。

6. トラブルを防ぐためにできること

こうしたトラブルの多くは、遺言書を書く段階での準備で防ぐことができます。

① 寄付先に、事前に確認する
不動産や株式を受け付けているか、包括遺贈を受け付けているか。遺言書を書く前に、寄付先の団体に確認しておきましょう。遺贈寄付の相談窓口を設けている団体もあります。

② 現金にしてから寄付する方法を検討する
「不動産を売却して、そのお金を寄付する」という内容の遺言書(清算型遺贈)にする方法もあります。現金で受け取れるなら、という団体も多くあります。

ただし、この方法でも、売却時の譲渡所得税を相続人が負担することになる場合があるため、税金の扱いは事前に確認が必要です。

③ 相続人に、納税資金を残しておく
税金がかかることを前提に、相続人が納税に困らないよう、預貯金などを残しておく方法です。だれに、いくら残すのかを遺言書で明確にしておくと安心です。

④ 非課税の特例を検討する
公益法人などへの遺贈で、一定の要件を満たし、国税庁長官の承認を受けた場合には、みなし譲渡所得税がその時点では課税されなくなる特例があります。

ただし、要件が細かく、申請の期限も原則として遺贈から4か月以内と短いため、利用できるかどうかは、税理士や寄付先の団体と早めに相談しておくことが大切です。

⑤ 家族に、思いと事情を伝えておく
遺言書の付言事項に、なぜこの団体に寄付するのか、税金のことも含めて家族に伝えておくと、相続人の理解を得やすくなります。

おわりに

不動産や株式の遺贈寄付は、社会に大きな力を残せる一方で、*みなし譲渡所得税という「見えにくい負担」*が、ご家族にかかることがあります。

・特定遺贈なら、税金は原則として相続人が負担する
・包括遺贈なら、寄付先の法人も割合に応じて負担するが、団体に辞退されることもある

どちらも難しい課題が生じてしまいます。

せっかくの寄付の思いが、家族のわだかまりや、受け取ってもらえない遺言書にならないよう、遺言書を書く前の準備がとても大切です。

「この土地を寄付したいけれど、家族に負担がかからないか心配」 「寄付先にどう確認すればいいか分からない」 「現金で寄付するか、不動産のまま寄付するか迷っている」

そんなときは、ココナラの相続・遺言の電話相談をご利用ください。

ご家族の状況や、寄付したい財産・寄付先についてうかがいながら、遺言書を書く前に整理しておきたいことを一緒に確認します。 

※税額の計算や申告など、税金に関する具体的なご相談は、税理士へのご相談をおすすめしています。

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