「親から相続した実家、売ってしまおうと思ったら、不動産屋さんに断られてしまった」 相続のご相談の中で、こうしたお話を聞くことが増えています。
不動産は、持っているだけで固定資産税がかかり、管理の手間もかかります。「いらないなら売ればいい」と思われがちですが、実際には、売りたくても売れない不動産がたくさんあります。
この記事では、相続した不動産が売れない代表的なパターンを10個ご紹介します。遺産分割の前や、遺言書を書く前に、「うちの不動産は大丈夫かな?」と確認するきっかけにしていただければと思います。
1. 地方の物件(需要がない)
いちばん多いのが、このパターンです。
人口が減っている地域や、駅から遠い郊外の住宅地では、そもそも買いたい人がいないことがあります。不動産会社に相談しても、「この価格では仲介手数料が割に合わない」と、取り扱ってもらえないこともあります。
さらに、古い空き家が建っている場合は、解体費用のほうが土地の価格より高いということも珍しくありません。売ろうとしても、買い手から「建物を壊してからなら」と言われ、手出しのほうが大きくなってしまうのです。
「田舎の実家だから、いつか誰かが買ってくれるだろう」と思っているうちに、建物の傷みが進み、ますます売りにくくなる。そんな悪循環に陥りやすいのが地方物件の特徴です。
2. 接道がない・接道の条件を満たしていない(再建築不可)
建物を建てる土地は、法律上、原則として幅4m以上の道路に、2m以上接していなければならないと決められています(接道義務)。
この条件を満たしていない土地は、今ある建物を取り壊すと、新しい建物を建てることができません。これを「再建築不可物件」といいます。
たとえば、次のような土地が当てはまることがあります。
・道路に接しておらず、他人の土地を通らないと出入りできない
・道路に接している部分の幅が2mに足りない(細い通路の奥にある、いわゆる旗竿地など)
・前の道が、法律上の「道路」として認められていない
昔からある住宅地では、建てた当時は問題なかったのに、今の基準では再建築不可になっている、という家が少なくありません。
再建築不可の土地は、住宅ローンが使えないことも多く、買い手がほとんど見つからないか、見つかっても相場よりかなり安い価格になってしまいます。
3. 農地
田や畑などの農地は、自由に売ることができません。
農地を農地のまま売る場合は、原則として農業委員会の許可が必要で、買い手は、農業をしている人などに限られます。農業をする人が減っている今、買い手を見つけるのは簡単ではありません。
では、宅地などに変えて売ればいいかというと、こちらも転用の許可が必要です。特に、農業を守るために指定された地域の農地は、転用自体がほとんど認められないこともあります。
なお、農地を相続した場合、売るための許可は不要ですが、農業委員会への届出が必要になります。
4. 山林・原野
山林や原野も、売れにくい不動産の代表です。
・木材の価格が下がり、山林を買っても利益が出にくい
・境界がはっきりせず、どこからどこまでが自分の土地か分からない
・現地に行くこと自体が難しい
といった理由から、買い手がほとんどいないのが実情です。
「祖父の代から山があると聞いていたが、場所も分からない」というご相談も少なくありません。
5. 市街化調整区域の物件
都市計画で「市街化調整区域」に指定されている地域は、市街化をおさえる地域です。原則として、新しく建物を建てることが制限されています。
すでに家が建っていても、建て替えや用途の変更に許可が必要だったり、そもそも許可が下りなかったりすることがあります。買い手が自由に家を建てられないため、需要が少なく、価格も低くなりがちです。
6. 借地権
借地権とは、他人の土地を借りて、自分の建物を建てている権利のことです。親が地主から土地を借りて家を建てていた場合、その借地権も相続の対象になります。
借地権を売る場合には、原則として地主の承諾が必要です。承諾を得るために「承諾料」を求められることもありますし、地主との関係によっては、話し合い自体が難航することもあります。
また、買い手側から見ると、
・土地は自分のものにならない
・毎月の地代がかかる
・建て替えや増改築にも、地主の承諾が必要になる
といった制約があるため、一般の買い手には敬遠されやすいのが実情です。
7. 貸宅地(底地)
貸宅地(底地)は、借地権とは逆の立場です。自分の土地を他人に貸していて、その上に相手の建物が建っている状態の土地をいいます。
親が地主で、土地を貸していた場合に相続することがあります。
貸宅地は、自分の土地でありながら、
・借地人がいるため、自分で使うことができない
・借地人の権利が強く、簡単には土地を返してもらえない
・昔からの契約で、地代がとても安いことが多い
といった事情があり、買い手は借地人本人か、専門の業者などに限られがちです。売れたとしても、更地の価格よりかなり低くなるのが一般的です。
8. 共有名義の不動産
1つの不動産を、複数の人で共有している状態です。相続では、「とりあえず兄弟で共有に」としてしまうケースがよくあります。
共有名義の不動産をまるごと売るには、共有者全員の同意が必要です。一人でも反対する人がいれば、売ることができません。
さらに、時間がたつと、
・共有者の一人が亡くなり、その子どもたちに持分が引き継がれて、共有者がどんどん増える
・共有者の一人と連絡が取れなくなる
・共有者の一人が認知症になり、自分で判断できなくなる
といった事態が起こり、ますます売ることが難しくなっていきます。
自分の持分だけを売ることは法律上は可能ですが、持分だけを買いたいという人は少なく、価格も大きく下がってしまいます。
9. 先代名義のままの不動産
祖父や曽祖父など、亡くなった人の名義のままになっている不動産です。
不動産を売るためには、まず、相続した人の名義に変更(相続登記)しなければなりません。しかし、先代名義のまま長年放置されていると、
・相続人が何十人にも増えている
・会ったこともない親戚や、連絡先の分からない人が相続人になっている
・相続人の中に、亡くなった人や海外に住んでいる人がいる
といったことが起こり、名義を変えるだけで大変な手間と時間がかかります。相続人全員の協力が得られなければ、売ることもできません。
なお、2024年4月から相続登記が義務化されました。それより前に相続した不動産も対象で、原則として2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。正当な理由なく登記をしないと、過料(10万円以下)の対象になることがありますので、心当たりのある方は早めに確認しておきましょう。
10. 紛争をかかえた不動産
トラブルをかかえた不動産も、売ることが難しくなります。
相続人どうしの争い
遺産分割の話し合いがまとまらなければ、だれの不動産になるのかが決まらず、売ることができません。「売って現金で分けたい」人と「実家を残したい」人で意見が分かれることも、よくあります。
境界のトラブル
隣の土地との境界がはっきりしない、隣の人と境界について意見が食い違っている。こうした土地は、境界を確定する測量ができず、買い手から敬遠されます。
越境
隣の家の屋根や塀、木の枝などがこちらの土地にはみ出している(または、こちらからはみ出している)ケースです。解決しないまま売ると、買い手が後でトラブルに巻き込まれるため、売却の妨げになります。
占有者がいる
親族が無断で住み続けているケースです。明け渡してもらわなければ、売ることは困難です。
11. 売れない不動産を放置するとどうなる?
「売れないなら、そのままにしておけばいい」と思われるかもしれません。しかし、売れない不動産を放置すると、次のようなリスクがあります。
・固定資産税がかかり続ける:使っていなくても、毎年の固定資産税はかかります。
・管理の責任を問われる:空き家の倒壊や、ブロック塀の崩れ、木の枝の越境などで他人に損害を与えれば、所有者が責任を負うことがあります。
・空き家の税金が上がることがある:管理が不十分な空き家と判断されると、固定資産税の軽減が受けられなくなることがあります。
・次の世代に問題が引き継がれる:放置すればするほど、相続人が増え、権利関係が複雑になり、子どもや孫の代で、さらに手のつけられない状態になってしまいます。
売れない不動産の問題は、時間がたつほど解決が難しくなるのが特徴です。
おわりに
相続した不動産が「売れない」理由は、立地や需要の問題だけでなく、法律の制限、権利関係、名義、人間関係など、さまざまです。そして、1つの不動産に、いくつもの理由が重なっていることも少なくありません。
大切なのは、「うちの不動産はどんな状態なのか」を早めに知っておくことです。相続が始まってから慌てるのではなく、親が元気なうちに、あるいは遺言書を書く前に確認しておくことで、選べる方法が大きく変わってきます。
「実家が売れるのか、売れないのか分からない」 「先代の名義のままになっている土地がある」 「兄弟で共有している不動産をどうすればいいか悩んでいる」
そんなときは、ココナラの相続・遺言の電話相談をご利用ください。
不動産の状況やご家族の事情をうかがいながら、今の時点で整理しておきたいことを一緒に確認します。「何から手をつければいいか分からない」という段階でも大丈夫です。
※登記の手続きは司法書士、相続人間の争いは弁護士、税金のことは税理士など、ご相談内容によっては、他の専門家へのご相談をおすすめすることがあります。
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