ちび愚者のカードめぐり旅|静かな女教皇の部屋

ちび愚者のカードめぐり旅|静かな女教皇の部屋

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占い
魔術師のテーブルをあとにして

ちび愚者は、小さな杖を胸に抱えながら歩いていました。

『使ってみようと思うことが始まりだよ』

魔術師の言葉が、まだ耳の奥に残っています。

でも、歩き出してしばらくすると

ちび愚者の足は少しずつ重くなっていきました。
「ねえ、次は何をすればいいの?」
小さな犬が、ちび愚者を見上げて問いかけます。
ちび愚者は答えようとしました。

けれど、言葉は出てきません。
杖を持ったからといって、

すぐに何でもわかるようになるわけではありませんでした。

そのとき、
道の先に月明かりで青白く光る何かが見えました。

光に近づいていくと、そこには古い扉がありました。

扉は少しだけ開いていて、中から静かな空気が流れてきます。
ちび愚者は、そっと扉を押しました。

そこは、月明かりの差す小さな部屋でした。

高い窓。

静かな本棚。

青い布のかかった椅子。
そして部屋の奥に、本を抱えた人が座っていました。

その人は、ちび愚者を見ると、ゆっくりと顔を上げました。
「よく来ましたね」
声は小さかったけれど、
不思議と部屋のすみずみまで届くようでした。
「あなたはだれ?」
ちび愚者がたずねると、その人は本を胸に抱いたまま答えました。
「私は女教皇。
すぐには言葉にならないものを静かに見守る者です」

ちび愚者は、手の中の杖を見ました。
「魔術師さんは、使ってみようって言った。

でも、何に使えばいいのか、まだわからないんだ」
女教皇は、急かすことなくただうなずきました。
「わからない時は、無理に答えを出さなくてもいいのです」
「でも、進まなきゃ。

ぼく、旅を始めたんだから」
ちび愚者がそう言うと、女教皇は静かに窓を指さしました。
その先の外に月が見えます。

まんまるではない、少し欠けた月です。

「月は、全部を見せてはくれません。

でも、見えない部分がなくなったわけではないのです」
ちび愚者は、月を見上げました。
明るいところ。

暗いところ。

まだ見えないところ。
その全部で、月なのだと思いました。

「答えはすぐに見つからなくてもいいの?」
「ええ。

心の奥にある小さな声は
静かな時に聞こえることがあります」

ちび愚者は、目を閉じてみました。
すると、遠くの光とは別に

胸の奥で、ほんの小さな声がしました。
まだ言葉にはなっていません。

でも、たしかにそこにある気がしました。
小さな犬もちび愚者の足もとで静かに座っています。

まるで同じ何かを聞いているように。

女教皇は、ちび愚者に一冊の小さな本を差し出しました。
「これは、まだ白紙の本です」
「本なのに?何も書いてないの?」
「だからこそ、あなたの旅が書けるのです。

でも、急いで全部を書こうとしなくていい。

今日わかったことを
ひとつだけ書けばいいのです」

カードめぐり3女教皇-挿絵小2.jpg


ちび愚者は、白紙のページをそっと開きました。
「でも、何で書けばいいの?」
そう言って、ちび愚者が魔術師から受け取った小さな杖を見つめると、

杖の先が、ふわりと白く光りました。
光が消えた時、
その杖は、小さな白いペンに変わっていました。

「使い方は、ひとつとは限りません」
女教皇は静かに言いました。
ちび愚者は、少し考えてから
小さな字でこう書きました。

『わからない時は
静かに心の奥に聞いてみる』

すると、ページのすみに小さな月のしるしが浮かびました。
「今の声を忘れないように」
女教皇はそう言ってやさしく微笑みました。

部屋を出るころ、空はまだ夜の色を残していました。

すると遠くのほうから、やわらかな花の香りが流れてきます。
小さな犬が鼻をぴくぴくさせました。
「なんだか、いいにおいがする」
ちび愚者もそっと息を吸い込み、また歩き出します。
その香りの先へ誘われるように。



今日の小さな道しるべ1.png
女教皇のカードは、すぐに答えを出すことよりも、
心の奥にある静かな声に耳を澄ませることを教えてくれるカードです。

迷っている時は急いで決めようとせず、
今の自分が何を感じているのかを
そっと見つめる時間も大切です。
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