生徒さんや保護者の方から「先生の説明はわかりやすいですね」と言っていただくことがあります。もちろん、そのように感じていただけるのは嬉しいことです。
ただ、私は以前から一つ疑問に思っていることがあります。
それは、「わかりやすい授業」と「実力がつく授業」は必ずしも同じではないのではないか、ということです。
例えば、先生が板書をたくさんして、解法を順番に説明し、生徒はそれを見ながら「なるほど」と理解する。授業中はとてもスムーズですし、満足感もあります。
しかし、いざテスト本番になると先生はいません。
目の前にある問題を、自分一人で読み、考え、方針を立て、解き切らなければなりません。
授業中に「わかった」と感じることと、一人で解けることの間には、意外と大きな隔たりがあります。
だから私はレッスンの中で、何でもかんでも板書したり、すべてを先回りして説明したりしないよう意識しています。
もちろん、必要な説明はします。しかし、生徒さん自身が考えられそうなところまで私が奪ってしまうと、その場では理解できても、後々自力で考える力が育ちにくくなってしまうからです。
ときには口頭だけで説明したり、「どう思う?」と問い返したりすることもあります。
その瞬間は少し大変かもしれません。しかし、頭を使って考えた経験は、誰かから与えられた説明よりもずっと強く記憶に残ります。
私は数学を教えていますが、数学の勉強で本当に身につけてほしいのは、公式や解法そのものだけではありません。
わからない問題に出会ったときに立ち止まり、自分なりに考え、試行錯誤する力です。
その力は、手取り足取り教えられているだけではなかなか育ちません。
もちろん、放置することと考えさせることは違います。困っている人を見捨てるつもりはありませんし、必要なときにはしっかりサポートします。
ただ、「生徒が自分で考える余地」を残すこともまた、教師の大切な仕事だと思っています。
一見すると、丁寧に教える先生の方が親切に見えるかもしれません。
けれども、本当に生徒の将来を考えたとき、その場のわかりやすさだけを追い求めることが正解とは限りません。
私自身も、「わかりやすく見せること」に流されず、「力がつくこと」を大切にしながら、これからもレッスンを続けていきたいと思います。