【連載小説】第92話 仲間が集う日

【連載小説】第92話 仲間が集う日

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赤坂のママは、有美ちゃんを優しい目で見つめながら話してくださった。

『有美は、この店のリーダーみたいな子なの』

その声には、娘を送り出す母親のような温かさがあった。

『劇団でも中心になって頑張っているし、フラメンコの先生もしているのよ。本当は手放したくないくらい大切な子』

美月は有美ちゃんの顔を見た。

穏やかな笑顔。

物静かな話し方。

劇団で踊る人というイメージとは違い、どこか安心感のある女性だった。

その笑顔が、なぜか母に少し似ているような気がした。

その瞬間だった。

(この子と一緒にお店を作りたい)

そう思った。

『有美さん』

『はい』

『来月、銀座で小さなお店を開くの。まだ何もかもこれからのお店なんだけど一緒に作ってみない?』

有美ちゃんは少しも迷わず答えた。

『私でよければ、ぜひお願いします』

『本当に?』

思わず声が大きくなった。

『ありがとうございます』

それだけで胸がいっぱいになった。

『早速だけど明日お店へ来られる?』

『はい。伺います』

話は驚くほど自然にまとまった。

人とのご縁とは、こういうものなのかもしれない。

それから夏美ちゃん、美由希ちゃんも加わることになった。

三人とも劇団で頑張っている明るい女性たちだった。

仲間が少しずつ増えていく。

そのことが何より心強かった。

けれど、まだ安心はできなかった。

美月は容子ちゃんへ電話をかけた。

『もしもし』

『美月ちゃん、お店どう?』

『何とか準備は進んでいるんだけど、女の子がまだ足りないの』

事情を話すと、容子ちゃんは笑った。

『美月ちゃん、一人忘れてない?』

『えっ?』

『私よ』

思わず言葉を失った。

『でも容子ちゃんはヴィーナスでしょう』

『辞めるわけにはいかないけど、深夜なら手伝えるわ。それに、お客様も連れて行くから』

胸が熱くなった。

『ありがとう……』

それしか言えなかった。

容子ちゃんは、ヴィーナス時代からずっと仲良くしてきた友人だった。

明るくて、面倒見がよく、人のためなら自分のことを後回しにできる人。

そんな彼女が迷わず力を貸してくれた。

私は、人に恵まれている。

心からそう思った。

さらに数日後、小夜ちゃんからも連絡が入った。

『半年だけだけど、一緒に働きたい』

結婚を控えているため期間限定だった。

それでも、今の美月には本当にありがたかった。

こうして、一人、また一人と仲間が集まってくれた。

振り返れば、誰一人として自分の力だけで見つけた人はいない。

人が人をつないでくれた。

そのご縁が、「クラブ 結」を少しずつ形にしてくれていた。

開店まであとわずか。

内装工事も終わり、保健所の検査も無事に済んだ。

すべてがぎりぎりだった。

奇跡のようなタイミングで、一つずつ準備が整っていく。

気づけば、開店の日はもう目の前だった。

期待よりも、不安のほうが少しだけ大きい。

それでも美月は前を向いた。

ここまで来られたのは、一人ではなかったから。

支えてくれる人がいる。

信じてくれる人がいる。

そして、一緒に歩いてくれる仲間がいる。

そのことだけを胸に、美月は「クラブ 結」の扉を開く朝を迎えようとしていた。
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