それからしばらくして、
和美ちゃんから一本の電話があった。
突然銀座を去った理由は、
誰も想像していなかったものだった。
恋人との別れ。
やけになって切った長い黒髪。
そして思い切った変身。
だがそれが運悪く環ママの逆鱗に触れた。
銀座では時として、
たった一つの選択が人生を変える。
和美ちゃんは誰にも本当のことを言えないまま、
大阪へ去っていった。
人生の流れは、
時として残酷なほど急に向きを変える。
銀座の夜も同じだった。
昨日まで普通だった景色が、
今日にはまったく違う顔を見せる。
テレビで見た有名人が突然現れることもあった。
新聞を賑わせる人物と
昨日まで笑いながら酒を飲んでいたこともある。
銀座とはそういう街だった。
表舞台と裏舞台が
同じ場所に存在している。
そんなある日、
礼子さんという美しい女性が入店した。
近寄り難いほどの美貌。
多くのお客様を抱える売上のお姉さん。
だがどこか影があった。
その礼子さんには、
狭間さんという常連客がいた。
いつも大人数で来店し、
お店にとってはありがたい上客だった。
しかし美月は苦手だった。
理由は説明できない。
ただ本能が警戒していた。
そして礼子さんは、
ある日突然姿を消した。
誰にも理由を告げないまま。
だが狭間さんだけは残った。
まるで何事もなかったかのように。
その夜だった。
銀座に来て初めて、
本当の恐怖を知ることになる。
この日から数週間後、決戦の火蓋は切って落とされた。