【連載小説】第67話 消えた和美

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銀座で働くようになって分かったことがある。

お客様には大きく分けて三種類の人がいた。

仕事で来る人。

仲間と楽しむ人。

そして誰か一人の女性に会いに来る人。

同じお酒を飲んでいても、
目的はまったく違う。

銀座はお酒を売る場所ではない。

人と人との時間を売る場所なのだ。

だから三時間半の勤務時間は短いようで長い。

一つの言葉。

一つの表情。

一つの空気。

その全てに神経を張り巡らせる。

失敗は許されない。

けれどその緊張感が、
いつしか心地良くなってくる。

銀座には不思議な魔力があった。

そんな頃、

美月には仲の良い先輩ができた。

和美ちゃんだった。

派手な銀座には珍しく、
家庭的で穏やかな女性だった。

なぜこの世界にいるのだろう。

そう思うほど優しかった。

帰り道も同じ方向だったことから、
二人は自然と親しくなった。

そしてある日、

和美ちゃんに誘われて錦糸町へ行くことになった。

理由は少し変わっていた。

和美ちゃんにはホストの恋人がいたのだ。

ホストクラブは想像以上だった。

豪華な内装。

煌びやかな照明。

まるで別世界だった。

けれど実際に中へ入ると、

意外にも普通の若者たちがいた。

笑い、

愚痴を言い、

仲間と騒ぐ。

そこにはテレビで見るような派手さより、

同じ夜の世界で働く人間たちの日常があった。

『この世界も楽じゃないですよ』

和美ちゃんの恋人、心さんはそう言った。

『嫉妬もあるし嫌がらせもある。

結局どこも同じなんです』

その言葉に美月は妙に納得した。

銀座もそうだった。

華やかに見える場所ほど、

人知れない苦労が隠れている。

その夜、

心さんが紹介してくれたヒロという青年と話した。

どこにでもいそうな、

気の良い青年だった。

ホストというより、

近所のお兄さんのような人だった。

美月は少し拍子抜けした。

夜の世界にはもっと特別な人がいると思っていたからだ。

けれど特別に見える人も、

結局は普通の人間なのだ。

その日を境に、

和美ちゃんとの付き合いはさらに深くなった。

そう思っていた。

だが人生は時々、

何の前触れもなく人を連れ去る。

数ヶ月後。

和美ちゃんは突然いなくなった。

大阪へ行ったという噂だけが残った。

恋人だった心さんも。

働いていた店も。

住んでいた部屋も。

全てを捨てるように姿を消した。

理由を知る人はいなかった。

残されたのは、

突然途切れた時間だけだった。

いったい和美ちゃんに何が起きたのだろう。
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