【連載小説】第33話 最初の洗礼

【連載小説】第33話 最初の洗礼

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大きなクラブとなると男性スタッフの数も多い。

店長はお店全体を管理する総責任者。
チーフはカンター内やキッチンを担当する責任者。
そしてマネージャーは女の子をどの席に配置するのか瞬時に考えて指示しなくてはいけない。
一番苦情が多いのがこの立場だ。
最後はボーイ。お店の女性には絶対服従という男としてのプライドを捨てないと務まらない。

『美月さんお願いします』
マネージャーからついに声がかかった!
ついに来た。
胸の奥で、何かが強く脈打つ。

『はい』
ドキドキしながらお席についた。
『今晩は』
『いやいやいい子入ったじゃないか』
『横田さんこの子、今日から入った美月ちゃんなの』
と隣にいたナンバーワンの美涙さんが紹介してくれた。

『美月です。宜しくお願いします』
『美月ちゃんか、まだ若くていいねえ、どうだい今夜どこか食事でもいかんかね』
『まあ、横田さんたらだめよ。初日でこんなに緊張して可哀想じゃない』
『何でも飲んでいいぞ、つまみも食べるか?』
『いえ、、、』
『この横田さんはね。この町で一番大きな米屋の社長さんなの』
『別荘を持っていてお庭もすごいって噂だわ』

『そういえばこの前、死にそうになったんだよ』
と横田さんは急に話し始めた。
『運転してて踏み切りの端のほうで急に止まっちゃってさ、その時電車が来てぶつかったんだよ』とこともなげに言った。
『ええ!電車とぶつかったの?怪我しなかったの?危ないところでしたね』
『そうさ、危機一髪だったよ。まぁ、怪我してたらここにいないけどな』
『それで車は?』
『だめさ、いくらベンツでも電車相手じゃ勝てないよ』
『それで足を少し怪我しただけで済んだけど怖いね、世の中、何が起きるかわかんない』
と、横田さんの話で盛り上がる。

『そうそう、今日は美月ちゃんの入店祝いでお寿司屋さんにいかない?』
『美月ちゃん行こうよ』
と美涙さんが誘ってくれた。
その笑顔は、不思議と安心させるものだった。
この人についていけば大丈夫、
そんな気さえした。

『美月さんお願いします』
とまたマネージャーに呼ばれた。

『横田さんちょっと失礼します』

『今晩は』
と一美さんのお客様のお席。

『あ、美月ちゃん悪いけどアイス持ってきてくれる』
と座らないうちに一美さんに言われた。

『美月ちゃんか、初めてだね』
とお客様と話そうとしたら

『美月ちゃん、灰皿がないから貰ってきて』
座る間もなく、言葉が飛んできた。

あれ?
何かが違う。
その意味を、美月はまだ知らない。
それが“洗礼”だということを。
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