「また抜けている」
「昨日より分け目が目立つ気がする」
「ちゃんとケアしているのに、何も変わっていない」
薄毛や抜け毛が気になり始めると、鏡を見るたびに「悪くなったところ」を探してしまうことがあります。
私は美容師として30年以上、頭皮や薄毛のお悩みに18年以上向き合ってきました。
たくさんの女性のお話を聞いてきて感じるのは、不安が大きくなるほど、人は「できていないこと」に目が向きやすくなるということです。
## 私自身も「できなかったこと」を数えていました
先日、家でスイートポテトを作りました。
家族が以前喜んでくれたので、今回もたくさん作ったのですが、出来上がってから気づきました。
「あ……バターを入れ忘れた」
少しパサパサした仕上がりになってしまいました。
その瞬間、私の頭に浮かんだのは、
「失敗した」
でした。
でも、その日は朝からいろいろな用事を済ませていました。
必要な家事をして、突然起きたトラブルにも対応して、翌日の準備をして、食事も作った。
いくつも「できたこと」があったのに、私が数えていたのは、
「バターを入れ忘れた」
という、たった一つのことでした。
そこでふと、
「薄毛に悩んでいる方も、同じようなことがあるかもしれない」
と思ったのです。
## 髪が気になると「悪いところ探し」になってしまう
薄毛が気になっていると、
朝、枕についている髪を見る。
シャンプーのときの抜け毛を見る。
ドライヤーのあと、床を見る。
鏡で分け目を見る。
写真を撮って以前と比べる。
そして、
「また抜けた」
「ここも薄くなったかもしれない」
と不安になる。
すると今度はスマートフォンで検索します。
「女性 抜け毛 原因」
「女性 薄毛 改善」
「育毛剤 おすすめ」
「分け目 薄い」
調べれば調べるほど、さらに別の情報が出てきます。
そして、
「これもできていない」
「あれもやったほうがいいのかな」
「この商品も必要なのかな」
と、どんどん不安が増えてしまうことがあります。
## でも「できていること」もありませんか?
そんなとき、一度だけ立ち止まってみてほしいのです。
昨日より少し早く眠れた。
今日はきちんと食事をとれた。
疲れていたから、無理をせず休めた。
頭皮を必要以上に触らずに過ごせた。
不安になったけれど、新しい商品をすぐに買わなかった。
髪のことを考えずに笑っていた時間があった。
どれも、とても小さなことかもしれません。
でも、それも今日の自分が「できたこと」です。
## 情報を100個集めるより、今日できることを一つ
もちろん、薄毛にはさまざまな原因があります。
生活習慣だけですべてが改善するわけではありませんし、症状によっては皮膚科など医療機関への相談が必要な場合もあります。
だから私は、
「これをすれば必ず生えます」
「この商品を使えば大丈夫です」
とは言いたくありません。
ただ、不安でいっぱいになって、次から次へと情報や商品を探し続ける前に、
「今の自分にできることは何だろう?」
と考えてみてほしいのです。
睡眠を少し見直す。
食事をとる。
身体を動かす。
疲れているなら休む。
必要以上に髪を確認する時間を減らしてみる。
自分に必要なケアを整理する。
情報を100個集めるよりも、
今日できることを一つ。
そのほうが、心まで疲れ切ってしまわずに続けられることがあります。
## 薄毛相談で私が大切にしていること
私は長く頭皮や薄毛のお悩みを聞いてきましたが、相談に来られる方を「髪だけ」で見ることはできないと思っています。
同じ「抜け毛が気になる」という相談でも、その方の生活も、悩んできた時間も、不安の大きさも違うからです。
だから私は、まずお話を聞きます。
何が一番不安なのか。
いつから気になっているのか。
どんなケアをしているのか。
生活の中で無理をしていることはないか。
そして、
「今、本当に必要なことは何なのか」
を一緒に整理していきたいと思っています。
不安を煽って商品を勧めることはしたくありません。
必要のないものまで「使ったほうがいい」と言いたくありません。
逆に、医療機関へ相談したほうがよいと考えられる場合には、それもきちんとお伝えしたいと思っています。
## 「できなかったこと」だけで今日を決めなくていい
私のスイートポテトは、バターを入れ忘れて少しパサパサになりました。
でも、食べられないわけではありません。
家族のことを考えて作ったことまで、失敗になったわけでもありません。
髪の悩みも同じです。
今日は抜け毛が気になった。
鏡を見て落ち込んだ。
思うようにケアできなかった。
そんな日があったとしても、
それだけで「私は何もできていない」と決めなくていいのです。
できなかったことを一つ見つけたら、
できたことも一つ探してみる。
そして、
「じゃあ、明日は何を一つやってみよう」
と考えてみる。
髪のことで頭の中がいっぱいになってしまったときこそ、私はそんなふうに一緒に整理できる存在でありたいと思っています。
髪だけではなく、その人自身を見ること。
不安を増やすのではなく、少し減らすこと。
そしていつか、
「最近、鏡を見るのが前ほど怖くなくなりました」
そんな言葉を聞けたら嬉しいです。
完璧じゃなくていい。
今日できたことを、一つ。
そこから一緒に考えていきましょう。