「自由貿易と人権との関係において国家,企業,個人が果たす役割」上智大学法学部国際関係法学科総合型

「自由貿易と人権との関係において国家,企業,個人が果たす役割」上智大学法学部国際関係法学科総合型

記事
学び

(1)問題




次の課題文を読んだのち,下記の問いに答えてください。



①  米国が人権をキーワードに,対中国の規制を強めている。「ユニクロ」のシャツの差し止めで注目された輸入規制が拡大し,企業は列挙。関連の見直し検討などの難題を抱える。ただ米国の動きは,自由貿易を前提とする国際ルールの例外だ。中国側も対抗措置を取り始めており,日本企業は米中双方の動きに目を配る必要がある。



②  米国務省など6省庁は13日,米政権がこれまで導入してきた,新疆しんきょうウイグル自治区での人権侵害を理由とする対中制裁を列挙.関連する法令の順守を企業に勧告した。20年の勧告を更新し,対象分野を広げた。



③  米国は21年1月までにウイグル産の綿・トマト製品の輸入を全面禁上,日本企業も「ユニクロ」製品が輸入を差し止められた。5月には中国の水産大手,6月下旬には太陽光パネルに使うポリシリコンを扱う企業を一部輸入制限の対象とするなど,強制労働を根拠とした規制を強め続ける。



④  これらの水際規制は「違反商品保留命令」,といい,1930年関税法307条に基づく強制労働で生産された商品の輸入を制限する条項だ。ただこうした輸入制限は,自由貿易が原則の国際ルールと相反するようにもみえる。



⑤  米国の規制が有効な根拠は,関税貿易一般協定(GATT)の例外規定だ。



⑥  GATTの11条1項は輸出入の制限を原則禁じる一方,上智大学の川瀬剛志教授は「強制労働による産品については,同20条の『公徳の保護のために必要な措置』と『刑務所労働の産品に関する措置』による例外が適用され得る」と説明する。「公徳」には人権が含まれ,「刑務所労働」は自由を奪われた施設での労働なら該当するという。



⑦  ただし米国に保護主義的な意図や,中国を狙い撃ちする意図があれば「例外」は認められない。ウイグル関連製品の禁輸措置について「同様の強制労働が行われる中国以外の製品への対応が甘いと,恣意的・不当な差別とみなされる可能性がある」(広瀬教授)。



⑧  中国政府は現時点で米国に対し世界貿易機関(WTO)のパネルで争う姿勢はみせていない。だが経団連の森田清隆・統括主幹は「仮に争われたら輸入禁止措置が本当に人権保護の効果を生んでいるのかが,厳しく精査される」とみる。



⑨  日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューヨーク事務所の藪恭兵氏は「企業側も米政府の措置に不服を申し立てられる」と指摘する。強制労働で生産されたとされるステピアの粉末を輸入していた米国企業は罰金を命じられたが,当局と交渉し大幅減額にこぎつけた。



⑩  日本企業は中国の対抗策への目配りも必要だ。6月施行の「反外国制裁法」は,中国企業に対する外国の差別的措置への協力を禁止。「違反した企業は損害賠償請求の対象になるリスクがある」(石本茂彦弁護士)。宇賀神崇弁護士は「日本企業は『踏み絵』を迫られている」と指摘する。



出典:瀬川奈都子『企業,人権か自由貿易か,米の対中規制,影響広がる』2021年7月19日付日本経済新聞朝刊16ベージ.



問1 米国の輸入規制の目的と内容についてまとめたのち,それが国際ルールのもとでどのように正当化されうるのか,また正当化されうるとしてどのような条件を満たす必要があるのか,400宇以下で説明しなさい。



問2 課題文の内容を踏まえ,自由貿易と人権との関係において国家,企業および個人がそれぞれどのような役割を果たすべきかについて,あなたの考えを400字以下で述べなさい。



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(2)解答例



問1

米国の輸入規制の内容は、21年1月までにウイグル産の綿・トマト製品の輸入を全面禁上する。また関連する法令の順守を企業に勧告した。さらに20年の勧告を更新し,対象分野を広げた。これらの水際規制は「違反商品保留命令」といい、1 9 3 0年関税法3 0 7条にある、強制労働で生産された商品の輸入を制限する「違反商品保留命令」の条項に基づく輸入規制である。新疆ウイグル自治区での中国の人権侵害の是正を目的とする。GATTの11条1項では輸出入の制限を原則禁じている。米国の中国製品に対する輸入規制が、こうした国際ルールの例外にあたる。こうした措置が、例外規定しているG A T T 20条の「公徳の保護のために必要な措置」にあてはまるか、輸入禁止措置が本当に人権保護の効果を生んでいるのかが正当化できる条件となる。米国に保護主義的な意図や,中国を狙い撃ちする意図があれば今回の例外は認められない。(375字)



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