(1)問題
問 体験と経験の違いについて,以下の文章を参考にして,あなたの考えを1000字以内で述べてください 。
われわれは経験から非常に多くのことを学んでいる。森有正は,経験と異なる体験は違うと主張したものだが(森[1978]),経験という言葉を辞書で紐解くと「人間が外界との相互作用の過程を意識化して自分のものとすること」(広辞苑第六版)と記されている。この言葉通り、われわれは周りの環境から意識的に見聞きしたり、環境に働きかけたりすながら、実際の体験を通じて自らの知識を体系化している。
<出典:金井壽宏、谷口智彦、実践知の組織的継承とリーダーシップ』、『実践知――エキスパートの知性』金井壽宏、楠見孝、有斐閣、2012年>
(2)解答例
体験とは自分の行動で得た情報である。断片的であり、喜怒哀楽の感情が付加されている。体験は受動的なものであり、経験として自己の内部に組織化されない限り一回限りのもので終わってしまうおそれがある。一方、経験とは、受動的な体験を素材として自ら主体的に考え反省することで、ネガティブな体験であっても未来に向けてポジティブな意義を持つものとして変えてゆくことができる。また、初めから意識的に周囲の環境や他者に働きかけ、行動することで文脈を持った知識へと体系化し、明日を生きる糧として経験を活用することができる。
私は小学生のときにクラスメートの名前をいじってからかったことで彼を傷つけてしまい彼との関係を悪化させてしまったことがある。この体験は私にとって後ろめたく、消してしまいたい嫌な体験として心に残っている。しかし、その後、この体験を相談した友人から諭され、また発達心理学の本を読み、人の名前は単なるラベルではなくそのひと固有のアイデンティティを形成する重要なものであることを学んだ。これにより、私の行為が浅はかで他者に対する思いやりや配慮を欠いたものでることを悟り、大いに反省した。その後は、他者の名前の重要性を認識して、他者に対する考えや態度を改めるようになった。
知人に声をかけるときに、苗字で呼ぶか、名前で呼ぶか。あだ名で呼ぶか、呼び捨てにするか。そてとも「君」や「さん」をつけるべきか。私はこうしたことを意識して対他者関係を考え、行動するようになった。こうして体験を経験に作り替えることができた。
私は将来、看護師として臨床の場に立つときが来る。そうして、日々の仕事の中でさまざまな体験をする。朝の検温から夜の見回りまで、看護師としてのルーティンワークはいわば体験の集積と言ってよい。しかし、この体験に慣れてしまってはいけない。日々の体験を常に振り返り、あのとき、ああすれば良かった、あのような言動は慎むべきであった。このように意識して自己の言動を反省する。そして、明日からはその反省点を改善して看護の仕事に生かし。患者のQOLのさらなる向上を目指す。このように、自らの体験を主体的に編成し直し、経験に昇華させることで、一人前の看護師として貢献したい。(936字)
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