「幕末藩士と現代 日本人」日本大学芸術学部映画学科A方式2014年

記事
学び

(1)問題


これは外国人が撮影した幕末の長州藩士の写真です。現代の日本人と比較してあなたが思うことを述べなさい。
* 題名は自由につけること.
* 字数 800字

幕末志士の写真.png

(2)考え方



 写真を見た印象を書き、自分がなぜこのような印象を受けるのか、その理由を分析・考察すること。

 現代の記念写真とは違った、異様な印象を受ける。その異様さを現代の写真と比較して書く。

 これは長州藩士を写したものであるが、日本史的な知識は必要最小限にとどめる。

知識に寄りかかって書くとつまらなくなる。

特に日芸は感性や洞察力、発想の斬新さが求められる。

現代人と比較するのだから、身の回りのデジカメやスマホ、インスタを題材にして書けばよい。

このような現代の写真を取り巻く状況を大量生産大量消費の経済と関連付けて書く方向がオーソドックスだろう。

坂本龍馬.png


(3)解答例



 幕末の武士たちを撮影したポートレートが残されているが、被写体はこの写真のように支配者階級である武士に限られていた。写真に写る機会は限られていて、一生のうち一回、機会に恵まれればいいほうではなかったか。写真は非日常的なもので、きちんとした正装をして、厳粛な雰囲気の下に撮影されたことが、この写真から読み取ることができる。幕末の日本人にとって写真機は文明の利器であり、写真は貴重なもので、これを贈られた側は、貴重な家宝として代々、家に伝えられたであろうことは想像に難くない。

 一方現代の写真はI C T技術の進展とともに大きく変化した。アナログからデジタルとなり写真機は小型化し、いまやスマホで解像度の高い写真が撮れるようになった。結果、インスタ映えという言葉に象徴されるように、より色彩感の強い対象が被写体に選ばれ、ツイッターやインスタグラムなどのソーシャルメディアを通じて、写真は若者達の日常的なコミュニケーションツールとなった。写真が大衆化するにつれて大量生産大量消費の波に洗われ、写真は撮り捨てされる時代となった。

 この写真には全体に緊張感が漂っていることが感じ取れる。二人とも刀に手をかけて、隙あらば斬りかかってくるような面構えである。現代人が写真を撮るときには、ピースポーズをとり、笑顔を向けて好意を表すのが通例である。対してこの写真の被写体の表情は敵意ともとれる緊張感にみなぎっている。それは、尊王攘夷を藩論として外国に敵対した長州藩という藩の性格もよるだろうが、むしろ、写真機に代表される科学技術に対する警戒心が無意識に表情に表れているのではないだろうか。テクノロジーは本来、人間の生活を利するものであるが、一歩使い方を誤ると、牙をむいて人間に襲い掛かる。インスタで慣れ過ぎて、テクノロジーの持つこのような本質を忘れがちの私たちに、この一葉の写真はこうした恐ろしい事実を伝えている。(797字)


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