(1)常体と敬体
文章の文体には常体と敬体があります。
常体は「である調」ともいい、文末が「だ」「である」で終わります。
敬体は「です・ます調」ともいい、文末が「です」「ます」で終わります。
志望理由書は敬体で書く受験生が多く、それでもかまいませんが、小論文は常体=「である調」で書くのが一般的です。
常体と敬体は原則、混在させてはいけません。つまり、1つの答案の文章を2つの文体を混ぜて書くことは原則、避けたほうがいいです。
(2)なぜ小論文の文体は常体で書くのか
一般的に作文は敬体で書く場合が多いです。
敬体の長所を書くと、敬体は丁寧な印象を読者に与えること。逆に、敬体の問題点は文末が単調になり、幼稚で退屈な印象を読者に与えてしまうことになります。
以下、<例文1>常体で書かれた文章と<例文2>敬体で書かれた文章を掲げます。
それぞれ、読後にどんな印象を受けるでしょうか。考えてみましょう。
<例文1>常体で書かれた文章
医療行為は病院内で医師と患者との間で為される個人間でのものである。しかし、地域医療は狭い病院の空間にとどまらない性質を持つ。これは医師の勤務する地域の気候や風土、食生活や産業、人口動態などといった地域の特色を前提とした公共性の上に立って為されるものである。このような地域の実状に照らして治療を行い、さらには予防を通して地域住民に働きかけるところまでが医師に課された公共的な責務である。
<例文2>敬体で書かれた文章
医療行為は病院内で医師と患者との間で為される個人間でのものです。しかし、地域医療は狭い病院の空間にとどまらない性質を持ちます。これは医師の勤務する地域の気候や風土、食生活や産業、人口動態などといった地域の特色を前提とした公共性の上に立って為されるものです。このような地域の実状に照らして治療を行い、さらには予防を通して地域住民に働きかけるところまでが医師に課された公共的な責務です。
書かれている内容は同じでも、<例文1>のように常体で書けば文章に重みが出ます。一方、<例文2>のように敬体で書くと、親しみやすく感じられます。
もう一例、常体で書かれた文章を挙げてみましょう。
<例文3>常体で書かれた文章
現代社会は分業化・専門化が進み、従来家族が行なっていた看護や介護を病院や福祉施設などの外部に委託するようになった。外部の専門職によるケアによって質的な内容は高まった。また、サービスとしての性格が強められたことで、患者や高齢者は安心して看護や介護を委ねる一方、自分が人の世話を受ける立場になったことに引け目を感じ、情けなく思う方もおられるだろう。人が人としての尊厳を保つということは、誰の手助けも受けず、自立した生活を送ることができることだけではない。自分が人の役に立ち、他人から必要とされることで「存在の意味」を確認し、生きる力が湧いてくる。
文末の表現に注目してください。
「高まった」⇒「だろう」⇒「ない」⇒「くる」
このように、常体の文体では、さまざま文末表現が可能となり、メリハリの利いた文章が可能となります。
形体の文章では基本的に文末は「です」「ます」などに限定され、退屈で単調な印象を受けるという難点があります。
小論文で常体で書く理由は、このような豊かでメリハリのある文章表現が可能になるからです。
(3)校正するときの注意点
自宅や学校、塾・予備校の自習室で小論文の答案を書いたあと、見直しをしてください。この見直しを校正といいます。
校正では、基本的には、誤字・脱字がないかのチェックが中心となりますが、もっと巧い文章を書きたいという上級者は、校正するときに文末だけを読むことをお勧めします。
常体でも文末の表現に「である」が連続すると、単調で凡庸な印象を受けます。そこで、「である」を「ではないだろうか」などというように、文末を変えるだけで、文章がぐっと引き締まってみえることがあります。
小論文入門編のところで、必ずしも巧い文章を書く必要がないと書きましたが、文学部、とくに慶應義塾大学などの難関校の文学部を小論文受験する場合には、特に文末表現に気をつけて文章の見直しをしてみてください。
(4)今回のまとめ
①小論文は常体=「である調」で書く。
敬体の長所:
1)丁寧な印象を読者に与える。
2)親しみやすく感じられる。
② 敬体の問題点:文末が単調になり、幼稚で退屈な印象を読者に与えてしまう。
常体の長所:
1)文章に重みが出る。
2)さまざま文末表現が可能となり、メリハリの利いた文章が可能となる。
受験生のみなさん、小論文に関すること、何でも質問してください。
コメント欄に書いてね。
それでは、がんばってください。
以上、OK小論文塾長、朝田隆(りゅう)でした!