【基礎編/プロでも迷う】句読点の打ち方

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(1)句読点とピリオド・カンマ


  「、(テン)」を読点、「。(マル)」を句点といい、合わせて句読点といいます。


 この講座は横書きで表記し、入試小論文も主に横書き原稿用紙を念頭に置いて書いています。横書き原稿用紙であれば、本来、句点ではなくピリオド(.)を読点ではなくカンマ(,)を使用することが一般的ですが、この講座では句読点に統一します。


(2)句点「。(マル)」の打ち方


 これは解説するまでもありません。
 文の終わりにつけます。

(3)読点「、(テン)」の打ち方


 読点は文を途中で切るときの記号です。これはさまざまなケースで打ちます。どんな場合に打つのかを以下に解説してゆきます。


① 時間的に切るところに読点を打つ


 これは一種の間です。音楽でいえばブレス、つまり息つぎを表します。

 1文が長いとき、途中で切らずに続けて読むと、苦しくなります。そこで、息つぎのために、少し間を置きます。この間にあたるところで読点「、(テン)」を打ちます。

 自宅で答案を書いたら、一度音読をしてください。読むときに間を置いて切るタイミングがあります。そこに読点を打ちます。


 打つ場所はおおむね一致していますが、人によって間を入れる場所が異なります。これはその人のリズム(呼吸)なので、あきらかに誤ったところに打たない限りは、多少の違いがあっても許容されます。

<例文1>
 それでも、いつまでたっても、ドイツ語の中に相当する単語を見つけられず待合室に取り残されたままの日本語の単語がいくつかあった。しかも、それが、どうでもいいような単語ではなくて、わたしにとっては大切な単語ばかりだった。たとえば、「ふと」とか「思わず」は、ドイツ語でどう言えばいいのか。当時のわたしは、日本語を書く時に、必要以上にこのような単語に頼っていた。 こういう言葉は酸素と同じで、なければ致命的なのに、あればそれがあたりまえなのでありがたさを感じない。だから、ドイツ語に出会って苦労して、いったい、これらの言葉は何を意味するのか、どのように言い替えて(他文化の思考体系に翻訳して)表現すればいいのか、と考えるようになって、かえってよかったと思う。
(出典『「ふと」と「思わず」』多和田葉子、『ちくま評論文の読み方』P41ちくま書房より)

 <例文1>を見てみましょう。


 この文章では、読点を多く打っています。「それでも」「しかも」「たとえば」「だから」など接続詞のあとに読点を打っています。

 接続詞のあとに必ず読点を打たなければならない、というルールはありません。これは筆者の癖のようなものです。


 ほかにも、「それが」『「ふと」とか「思わず」は』「わたしは」など主語の後や「いったい」という副詞の後ろに読点を打っています。


 この文章の筆者はドイツに在住していて、ドイツ語で小説を書いています。おそらく日本語⇔ドイツ語の翻訳を日常的にするなかで、じっくりと単語を区切りながら、読者にわかりやすい日本語を書く習慣がついているなかで、このような句読点の多い文体になったものと推測されます。


 句読点が多い文章と少ない文章とどちらが良いかは一概に言えません。それは筆者や読者の好みや癖が反映されます。


 句読点の多い文章のほうが読者に意味が伝わりやすく、小論文に向いていると私は考えています。

② 意味的に切るところに読点を打つ

 読点のもう一つの役割は、文章の単語と単語を切って、意味をわかりやすくするために打つことにあります。

<例文2>
  社会的なコンテクストから自由な個人とは、裏返していえば、みずからコンテ クストを選択しつつ自己を構成する個人ということである。じぶんがだれであるかをみずから決定もしくは証明しなければならないということである。言論の自由、職業の自由、婚姻の自由というスローガンがそのことを表している。(出典『感覚の幽(くら)い風景』鷲田清一、紀伊国屋書店より)

 <例文2>は、「言論の自由」「職業の自由」「婚姻の自由」という3つの単語を区切るときに読点を用いています(読点を太字にしています)。


③ 主語―述語の関係をはっきりさせるために読点を打つ。

<例文3>
X株式会社がルールに反したAに対して下した処分を不服として裁判が行われた。

 <例文3>の場合、「ルールに反した」のがX株式会社なのかAなのか、2つの意味がとれます。そこで以下のように読点を打ちます。



<例文4>
 X株式会社が、ルールに反したAに対して下した処分を不服として裁判が行われた。

 「X株式会社が」のあとに読点を打つことによって、主語(X株式会社が)と述語(法に反した)の関係が切れます。つまり、読点は、主語―述語の関係にないことをはっきりとさせる効果を持ちます。同時に「法に反した」という語句がAを修飾することが明らかになります。

④ 修飾―被修飾関係を整理するために読点を打つ。

<例文5>
不許可写真を眺めていて、写真につけられた不許可の理由を説明する短い文章を読まないと、なぜ不許可になったのかわからぬものが多い。しかし、不許可の理由を読んで笑い出してしまうような、滑稽(こっけい)きわまりないものもある。(出典『写真の時代』富岡多恵子、筑摩書房より)
<例文5>では、「笑い出してしまうような」「滑稽(こっけい)きわまりない」という2つの句が「もの」という名詞を修飾しています。こうした修飾―被修飾関係をわかりやすくするためにこの文章の筆者は読点を打っています(読点を太字にしています)。


⑤ 引用の格助詞「と」の前に読点を打つ。


<例文1>に戻る。

 「だから、ドイツ語に出会って苦労して、いったい、これらの言葉は何を意味するのか、どのように言い替えて(他文化の思考体系に翻訳して)表現すればいいのか、と考えるようになって、かえってよかったと思う。」

 この1文の「と考えるようになって」の前に打たれた読点は、筆者が考えるようになった範囲「いったい、これらの言葉は何を意味するのか、どのように言い替えて(他文化の思考体系に翻訳して)表現すればいいのか」を明確にするために打たれています。文法的に説明すると、引用の格助詞「と」の前に打つ、ということになりますが、引用の前に必ず読点を打たなければいけないわけではありません。ですが、引用した個所を明確にするためには、読点を打ったほうがいいでしょう。


 再び<例文1>に戻ると、「よかったと思う」の「と」の前には読点を打っていません。


 これは打たなくても「思う」内容が明白なのであえて読点を打つ必要がないわけです。


 このように、読点は杓子定規に打つのではなく、臨機応変に判断して、決めてください。


 例文は挙げませんが、そのほか読点の持つ働きとして「強調」「挿入」などがあり、こうした効果や機能持たせるために打つ場合があります。

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(4)読点を打つ練習問題


 それでは、練習です。次の文章に読点を打ってみましょう。

<課題1>
 日本の劣等感を取り上げるのは時代錯誤で今の人はそのようなことは問題にしていないと言う人がよくいる。フランス語を学ぶのは単に楽しいからパリに行くのは買いたいものがあるからフランス料理を食べるのは単に美味しいから。それだけのことでもう劣等感も怨みもどこにもない何も難しいことなど考える必要はないのだと。
(出典「国境を越える言葉」多和田葉子、『ちくま評論入門』P120筑摩書房より)
ヒント。7カ所に打ちます。

<課題2>
 唐突にとおもわれるかもしれないが近代の都市生活というのは寂しいものだ。「近代化」というかたちでひとびとは社会のさまざまなくびき「封建的」といわわれたくびきから身をもぎはなしてじぶんがだれであるかをじぶんで証明できるあるいは証明しなければならない社会をつくりあげてきた。すくなくとも理念としては身分にも家業にも親族関係にも階級にも性にも民族にも囚われない 「自由な個人」によって構成される社会をめざしてである。
(出典『「つながり」と「ぬくもり」』鷲田清一、『ちくま評論入門』P152~153筑摩書房より)
ヒント。7カ所に打ちます。



<課題3>


① 彼女は、ゆっくりと歩いてくる雄介の姿を見た。


② 彼女はゆっくりと、歩いてくる雄介の姿を見た。



【問題】2つの文の意味の違いを説明しなさい。

(5)読点を打つ練習問題の正解


<課題1・正解>
 日本の劣等感を取り上げるのは時代錯誤で、今の人はそのようなことは問題にしていない、と言う人がよくいる。フランス語を学ぶのは単に楽しいから、パリに行くのは買いたいものがあるから、フランス料理を食べるのは単に美味しいから。それだけのことで、もう劣等感も怨みもどこにもない、何も難しいことなど 考える必要はないのだ、と。
(出典「国境を越える言葉」多和田葉子、『ちくま評論入門』P120筑摩書房より)

<課題2・正解>
 唐突にとおもわれるかもしれないが、近代の都市生活というのは寂しいものだ。「近代化」というかたちで、ひとびとは社会のさまざまなくびき、「封建的」といわわれたくびきから身をもぎはなして、じぶんがだれであるかをじぶんで証明できる、あるいは証明しなければならない社会をつくりあげてきた。すくなくとも理念としては、身分にも家業にも親族関係にも階級にも性にも民族にも囚われない 「自由な個人」によって構成される社会をめざして、である。
(出典『「つながり」と「ぬくもり」』鷲田清一、『ちくま評論入門』P152~153筑摩書房より)

<課題3正解>
① 彼女は、ゆっくりと歩いてくる雄介の姿を見た。
② 彼女はゆっくりと、歩いてくる雄介の姿を見た。
 ① の文章は「ゆっくりと」は「歩いてくる」を修飾し、「ゆっくりと」は雄介の行為であることがわかります。


 ② の文章は「ゆっくりと」は「見た」を修飾し、「ゆっくりと」は彼女の行為であることがわかるのです。



 このように、読点は修飾―被修飾の関係を整理し、主語―述語の関係を明確にするために打つというルールがあります。


 ただし、②の文章はそれでも誤解をまねくおそれがある文章(悪文)なので、以下のように書くことが望ましいでしょう。


③ 彼女は、歩いてくる雄介の姿をゆっくりと見た。


 こうすれば、「ゆっくりと」は彼女の行為であることが揺るがないですね。
 修飾語(ゆっくりと)は被修飾語(見た)のすぐそばに書くことは文章の鉄則です。

(6)今回のまとめ

①句点の付け方:文の終わりにつける。


②読点の打ち方:


1)時間的に切る(間を置く)ところに打つ。

2)意味的に切るところに打つ。

3)主語―述語の関係をはっきりさせるために読点を打つ。
4)修飾―被修飾関係を整理するために打つ。

5)引用の格助詞「と」の前に打つ。

6)その他:強調や挿入など。




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それでは、がんばってください。

以上、OK小論文塾長、朝田隆(りゅう)でした!








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