大学生から始める狩猟記録 #10 お肉を料理に

大学生から始める狩猟記録 #10 お肉を料理に

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 師匠に家の近くまで送ってもらい、肉の入ったゴミ袋を抱えて帰宅した。
 散々動き回ったおかげで、お腹が空いて仕方がない。
 さぁ、早速獲れたて新鮮な鹿肉を食べよう!


 と言いたいのだが、どれから手をつけるか。
 後脚と前脚は、当たり前のように枝肉状態だ。
 もちろん精肉作業はどこかでしなくてはいけないのだが、今から素人がしたのでは、夜ご飯が深夜になる。
 つまり下処理が面倒なものは後々やるとして、夕ご飯は簡単に使えるものにしたい。
 作る料理にしても、時間が時間なので簡単なもので。他の食材も、今から買いに行くのは面倒だし、冷蔵庫にあるものを使いたい。
 けどせっかく初めての鹿肉だ。しっかり味わえるような料理がいい。
 どうしたものか。


 数分考えた結果、選ばれたのはハツ(心臓)とタン(舌)だ。
 身の肉使わないのかよ、と思われるかもしれないが、処理の面倒さが分からないので、一旦明日だ。時間あるし焼肉とかでいいだろう。
 とりあえず脳死でご飯を炊き始めて、まずはハツの下処理だ。
 とは言ってもちゃんとした処理方法なんて知らないし、持ち前の知識で何とかする。
 試しにハツを割ってみると、学校の授業で習ったような心臓の構造になっていた。
 まぁ私達と同じ哺乳類だし、当たり前と言えば当たり前か。
 ただ血の塊が溜まっていたので、軽く洗う。
 それでも若干血の匂いがしたので、もう少し血抜きする。塩水に漬けるとかでいいだろう。
 何せ初心者だ。多少の臭さはご愛嬌ということで。
 その間にお風呂を済ませると、結構血が抜けていた。こんなものでいいのかな。とりあえず一口大に切っておく。
 ただそれでも臭いはしたので、少しでも消すためにニンニクをみじん切り。これでハツの下準備は終わりだ。


 次はタンだ。
 こちらはハツと違って、剥き出しになっていた部位。当然汚れはハツより目立つ。
 よりしっかり洗っている間に、お湯を沸かす。このお湯は薄皮を剥くためのものだ。
 漫画で読んだ知識だが、タンの薄皮はお湯につけると剥きやすくなるとか。
 ちなみに、よくショート動画で流れる牛タンのトリミングは観たことあるだろうか。
 あんな感じの処理も試そうとはしたのだが、小さいが故の扱いにくさと自分の技術の拙さ故に秒で諦めた。
 それこそ動画で見るような牛タンは、まな板とちょうど同じかそれ以上の大きさだろう。
 一方鹿のタンは手のひらサイズほど。さすがに素人には難しすぎる。
 沸いたお湯の中にタンを入れて数分。もちろん熱は通るが、どの道後で完全に火を通すので構わない。
 取り出したら、ナイフの刃でタンの表面を扱くように擦る。しばらくすると薄皮が剥けるので、それを取っ掛かりに剥いていく。
 薄皮が剥けたら、薄めにスライスする。
 タンはタン先とタン元で分かれており、それぞれ向いている料理が違う。
 なので本来なら全て混ぜるのは良くないのだが、そんなこと気にしてる体力は残ってない。
 違いを楽しむのはまた今度。
 タンが切れたら、レタスを一口大に千切って洗っておく。
 これでタンの下準備も完了。


 さて、本調理。
 フライパンに油を敷いて、みじん切りしたニンニクを入れる。火をつけて香り出し。
 程よいタイミングでハツを入れて、両面焼き色がつくまで焼く。
 最後に塩胡椒を気持ち強めに振って完成だ。
 皿に盛って、何となく見栄えが足りない気がしたのでトマトも添える。
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 ハツの塩焼き。まぁハツの料理方法なんてパッと思いつくわけもないので、これくらいが関の山だ。


 続いて、炊けたご飯に塩胡椒、油、溶き卵を入れて混ぜる。
 フライパンに多めの油を敷いて、火力は可能な限り高めで。
 ご飯を投入して、パラパラになるまで炒める。
 鶏がらスープの素と醤油をかけて味付けすると、一旦皿に引き上げる。
 フライパンに再度油を敷き、今度はタンを入れる。全体に火が通ったら、焼肉のタレを入れて絡める。
 炒めたご飯を戻して混ぜたら火を止めて、レタスを入れる。余熱で軽くレタスに火を通すと、皿に盛り胡麻を振りかけて完成。
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 鹿タンの焼肉レタス炒飯だ。
 元々私がアルバイトをしていた居酒屋で、焼肉レタス炒飯というメニューがあり、その鹿バージョンというわけだ。
 焼肉と言えば牛タンが人気、だからタンで作るという単純な考えだ。


 これにて夕食の完成。野菜が少ない気がするが、たまにはこんな日もあるだろう。
 それでは、早速実食だ。
 まずはハツ。ハツらしい心地よい弾力と少し強めの野生味。
 肉本来の食感と味が強いので、シンプルな調理にしたのは正解かもしれない。
 そしてタンの方はというと、食感は牛タンに近くはあるが、もう少しコリコリしてる感じ。
 結構適当に熱が入る結果となったが、硬すぎず臭みもないので食べやすい。
 あと、タン先とタン元で用途が違うのも納得した。タン元はそれこそハツに違い食感で、タン先はもう少し硬いといった感じ。
 とはいえどれも美味しく、初めての鹿肉は充分に楽しめた。
 さぁ、明日はどんな料理を作るか。今から楽しみだ!



 ………の前に、精肉作業をしなくては。
 ハツとタンは食べ切ったので、他のものを。まずは比較的楽そうなものからだ。
 まずは内ロースと半分のレバー。といってもこれらは特にすることはない。
 背ロースはこのままだと長すぎるため、半分くらいに切ることにした。


 さて、問題はここからだ。
 前脚と後ろ脚の精肉。とりあえず前脚からすることにした。
 どちらの脚もモモとスネ、もう少し言うと膝関節で分けるのは絶対だろう。
 ただ肉のついた状態で分けるのは難しそうなので、モモ肉を取ってから外すことにした。
 前脚の場合、どこからかナイフを入れて骨の周りを一周。肉を外して、扱いやすい大きさにする作戦だ。
 肩甲骨は羽子板とも呼ばれるが、完全な平面というわけではない。
 表の方を触ってみると、上から関節まで縦に大きく盛り上がってる箇所があった。
 ちょうどいい。ここからナイフを入れよう。
 盛り上がってる骨の斜面に沿うようにナイフを入れる。
 そこを取っ掛かりに肉を軽く引っ張りながら、骨と肉の境をナイフの先で切り離していく。
 それをぐるっと一周すれば、腕肉が手に入った。
 とりあえず肩甲骨の内側の薄い肉一つと、表の最初にナイフを入れて分けた二つ。合計三つの肉に分ける。
 次に膝の関節から分けて、肩甲骨を外す。これは前脚も後ろ脚も大きくは変わらない。
 膝を曲げてやると、関節の間で伸びる箇所がある。つまりここが骨同士を繋げている筋肉だ。
 そこを適当にナイフで切っていくと、段々と関節が見えてくる。そこから関節を外して、最後は骨を捻って捻じ切れば完了だ。
 スネ肉の方は、細長い一房の筋肉がいくつかあり、骨を覆っているイメージ。だから房ごとに引っ張りながら骨から外して終わりだ。


 さぁ、最後に後ろ脚。これが一番面倒だが、一番肉が取れる部位でもあるため手抜きはできない。
 まずサイズがとんでもない。前脚もそれなりだったが、後ろ脚はそれ以上だ。一人暮らしマンションのキッチンでやることじゃない。
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 しかし肉の外し方は解体の時と同じ。部位ごとに膜で繋がっているため、それを剥がすイメージだ。
 外モモ、内モモ、シンタマ。ネットの画像と睨めっこしながら、ナイフで助けつつ骨から肉を剥がす。
 ここまで来れば、後は前脚と同じだ。
 前脚より太い関節をどうにか外して、スネ肉を一房ごと切り離す。
 これにて完了。後はそれぞれの肉をラップで包んで、ジップロックに入れれば精肉作業は終わりだ。


 せっかくなので骨も残すことにして、全部の肉をほぼ空っぽの冷凍庫に入れていく。
 一人暮らし用でそこまで大きくない冷凍庫は、あっという間に半分以上が埋まってしまった。
 おかげで当分の間、肉には困らなさそうだ。


 長かった一日が終わり、ベッドに身を投げ出す。
 今日だけで色んな実績を解除したような気がする。どれもこれも普通に生きてたら出来ない、狩猟をしたからこそ出来た経験だ。
 とりあえず今日までにかかった費用の元は取れたかな。
 そんなことをぼんやり考えていると、疲れのせいかあっという間に夢の世界に旅立っていた。
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