裏と表の真ん中を突き抜けると、ジェノッキ数がいた(道標5)

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表と裏をつなげれば、S(a,a+c,n) は S(a,a+2j,n) の和で表せるはずです。
今度は、その真ん中を突き抜けて、S(a,a+c,n) を S(a,a+2j,n) で直接表現できるか試してみることにしました。

c が奇数のとき、S(a,a+c,n) を二項定理で展開すると、末尾の項は -S(a+c,a,n) になります。対称性 S(a+c,a,n) = S(a,a+c,n) を使って左辺へ移すと、左辺は 2S(a,a+c,n) です。

【c=1 の場合】
S(a,a+1,n) = (1/2) n S(a,a,n)

【c=3 の場合】
S(a,a+3,n) = (3/2) n S(a,a+2,n) - (1/4) n^3 S(a,a,n)

【c=5 の場合】
S(a,a+5,n) = (5/2) n S(a,a+4,n) - (5/2) n^3 S(a,a+2,n) + (1/2) n^5 S(a,a,n)

c が奇数のとき、S(a,a+c,n) を S(a,a+2j,n) で表現できました。

c が偶数のとき、二項定理で展開すると、末尾の項は +S(a+c,a,n) = +S(a,a+c,n) となり、左辺と打ち消し合って消えてしまいます。
ただし、c が偶数なら S(a,a+c,n) は、そもそも差が偶数なので S(a,a+2j,n) の仲間です。何もしなくてよい、ということになります。

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末端の係数を並べる

一番最後、S(a,a,n) に掛かる係数だけを抜き出してみます。

・c=1 の場合: 1/2
・c=3 の場合: -1/4
・c=5 の場合: 1/2
・c=7 の場合: -17/8

これを末端の係数 A_c と呼ぶことにします。
分母は c+1 です。c+1 を掛けてみます。

1, -1, 3, -17

この並びをネットで調べたら、絶対値は 1, 1, 3, 17。ジェノッキ数でした。

G_2 = -1, G_4 = 1, G_6 = -3, G_8 = 17, …

A_c = -G_(c+1) / (c+1)

ジェノッキ数は G_k = 2(1-2^k) B_k で、ベルヌーイ数 B_k の親戚です。

ベルヌーイと聞くと流体力学の人のイメージでしたが、歴史上の有名なベルヌーイさんは数名いらっしゃる様子で、なかでもベルヌーイ数は数学界で特に有名な様です。

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流路で数える

c=7 の末端の係数 -17/8 は、折り返しのたびに現れる係数を「経路」として足し合わせたものです。次数を 7→5→3→1→0 のように落としていく経路を、すべて数え上げます。

・1段で 7→0: -1/2
・2段(落差が偶数、最後が奇数): +63/4
・3段: -105/2
・4段(落差が 2,2,2,1 の1通りだけ): +315/8

これを足して符号を付けると、

-( -1/2 + 63/4 - 105/2 + 315/8 ) = -17/8

先ほどの A_7 = -17/8 と一致しました。

各段で落ちる差を d_1, d_2, …, d_r とすると、途中の差は偶数、最後の差だけ奇数になります。そして1つの経路の重みは 7! / (d_1! × d_2! × … × d_r!) という多項係数でした。

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経路の和が tanh になる

階乗の逆数の和は、指数関数の展開係数に変えられます。

・偶数の落差 → cosh t - 1
・最後の奇数の落差 → sinh t

経路が r 段のとき、重み (-1/2)^r を付けて全部足すと、等比級数になります。

-Σ[r=1..∞] (-1/2)^r (cosh t - 1)^(r-1) sinh t = sinh t / (cosh t + 1) = tanh(t/2)

最後は半角の公式 sinh t = 2 sinh(t/2) cosh(t/2)、cosh t + 1 = 2 cosh^2(t/2) で約分されます。

tanh(t/2) のマクローリン展開の係数がジェノッキ数なので、t^c / c! の係数を取り出すと A_c = -G_(c+1) / (c+1) になる、というのが種明かしです。

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途中の係数も同じ数で決まる

末端の係数だけではありません。次数 N から M へ落ちるときの係数を K(N,M) とすると、落差 N-M だけで決まる A_(N-M) を使って、

K(N,M) = (NCM) × A_(N-M) = -(NCM) × G_(N-M+1) / (N-M+1)

と書けます。(NCM は二項係数、コンビネーションです。)
たとえば c=7 の S(a,a+2,n) の係数は、落差が 5 なので G_6 = -3 を使って、

K(7,2) = -(7C2) × (-3)/6 = -21 × (-1/2) = 21/2

流路を全部足しても、21/2 - 315/4 + 315/4 = 21/2 で一致します。

要するに、ジェノッキ数さえ分かっていれば、係数は二項係数との積ひとつで出ます。順に代入して消していく作業は、いらなくなりました。

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裏と表の真ん中を突き抜けた先に、ジェノッキ数がいました。

ジェノッキ数はベルヌーイ数の親戚と知り、ベルヌーイは聞き覚えの人物名に少し嬉しくなったのでした。

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