【考察編】「俺は凄い」を30,000回言ってみて、感じたこと

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コラム
※2026年2月5日に書いた記録です。

前回の記事では、仕事や家事で心がパンパンになっていた私が、ふと思い立って行った「ある実験」について書きました。

それは、仕事中や犬の散歩中の1時間半、誰にも聞こえない声でひたすら「俺はすごい」と1万回唱え続けるという、ちょっとへんな実験です。

「猫背でつぶやいても響かないのに、胸を張ると言葉がカチッとはまる」

「面倒な作業が、なぜか軽やかな通過点に変わる」

そんな体感がありました。今回は、「それで、結局なんでそんなことが起きたの?」という疑問に、私なりの答えをAIを例えに話してみたいと思います。

結論から言うと、これは「自分専用の脳内AIへの命令の仕方を変える」ということだったんです。

私たちの頭には「超優秀なAI」が住んでいる

皆さんもAIを使ったことはありますか?ChatGPTやGeminiなどなどです。AIに指示を出すと瞬時にいろんな答えをくれて便利ですよね。

あの指示文のことを「プロンプト」って言うんですが、実は私たちは、知らず知らずのうちに、自分の脳へプロンプトを送り続けているんです。

この脳内のAI、めちゃくちゃ有能です。あなたが投げかけた「問い」に対して、自分の過去の記憶や経験の中から、全力でその証拠をかき集めてきます。

この「人生で一番多く自分に投げかけている問い」のことを、心理学ではプライマリークエスチョン(中心的な問い)と言ったりします。

問題なのは、私たちが無意識のうちに、このAIへ「最悪な問い(プロンプト)」を出していることです。

あなたの脳内AIは、ただ「仕事」をしているだけ

真面目に生きてきた私たちは、ついついこんな問いを自分に投げがちです。

具体的には、こんな感じ。

問:「なんで俺っていつも肝心なところでミスるんだろう?」

AI:「分かりました。あなたの過去の記憶や体験から、その理由を調べます」

そうすると、忠実な脳内AIは「承知いたしました。あなたが自信を持てない理由を、過去30年の記憶から100個リストアップしました!」と、余計な証拠を次々と目の前に並べ始めます。

もちろん実際のAIみたいに、画面に文字で出力するわけではありません。あなたの心の中に、あたかも「自分の意見」として出してくるんです。

ここがやっかいなところで、脳は「質問されたから答えを返しただけ」なのに、私たちはその返答を「自分の本心(本当の気持ち)」のように感じてしまうんです。

「質問なんかしてない」と思うかもしれません。でも普段私たちは生活のなかで、無言でいても頭のなかでは常に自分の声で、独り言のようにつぶやいていませんか?
「もう朝か、起きなきゃ」「今日は晴れかな」「朝ごはんパンにしようかな、ご飯が良いかな」「コーヒー切らしてた。帰りに買ってこなくちゃ」「部屋の電気消したっけ?」「ランチはなに食べよう」「今日の会議の資料、大丈夫かな」「残業疲れたな」「夜はビールとYouTubeでリフレッシュだ」「もうこんな時間、寝よう」⋯。

こんな感じで一日中、頭の中は声が響いています。
アメリカの研究によると、人は1日に約10000〜60000回の思考をしているそうです。そのうち80%はネガティブな内容なんだとか。

検索結果を突きつけられたあなたは、こう思ってしまいます。

「ああ、やっぱりな。俺は昔からこういう人間なんだ。次もまた失敗するに違いない……」

でも、ちょっと待ってください。

それはあなたの正体ではなく、AIが「そういう命令」を受けたから、ただ忠実に仕事をしただけなんです。

1万回で、プロンプトを「強制上書き」する

今回の私の実験は、頭の中をこの言葉でいっぱいにすることでした。

「俺はすごい俺はすごい俺はすごい……」

1分間に100回、1時間半で約10,000回。8割はネガティブだと言われている一日の思考回数を、たった1時間半でポジティブな言葉で埋め尽くします。

そうすると、さすがのAIも「そんなに言うなら、『俺がすごい証拠』を検索し直します」と、処理を切り替えるしかなくなります。

すると不思議なことに、「あ、あの時もなんとか乗り越えたな」「不器用なりに、よくやってるよな」という、自分の「すごさ」の欠片が、ぼんやりとうかんできたのです。

これが、私が感じた「自分を思い出す作業」です。

姿勢が「カチッ」とハマる、本当の理由

面白いのは、この脳内AIは「言葉」だけでなく、「体のセンサー」もチェックしていることです。

猫背で「俺はすごい」と言っても、AIは「エラー:格好と入力データが一致していません」と警告を出してきます。これが違和感の正体。

でも、グッと胸を張った瞬間に「認証成功。その姿勢こそが『俺はすごい』の正しい出力です!」と、パズルのピースがハマるような「しっくり感」を返してくれる。

言葉と、体と、脳内の検索結果が一本の線でつながる。

この瞬間、私たちは「自分という乗り物」を、自分の意志で動かしているような感覚を実感できるんです。

今日、あなたのAIに何を打ち込みますか?

「俺はすごい」なんて、最初は恥ずかしくて、嘘っぽく感じるかもしれません。

でも、1万回も言えば、あなたの脳内AIもあきらめて「すごさ」を探し始めます。

大きな変化なんていりません。

「自分を責めるプロンプト」で脳を酷使するのを、ちょっとだけ休んでみませんか。

今日、鏡の前を通った時。あるいは、ふとした瞬間に。

一言だけ、あなたの脳に新しいプロンプトを送ってみてください。

「今日、私がちょっとだけ『いい感じ』だった瞬間はどこだ?」

その問いの答えを、あなたの有能な脳は、必ず見つけてきてくれるはずですから。
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