「と言うことでそう言う方針になったから、」
上司がみんなに向かってそう言っているつもりが、あたかも優弥と2人で話していたかと錯覚を起こす位には目があったまま
徐にミーティングを終わりにしようとした。
この時、優弥はなんとなーくその班の、その会社の中心メンバーであった自覚はあって
それはそれは「OOOと言ったら優弥」みたいな風潮が出来上がる少し前だった記憶がある。
思ったことをすぐ口にするし、「なんやそれ」と思っても「会社に属している訳だから」と
取り敢えず行動しては出ない結果に「ほれ見た事か」と見せ付けては「こうしたい」と我儘放題、姫放題の様な存在だった。
話は戻って、このミーティングでの心境としては、取り敢えず自分の居た場所がその上司の真前だったのもあってか
その上司もなんとか優弥に納得して貰いたいであろうと、なんとなく感じていた。
周りのメンバーの顔も、やっぱり、どこか納得してなくて「ほら!今、文句を言えるのはお前だけだ」と背中で訴えている気がしたのも覚えている。
ただ、前記したように「会社に属しているのだから」に「だからこそ、方針から大きく外れてはいけない」が続く、所謂、堅物でもある。
改めて脳内で
「OOOがあったから、私たちは△△△って云う状態・評価になっていて、それを今後XXXにしなければいけない」
内容は伏せているので想像はし難いと思うが、その時の優弥は取り敢えずはしょうがないっちゃしょうがないと腑には落ちていた。
それでも感情をそっちのけに出来ないほどには苛立っていた。でも何回も言う様に姫で、我儘である優弥と言えども、
そのポジションを確立すると言うことは、それなりに評価を受けていなければ立てていないし
何より、仕事を評価されて…いや、この場合は性格的な考慮も断然あった。とは言えども、それなりに仕事に全うして居たので貰えている評価であることは明確で、だからこそ、それを飲み込まざるを得ない立場にいるのも重々分かっていた。
ただ、一つ引っ掛かったのが「と言うことでそう言う方針になったから、」に続いた「我慢しよう」な一言だった。
「お前が言うんかい!」
心の中で盛大にツッコんだ。これが漫才だったとしたら、ここ1番の場面で確りとその場を締められる程の
それはそれは歴代Mー1優勝者のツッコミよりも軽やかに、かつ、的確に、間も良かったと自負している。
上司も班のトップなので、全体的な組織で考えたら、みんなで我慢すると言う事からは、大きく外れてはいない。
ただ、その話にしかならない程度にしか協議していない事は明確であったし、そもそもは、そうしたのはお前だろう。
創立してから最大の不祥事ではあったとは後で聞いていたが、それにしても
「OOOがあったから、私たちは△△△って云う状態・評価になっていて、それを今後XXXにしなければいけない」
だから「と言うことでそう言う方針になったから、我慢しよう」は納得いかない。
この時「なったから」の後に「悔しい気持ちは分かるけど、もう一回リスタートしよう!」だったら、
もうちょっと印象が違かっただろうし、気持ちも落ち着けた。
みんなが悔しかったし、悲しかった出来事だ。
不祥事をしたメンバーを切り離したい訳では無いが、真面目に仕事しているメンバーにとっては正直、なんの関係も無いし
最早、裏切りに近いものもある。でも思い出もたくさんある。それは決して蔑ろに出来るものでは無い。
ただ、不祥事メンバーにはこれからは無いが、優弥達にこれからがある。
それをただでさえ後ろめたい気持ちになっている優弥達に「我慢する」と言う持続的な苦しみを与えるのは、甚だ疑問だった。
それに殆ど絡みの無い新人達だっている。
この場合、大事にしなければならないのは「過去」では無く「未来」だと思うのが当たり前だと思っていたし、
すぐ公演を控えていた優弥にとっては、その来てくれる観客の事以外を考える猶予も余地も無いと思っていた。
何故なら、評価を戻さなくてはならない。班のメンバーが、これ以上苦しい、辛い思いをするのを見たくない。
だが、この上司の「我慢しよう」に全否定って事でも無い。
おそらく、これから来るバッシングや冷たい目に耐え忍ぶしか他無いと考えて出た言葉だった気がするのは否めないからだ。
その上司はまぁ、パッショナブルに勢いと熱量で戦うタイプなのは近くで見ていて手に取る様に分かっていた。
実際、嫌いな上司では無かった。いつか書くかもしれないが、他の件で納得出来なくて、この上司と深夜の2時まで大喧嘩をした事がある。
それくらいにはトムとジェOーである。
因みにパッショナブルファイターは「次の事を考える」を備えていない人なので悪意があったとは到底思えないし
やっぱり同じ班には居るので同じ様に傷付いたのも分かる。
そう云う経緯の中で冒頭の流れから、優弥に賛同を求める上司に言い放ったのが
「理解は出来るけど、納得出来ない」
だった。本当にそのままの意味である。そして言い放った後、すぐ上司やメンバーを尻目に喫煙所に行った。
ほぼ言い逃げである。それからの上司の態度はと言うと、焦りながらも場を丸め込もうとしていた記憶がある。
正直、みんなの気持ちを代弁出来たかは分からないけど、この時、これが自分の中でしっくり来た。
それと同時に優弥自身がこう言う思いをして来た経験は多分、人生でこの時だけじゃ無いし、今も尚、まだある。
ただ、そう言うものに対して、言葉にしたのはこの時が初めてだったと気付いた。
そこから数年経って、今回から書いていく内容を決める時、そう言った今までの自分の経験を文章で同じ様な思いをする人たちに届けいたり
「そうそう!分かるー!」とか「あー。こう言う風に考えてるんだぁ」くらいの気持ちで共感したりして欲しいなぁと思って、この連載を始めた。
因みにこの話の続きはと云うと、後を追って来た後輩がものの数分前の出来事(「理解は出来るが納得出来ない」)をネタに笑かしに来て、
場が少し明るくなり、そいつの機転の良さに、優弥がお笑い芸人を語るにはまだ及ばなかったなぁ。と思った。くそぅ。