【文献紹介#11】コロナ禍でビデオ（オンライン）診療は増えるか？

こんにちはJunonです。 

本日公開された研究論文（英語）の中から興味のあったものを一つ紹介します。

出典

タイトル：Spread, Scale-up, and Sustainability of Video Consulting in Health Care: Systematic Review and Synthesis Guided by the NASSS Framework

著者： Hannah M James, Chrysanthi Papoutsi, Joseph Wherton, Trisha Greenhalgh, Sara E Shaw

雑誌：J Med Internet Res.

論文公開日：2021年1月26日

どんな内容の論文か？

「コロナ禍では世界中の医療従事者が遠隔でケア（診療）することが求められるのでビデオコンサルティングが脚光を浴びている。本研究では6 つの地域における10 種類のビデオコンサルテーションサービスの有用性を評価したが、普及・拡大をサポートするエビデンスは、まだまだ不足していたので、今後のブレークスルーが必要である。」

背景と結論

ヘルスケアにおける患者と医療従事者との診療ツールとしてソーシャルメディ

アを用いたビデオコンサルテーションサービスは世界中から関心が寄せられています。この効果には、移動時間とコストの削減、コミュニケーションの改善、待ち時間の短縮、患者のアクセス性の向上などの効果が挙げられます。政府や医療行政もケアを改善するための手段として重要視しています。COVID-19のパンデミックにより、ビデオコンサルテーションの急速かつ広範囲な活用が促されています。

近年では、糖尿病、リハビリテーション、精神衛生と依存症、がん、緩和ケア、長期ケア、老年医学、出産後のサポート、プライマリーケアなどの臨床分野でビデオコンサルテーションの可能性、安全性、および有効性を示す文献が急速に増えています。しかし、現在のところ、ビデオコンサルテーションをどのようにして普及させ、持続的に使用するかについては、ほとんど知られていません。

この新しいサービスモデルの長期的な持続可能性を理解することは、COVID-19のパンデミックが進行している状況下では非常に重要であり、対面での診療に代わるものが迅速に必要とされているため、ビデオコンサルテーションの普及と拡大が求められています。

本研究では6 つの地域における10 種類のビデオコンサルテーションサービスの有用性を評価したが、普及・拡大のためには以下の課題が含まれていることを報告しています。

1：条件

健康状態や併存疾患の臨床的および社会的側面の複雑性により、同じ状態にあるすべての人が同じようにオンラインケアの恩恵を受けられるわけではありません。それゆえに、ビデオコンサルテーションの拡大、普及、持続可能性に影響を与えています。

2：技術

ビデオコンサルティングに対応できるようにインフラを整備する必要があります。異なる地域間のインフラの違いが遠隔医療の普及を妨げ、国家的なeHealth戦略の課題となり得ます。よって、ビデオコンサルテーションのための技術は、普及と拡大だけではなく、遠隔ケアモデルの確立にも課題を投げかけます。

3：価値

臨床医、患者、サプライヤーにとって、その技術が開発または導入する価値があるかどうかを考慮する必要があります。全てにおいて有益性が無いと、普及と拡大の妨げになります。

4：システム

ビデオコンサルティングプログラムの持続可能な運営をサポートするための適切なトレーニングや技術的なリテラシー、継続的なサポートが不足していると、医療提供者はシステムの導入に踏み切れなかったり、消極的なものになったりします。

5：組織

イノベーションを起こすための組織の能力、変化への対応力、資金調達の決定の性質、日常業務の変化の程度、新技術に関連した組織の変化を実施するために必要な作業を考慮する必要があります。

6：制度

診療報酬の不在や曖昧さもまた、ビデオコンサルテーションの普及に影響を与えました。

7：適応

ビデオコンサルティングを一般診療に導入し、異なる医療システムに合わせて変更可能な柔軟なものにするためには、現場がリアルタイムで課題に対応できるようにしなければならない。

最後に

コロナ禍ではビデオ診療が果たす役割が増してきましたが、まだまだ障壁が多くあります。これらを打開し、世界的な取り組みとして普及・拡大していくためには、これらの技術に対する有益性の認識を高めることと熱心な政策的な推進が必要だと思います。

おしまいです。

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