中小企業経営のための情報発信ブログ93:停滞する日本企業変革の処方箋

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ビジネス・マーケティング
今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は「停滞する日本企業変革の処方箋」と題して、コロナ禍で低迷する日本企業、特に中小企業がどうすれば、生き残り成長することができるかについて考えてみたいと思います。
バブルがはじけた後の平成の30年間、精彩を欠いた日本企業は、企業変革をしないまま進化を止めてしまったか、欧米流の企業変革モデルに飛びついて失敗したかのどちらかのケースが大半を占めています。
さらに、新型コロナ禍で、企業が生き残るためには、これまで以上に企業変革が必要なことは間違いありません。
ではどこを向いて走り出せばいいのか、多くに企業が岐路に立ち先が見えないまま模索を続けているというのが現状ではないでしょうか。
停滞する企業への変革の処方箋として4つの経営モデルを紹介します。
1.シュリンク・トゥ・グロー(Shrink to Grow)
 これは、いったん無駄を削減して体制を立て直してから成長するというもので、コロナ禍では避けて通れない生き残り戦略のようにも見えます。しかし、これには、①V字回復して元に戻れると安心して一過性になってしまう ➁その後の成長が難しくなる という副作用があるとされています。
 事業を小さくするのは比較的簡単ですが、成長に必要な資産まで捨ててしまい、結果的に「シュリンク・トゥ・ナッシング」になってしまうことも多く、注意が必要です。
 この経営モデルでは、立て直した後の成長に必要な資産は何かを見極め、それは捨てずに残しながら無駄を削減していくことが将来の成長へと結びつくように思います。
2.セルフ・ディスラプション(Self Disruption)
 これは企業が今までの伝統を覆すような大きな変化を行うことです。自己否定と創造的破壊ともいわれますが、自分のいいところをすべて捨てて、ゼロベースで始めるビジネスに勝算はありません。
 成功するためには全く新しい飛び地に行くのではなく「ずらす」ということが必要になります。自分の資産を新しい市場にずらすのか、今の市場に向けて新しい資産を活用するのか、この点を十分に理解しないまま創造的破壊に飛びつけば悲惨なことにもなってしまいます。
3.ポートフォリオ・オブ・イニシアティブ(Portfolio of Initiative)
 これは、時間を横軸に、リスクを縦軸にとってポートフォリオの奥行きを広げる戦略で、デジタル産業のように変化が常態化している産業や次世代成長を加速したい企業に向いています。
 ポートフォリオというのは、もとは金融用語で鞄に入れる有価証券の目録を意味していましたが、経営用語としては複数の事業や製品を展開する企業が全社的な観点から経営資源の配分が最も効率的かつ効果的となるような事業や製品の組み合わせを意味します。
 ポートフォリオ・オブ・イニシアティブでは、誰かと組んで実験を繰り返したり、異質なところや新しいところに触手を伸ばし、ポートフォリオの新陳代謝を強くするものです。
4.「メビウス運動」モデル
 これは、「自己組織化」モデルで、自分を信じればできる日本流の自発的に変化できるモデルです。
 ⑴顧客現場で変化する市場の現場をしっかり押さえ ⑵組織DNAで、自分たちの最も強い資産をどう生かせるかを考え ⑶客の想いと自分の強みを重ね、自分が提供できる新しい価値を発見再定義し、⑷規模を大きくできるビジネスモデルを作り込み、⑸事業モデルを作り現場に持っていき、顧客の反応を見て⑴の顧客現場につなげるのです。
以上の4つの経営モデルのうち、最初の3つは欧米型のモデルで、日本企業がやるには経営基盤が余程しっかりしていなければお勧めできませんし、日本企業には適していないと言っていいと思います。
日本企業に最も適したのは4つ目の「メビウス運動」モデルではないかと思います。
「現場重視」は日本企業の得意とするところですが、ここでいう現場は「事業現場」ではなく「顧客現場」です。「顧客第一主義」は口が酸っぱくなるほど言われていることですが、「顧客第一主義」と言っても口先だけで本当の意味で顧客のことを一番に考えているということは少ないのです。どうしても企業経営ですから会社利益が優先されてしまいます。
自分の資産をうまく他人のものとつなげ、それを顧客に下ろしていくかです。自分たちにとって重要な資産は有形資産だけではなくブランド・知識・人材・ネットワークといった無形資産も含まれます。そうした強みを暗黙知ではなく明確にして形式知化した形で磨いていくという仕組みが必要です。まさにトヨタ生産方式やセブンイレブンのフランチャイズモデル、星野リゾートの「おもてなし」モデルがこの仕組みに当ります。
コロナ禍という未曾有の危機であっても、自己修正力があれば生き残れるだけならできます。しかし、単に生き残ることと高い志で世の中を変えることとは違います。「何のために変革するのか」がすごく大事なのです。単に「生き残るだけの変革でいいのか」ということです。経営には、生き残るだけではなく継続して成長するという視点がなければいけません。
「経営」というのは「継栄」(継続して栄えていく)ことです。
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