今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は、太田肇・同志社大学政策学部教授の著書「同調圧力の正体」(PHP新書)をベースに、「社内の同調圧力に対する対処法」について書きます。
コロナ禍になって「同調圧力」という言葉がメディアで使われる頻度が増えています。そこでは「同調圧力」という言葉がネガティブな意味合いで使われるのが一般的ですが、三省堂大辞林では「集団での意思決定の際に多数派の意見に同調させるように作用する暗黙の圧力」と書かれています。「同調圧力」とは、自分の考えや意見と異なる判断基準を他者から押し付けられ、その押し付けられた判断基準に基づいて行動してしまう時に感じるものです。それは、押し付けた側が多数派であり、その多数派の判断基準に従わないと何らかの不利益を被るかもしれないと感じてしまうことから生まれるものです。このように「同調圧力」という言葉は、少数派の視点に立った言葉で、多数派からすれば、少数派は集団全体のことを考えない「自分勝手」「自己中心的」な理不尽な存在と映るのです。
昨日書いた「ムラ社会」にも「同調圧力」は影響しています。
集団の構成員全員が同じ意見や考えを持っていれば「同調圧力」は存在しません。1000人の中の1人が多数派に反対する意見や考えを述べても「変わり者」と相手にされず「同調圧力」が問題になることはありません。それが10人、100人、200人と増えるにつれて、反対意見を無視することができなくなり、少数派の意見も取り上げられるようになるのです。そうなると少数派としても自己主張をさらに強め、多数派を「同調圧力」と批判するようになります。このところ「同調圧力」という言葉が頻繁に使われるようになったのは、マスコミやSNSの影響からそれだけ少数意見が取り上げられ、力を持ってきたからではないかと思います。
1.日本で同調圧力が発生する3つの要因
太田教授は、日本の同調圧力の発生について3つの要因があると言っています。
Ⅰ:閉鎖性・・・日本は島国であり他国に比べ移民も少ない。企業では終身雇用、年功序列、企業別組合があり、転職による移動もしにくく、閉鎖性が強い。
Ⅱ:同質性・・・日本は他国に比べ異民族の割合が低く、宗教や価値観、文化に大きな違いがなく、同質性が高い。
Ⅲ:個人の未分化・・・日本では、個人ごとに仕事が割り当てられるのではなく、チームや課で行うことが多い。学校でも地域社会(町内会等)でも共同作業が重視され、組織だけでなく社会全体で、個人よりも全体を重視するきらいが強い。
2.SNSの普及で同調圧力が過激化
日本では、共同体の一員と自覚し、帰属することで精神的な安定を得ようとする「共同体意識」と絆や結束を謳い一致団結を最優先する「共同体主義」がありました。このような共同体主義が戦後日本の復興には大いに役立ってきたことは否定できません。
しかし、IT化やグローバル化に伴い大きく変わった社会の中で、従来の閉鎖的・同質的な日本の社会構造や企業の体制では上手く回らなくなってきました。
太田教授は、「同調圧力を表面化させ、さらに過激にしているのはSNSだ」と指摘します。かつての同調圧力はタテ方向から与えられていたのに、現在ではSNSに代表されるヨコ方向の圧力が強くなったというのです。かつては政府などの体制側からの圧力、無際限な貢献を求める企業のルール(既存組織からの圧力)、上司からのパワハラといった上から同調圧力(タテ方向の圧力)ですが、今ではSNSなどの姿も見えず名前もわからない人からの水平方向からの圧力(ヨコ方向の圧力)が強力になってきているのです。
タテ方向の同調圧力には「権力」や「序列」が前提としてあるのですが、ヨコ方向の同調圧力には「正義」が前提としてあります。しかも厄介なのが、「正しい正義」だけではなく、本人が正義と信じる「間違った正義」も多いのです。SNSの無数の声によって、仮に間違っていたとしても「正義」のお墨付きが与えられると、それに異を唱える者は容赦なく糾弾されてしまいます。姿も見えず名前もわからない人たちからのヨコ方向からの圧力に抵抗することは容易ではありません。
仮に「正義」が正しいものであったとしても、異なる意見を言える余地と尊重できる土壌が必要で、それが社会の健全化につながります。SNSももともとは自由に自分の意見や考えが言える場であったはずです。それが、どんな小さなミスや間違いでも他者を徹底的に糾弾し、追放し、時には自殺にまで追い詰めるという場になったのは絶対に許されることではありません。
3.フリーランスの増加で同調圧力社会は変わるか
SNSの普及やコロナの自粛によって同調圧力は強まるばかりですが、個人がそれに対抗するにはどうすればいいのでしょうか。
太田教授は「閉鎖性・同質性・個人の未分化と逆の行動をとればいい」と言います。会社で言えば、「閉鎖性を破り、他部署とネットワークを築く。特定のグループや派閥に近づきすぎずなど距離外交を図る。『自分のタスクさえこなせばムダな残業はしない』と公言する」などです。今の「ムラ社会」ともいえる日本の企業でなかなか難しいことです。
また、太田教授は、「現状を改善するには仕組みを変え、組織から変革していくしかない」と言います。これについては異論はありません。全くその通りです。企業は時代や社会の変化に伴い、成長を続けるために組織の変革は欠かせません。コロナ禍により社会や環境が著しく変化している今、その変化に合わせて変革を行った企業が成長し続けることができるのです。
企業が、自ら組織の変革を行い、ムラ社会を打破することによって「同調圧力」を減らせることができます。
太田教授は、「組織にフリーランスを多く入れたり、中途採用の割合を高めたり異質な人を増やす。フリーランスがもっと増えれば、自然に同調圧力が強い組織には自然と人が集まらなくなりオープンな社会に近づく」と言います。
しかし、雇用の流動化だけでは、同調圧力を抑制することは困難ではないかと思います。ヨコからの同調圧力は、単にSNSだけに限らず、職場における「同僚からのいじめ」としても顕在化しています。雇用の流動化としてフリーランスや中途採用者を増やしても、それだけで同調圧力社会が変わるとは思えません。結局は、どのような人を増やすのか、人材をどのように育成していくのかといった「人の問題」につきるように思います。それは、より良い人間関係や信頼関係を築くこと、そのために心を通わせる対話やコミュニケーションが大切だということに行きつきます。