「うちの親は、生命保険にも医療保険にも入っているから大丈夫」
親の介護や入院を考えた時、このように思っている方は少なくありません。
確かに、保険に加入していることは大切です。
しかし、本当に確認しなければならないのは、保険に入っているかどうかだけではありません。
どんな時に給付を受けられるのか?
誰が請求するのか?
親が自分で請求できない時はどうするのか?
保険証券や契約情報はどこにあるのか?
保険料は今もきちんと支払われているのか?
ここまで分かって、初めて「使える保険」になります。
保険は加入しているだけで、自動的にお金が振り込まれるものではありません。
支払条件を満たし、必要な書類をそろえ、保険会社へ請求して、初めて給付につながります。
だから私は、親の保険については、「入っているから安心」ではなく「必要な時に家族が使える状態か?」まで確認することが大切だと思っています。
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保険は、請求しなければ受け取れない
まず知っておきたいのは、入院や介護が始まっても、保険会社が自動的に給付金を振り込んでくれるわけではないということです。
親が入院した。
手術を受けた。
要介護状態になった。
認知症と診断された。
こうした出来事が起きても、家族が保険の存在を知らなければ、請求にはつながりません。
また、保険に入っていることを知っていても、
「どこの保険会社か分からない」
「証券が見つからない」
「何が保障されるのか分からない」
という状態では、家族は確認から始めなければなりません。
介護や入院の初期は、それだけでも家族に大きな負担がかかります。
病院とのやり取り、退院後の準備、介護保険の申請、仕事の調整。
その中で、家の中から保険証券を探し、契約内容を一から調べるのは簡単ではありません。
保険は持っているだけでは使えません。
家族が存在を知り、請求までたどり着けることが必要です。
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「何に入っているか」より「どのような時に出るか」
親に「保険に入っている?」
と聞くと、多くの場合は
「入っているから大丈夫」
という答えが返ってきます。
しかし、それだけでは十分ではありません。
本当に確認したいのは、次のような内容です。
病気やけがで入院した時に出るのか?
手術を受けた時に出るのか?
がんなど特定の病気が対象なのか?
認知症が対象になるのか?
要介護状態になった時に、一時金なのか年金なのか?
死亡した時に誰が受け取るのか?
同じ「医療保険」「介護保険」という名前でも、契約時期や商品によって内容は異なります。
たとえば、入院しただけで必ず給付されるとは限りません。
手術の種類や入院日数、治療内容などが支払条件に関係することがあります。
大切なのは、商品名を覚えることではなく、「どのような状態になった時に、どのくらい受け取れるのか?」を確認することです。
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公的な要介護認定と、民間保険の支払条件は同じとは限らない
特に注意したいのが、民間の介護保険です。
家族は、「市区町村から要介護認定を受けたのだから、民間の介護保険も当然もらえるだろう」と思うかもしれません。
しかし、公的介護保険の要介護認定と、民間の生命保険会社が定める介護給付金の支払条件は、必ずしも同じではありません。
たとえば、契約によっては、
公的介護保険で所定の要介護度に認定されること
保険会社が定める要介護状態が一定期間続くこと
所定の認知症状態に該当すること
などが条件になっている場合があります。
つまり、要介護認定を受けたからといって、すべての民間保険から自動的に給付されるわけではありません。
反対に、公的介護保険とは別の基準で、給付対象になる可能性もあります。
だからこそ、親が介護保険に入っている場合は、
「要介護いくつなら出るのか?」
「何日間その状態が続く必要があるのか?」
「認知症は対象になるのか?」
を契約内容や保険会社への問い合わせで確認する必要があります。
【注1】
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親が自分で請求できない時、誰が手続きするのか?
保険金や給付金の受取人が親本人になっている契約もあります。
親が元気であれば、自分で保険会社へ連絡して請求できます。
しかし、認知症や重い病気などで、本人が請求手続きをできなくなることがあります。
この時に役立つ可能性があるのが、「指定代理請求制度」です。
指定代理請求人が登録されていれば、本人が自分で請求できない特別な事情がある場合に、あらかじめ指定された家族などが代わって給付金等を請求できることがあります。
ただし、指定代理請求人が登録されていなかったり、登録されている人がすでに亡くなっていたり、離婚などで関係が変わっていたりする場合があります。
何十年も前に加入した保険では、指定代理請求人が古い情報のままということも考えられます。
大切なのは、制度があることを知るだけではありません。
誰が登録されているのか?
今もその人でよいのか?
どの給付金が代理請求の対象なのか?
ここまで確認しておくことです。
【注2】
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家族登録制度と代理請求制度は同じではない
保険会社によっては、家族の連絡先をあらかじめ登録する「家族登録制度」や、それに類するサービスを設けている場合があります。
家族を登録しておくと、保険会社が契約者本人と連絡を取れない時に、登録家族へ連絡したり、一定の範囲で契約情報を確認できたりすることがあります。
ただし、家族登録制度を利用しているからといって、その家族がすべての保険金を代理請求できるとは限りません。
家族登録制度は、主に連絡先や情報共有のための制度です。
指定代理請求制度は、本人が請求できない時の給付金請求に備える制度です。
契約者代理制度は、契約者が意思表示できない場合に、一定の契約手続きを代理する制度です。
名前が似ていて分かりにくいのですが、それぞれ役割が違います。
そのため、「家族の名前を登録してあるから、全部任せられる」
と思い込まないことが大切です。
家族が何を確認できるのか?
何を請求できるのか?
住所変更や解約など、どの手続きまでできるのか?
制度ごとの範囲を確認しておきましょう。
【注2】
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保険料が払われていなければ、保障が止まることもある
保険内容だけでなく、契約が今も有効かどうかも重要です。
高齢になると、親が保険料の支払いを忘れたり、引き落とし口座の残高が不足したりすることがあります。
金融機関を変更した。
口座を整理した。
年金の受取口座を変えた。
保険会社からの郵便物を見落とした。
こうしたことが重なると、保険料を支払っているつもりでも、実際には引き落とされていない可能性があります。
保険料の払込みが一定期間行われず、猶予期間を過ぎると、保険契約が失効し、保障を受けられなくなることがあります。
長年保険料を払ってきたのに、必要になった時には契約が失効していた。
これは家族にとって、とても大きなショックです。
保険証券を見るだけでなく、
直近の保険料が支払われているか?
引き落とし口座はどこか?
保険会社から失効や未払いの案内が来ていないか?
も確認する必要があります。
【注3】
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保険証券が見つからなくても、すぐ諦めない
親がどの保険会社に加入しているか分からないこともあります。
まずは、次のようなものを探してみましょう。
保険証券
保険会社からの年次通知や契約内容のお知らせ
生命保険料控除証明書
預金通帳の保険料引き落とし履歴
確定申告や年末調整の書類
スマートフォンやパソコンに届いているメール
それでも契約が分からない場合、死亡時や認知判断能力が低下した場合には、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用できる可能性があります。
この制度では、一定の要件を満たす家族などが、生命保険契約の有無を一括して照会できます。
ただし、契約の存在が分かっただけで、保険金や給付金が自動的に支払われるわけではありません。
その後、各保険会社へ連絡し、契約内容を確認して、必要な請求手続きを行う必要があります。
また、解約済みや失効済みなど、一部の契約は照会対象にならない場合があります。
あくまで最後の手掛かりになる制度であり、親が元気なうちに契約を整理しておく方が、手続きははるかに円滑です。
【注4】
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請求を後回しにしない
親が入院したり介護状態になったりすると、家族は目の前の対応に追われます。
そのため、保険の請求が後回しになりがちです。
退院してから落ち着いて請求しよう。
施設が決まってからまとめて確認しよう。
保険証券が見つかってから考えよう。
このように先送りしているうちに、時間が過ぎてしまうことがあります。
保険金や給付金の請求には時効があります。
事情によっては期間が経過した後でも保険会社が対応する場合がありますが、それを前提に放置しない方が安全です。
入院、手術、診断、要介護認定などがあったら、
「この契約で請求できる可能性はありますか」
と早めに保険会社へ問い合わせることが大切です。
支払対象になるかどうかを、家族だけで判断する必要はありません。
「これは出ないだろう」と思い込まず、保険会社へ確認しましょう。
【注5】
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保険を「使える状態」にする7つの確認
親の保険については、次の7点を一覧にすると分かりやすくなります。
1.保険会社名
2.契約番号や証券番号
3.保険の種類と主な保障内容
4.どのような場合に給付されるか
5.保険金・給付金の受取人
6.指定代理請求人や登録家族
7.保険料の支払状況と引き落とし口座
すべての約款を家族が読み込む必要はありません。
保険会社のコールセンターや担当者へ、親本人と一緒に連絡し、
「高齢になり、将来自分で手続きできなくなった場合に備えたい」
と伝えれば、確認すべき制度や手続きを案内してもらえます。
その際には、
「入院した時に何が出ますか?」
「要介護認定を受けたら対象になりますか?」
「本人が請求できない時は誰が請求できますか?」
「家族登録と指定代理請求の登録状況を確認したいです。」
と具体的に尋ねると分かりやすくなります。
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親への切り出し方は「保険の棚卸しをしよう」
親に保険の話を切り出す時、「何の保険に入っているの?」
と問い詰めるように聞くと、警戒されることがあります。
そこで、次のように伝えてみてはどうでしょうか。
「せっかく保険料を払ってきたのに、使えなかったらもったいないから、一度一緒に確認しよう。」
「急な入院の時に慌てないように、保険会社と証券の場所だけ教えてほしい。」
「認知症になった時に、誰が請求できるかだけ確認しておこう。」
保険の確認は、財産を聞き出すことではありません。
親が長い間払ってきた保険料を無駄にせず、必要な時に親のために使うための準備です。
「終活をしよう」ではなく、「保険の棚卸しをしよう」という言い方の方が、親も受け入れやすいことがあります。
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今やっておきたいことは3つ
一つ目は、親が加入している保険を一覧にすることです。
保険会社名、証券番号、保険の種類、証券の保管場所を確認します。
金額や細かい条件は、その後で構いません。
二つ目は、指定代理請求人と家族登録の状況を確認することです。
登録されている人が現在も適切か、本人が請求できない時に誰が動けるのかを確認します。
三つ目は、保険会社へ直接問い合わせることです。
介護保険金の支払条件、認知症保障の対象、保険料の支払状況などを、親本人と一緒に確認します。
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「入っている保険」から「使える保険」へ
親の保険は、「入っているか」より「使えるか」が大事です。
保険証券があっても、
家族が存在を知らない。
支払条件が分からない。
指定代理請求人が登録されていない。
保険料の支払いが止まっている。
請求手続きができない。
このような状態では、必要な時に保障を活用できない可能性があります。
反対に、保険の種類が多くなくても、
どのような時に使えるのか?
誰が請求できるのか?
どこへ連絡すればよいのか?
が整理されていれば、家族は落ち着いて動けます。
保険は、加入した時点で完成するものではありません。
家族構成や健康状態の変化に合わせて、定期的に確認していく必要があります。
親が元気なうちに、「この保険は、必要な時に本当に使える状態になっているか?」を親子で確かめておく。
それが、親の財産を守り、介護費用への備えを現実の力に変えるための大切な一歩です。
ご相談はお気軽に!!
【注】
[注1] 民間の介護保険の給付判定は、保険会社の約款に基づいて行われ、公的介護保険制度の要介護認定と判定基準が異なる場合がある。
[注2] 指定代理請求制度、契約者代理制度、家族登録制度等の内容や対象手続きは、保険会社・商品によって異なる。
[注3] 保険料の払込みが滞り、猶予期間を過ぎると契約が失効する場合がある。猶予期間や復活の条件は契約によって異なる。
[注4] 生命保険契約照会制度は、死亡時や認知判断能力低下時などに契約の有無を照会する制度。契約内容の確認や給付請求は、各保険会社へ別途行う必要がある。
[注5] 保険金・給付金の請求権には原則として3年の時効がある。期間経過後の取扱いは保険会社や事情によって異なるため、早めの問い合わせが重要。