小規模工場における作業者と管理者の壁

小規模工場における作業者と管理者の壁

記事
コラム
工場には、見えない壁がある。

コンクリートより硬くて、
フォークリフトでも壊せないやつだ。

作業者と管理者のあいだの壁。

私は30年、現場にいる。
油も汗も怒鳴り声も、だいたい一通り浴びてきた。

今日は、若い頃のちょっと苦い話をしよう。

とても真面目なAさん

Aさんは、実に優秀な作業者だった。

遅刻しない。
文句言わない。
仕事が速い。
品質も安定。

機械もAさんも、止まらない。

私は思った。

「この人に任せたら、現場はもっと良くなる」

…だいたいこう思ったときは、何かやらかす前兆だ。

軽い気持ちで振った一言

「来月から新人教育、お願いできる?」

Aさんは少し間をあけて、

「……分かりました」

と言った。

私はそこで満足した。

“任せられる人がいる”

それだけで、少し楽になった気がしていた。

空気が変わる

数週間後。

なんとなく、工場の空気が重い。

Aさんがピリピリしている。
新人も萎縮している。

でも私はこう思っていた。

「責任感が出てきたな」

違った。

余裕がなくなっていただけだった。

そして、あの日

工程トラブルが起きた。

私は若かった。
今よりも、だいぶ尖っていた。

「管理してるのはAさんだろ?」

その瞬間。

「ハンマーで頭カチ割るぞ!ああ?」

工場が凍った。

シン…どころじゃない。

空気が物理的に止まった。

正直に言うと、マジで怖かった・・・。

でもそれ以上に、

「ああ、完全に追い込んでたな」

という感覚が、後からじわじわ来た。

真面目な人ほど壊れやすい

Aさんは、できないと言えない人だった。

真面目な人は断らない。

でもキャパはある。

作業100%で回していた人に、
管理50%を上乗せ。

150%。

そりゃ怒鳴る。

ハンマーも飛び出す。

(もちろん飛んではいないが)

作業と管理は、別の生き物

あの頃は分かっていなかった。

作業は、自分が頑張れば成果が出る。

管理は、人を通して成果を出す。

似ているようで、全然違う。

筋トレ得意な人に
いきなり司会進行を任せるようなものだ。

能力じゃない。
使う神経が違う。

今ならどうするか

今なら、まず作業量を減らす。

管理は“役割の一部”から渡す。

そして必ず聞く。

「きつくないか?」

昔はそれが言えなかった。

管理者は強くあるべき、
と思い込んでいたからだ。

でも30年もやっていると分かる。

強い人なんていない。

余裕を作れる人がいるだけだ。

修羅場の数だけ、少し丸くなる

怒鳴られたこともある。
物が飛びそうになったこともある。
辞表を突きつけられたこともある。

でも今は、少し笑える。

ああいう出来事がなかったら、

「任せる=乗せることじゃない」

とは気づかなかった。

壁の正体

作業者と管理者の壁は、

能力の壁じゃない。

余裕の壁だ。

人は余裕がなくなると、攻撃的になる。

ハンマーも出てくる。

だから今は思う。

壁を壊そうとするより、
扉をつければいい。

少しずつ開けられる扉を。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す