奈央さんは、夏の午後、カンナの花が真っ赤に燃える小径を歩いていました。
強い日差しの下で、花はまるで「情熱そのもの」のように咲き誇っていて、見ているだけで胸の奥が熱くなるようでした。
そのとき、奈央さんの耳に、ふと「19日の言葉」がよぎりました。
──「ゆるす」の元は「ゆるます」こと。
思い返すと、最近の自分は気づかぬうちに、心の糸をぴんと張りすぎていたのかもしれません。
期待、責任、そして「こうでなくては」という思い。
それらが積み重なって、少しの出来事にもすぐに苛立ったり、疲れてしまったりしていました。
「張った糸はすぐ切れる」
頭の中でその言葉を繰り返すと、カンナの花が、風に揺れながら「大丈夫だよ」と微笑んでいるように見えました。
「結ばぬ糸は切れにくい」
人との関係も同じかもしれません。
強く結びつこうとすればするほど、少しの摩擦で糸はぷつりと切れてしまう。
でも、ゆるやかに、互いに自由でありながら寄り添っていれば、不思議と長く続いていく。
「ゆるますことが、本当の強さ」
奈央さんは、深呼吸をしました。
張り詰めた心の糸を、少しゆるめてみる。
完璧でなくてもいい。急がなくてもいい。
そう思っただけで、胸の奥の重たさがふっと軽くなるのを感じました。
足元のカンナの花が、太陽の光を浴びてきらめいています。
情熱も、永遠も、妄想も、快活も──
すべては「ゆるます」ことの中で生きているのかもしれません。
そして奈央さんは、小さく微笑んでつぶやきました。
「ゆるすって、こんなにも温かい力なんだね」
その声は、風に乗ってどこか遠くへと運ばれていきました。