毎日「あのとき、違う道を選んでいたらどうなっていただろう」って、頭の中で何度も人生のシミュレーションを繰り返してしまうことってありませんか?
「あの言葉を言わなければ良かったのかな」「あの仕事を続けていたらどうだったのかな」「あのとき勇気を出して一歩踏み出していれば」……。
一度考え始めると、まるで無限に続く迷路に入り込んだみたいに、過去の選択肢をすべて「もしも」でやり直してしまうんですよね。
シミュレーションの中の自分は、今の自分よりも少しだけ幸せそうに見えたり、うまくやって生きていたりして。
でも、そうやって頭の中でいくつもの「もしも」の世界を行き来していると、ふと現実に戻ってきたときに、自分の足元がぐらぐらと揺れているような、どこにも足がついていないような感覚に陥ってしまうことがあります。
まるで自分が、透明な浮遊物になってしまったかのような、とても心細くて寂しい感覚ですよね。
これまで数多くの悩みを聞いてきた心理カウンセラーとして、そうやって「もしも」の世界から抜け出せなくなってしまうあなたに、少しだけ寄り添う言葉を贈りたいと思います。
まず知ってほしいのは、あなたが過去をやり直すシミュレーションを繰り返してしまうのは、決してあなたが弱かったり、未熟だったりするからではないということです。
むしろその逆で、あなたがこれまで自分の人生に対して、どれだけ真剣に向き合ってきたかという証拠なんですよ。
「もっと良くしたい」「もっと大切な人を幸せにしたい」「もっと自分らしく生きたい」という、とても優しくて真面目な願いが心の中にあるからこそ、過去の自分を何度も助けに行こうとしてしまうんです。
過去の自分を責めているように見えて、実は当時の自分を救いたくて、一生懸命に頭の中で手を差し伸べている状態なんですよね。
でもね、どれだけ頭の中で完璧な「もしも」の未来を作り上げても、今のあなたの足元がぐらついてしまうのは、あなたのエネルギーが「過去」という過ぎ去った時間と、「頭の中の世界」に持っていかれてしまっているからなんです。
人の心やエネルギーは、いま立っている「現在」に注がれて初めて、地面にしっかりと根を張ることができます。
過去の選択肢を思い出して心が揺れてしまったときは、「ああ、私はまた昔の自分を助けに行こうとしていたんだな」って、自分の優しさをそっと認めてあげてください。
そして、深呼吸をひとつして、ゆっくりと今の自分の体を感じてみてほしいんです。
いま座っている椅子の感覚や、足の裏がしっかりと床に触れている感覚、周りの音や、温かい飲み物の温もり。
そうやって五感を今この瞬間に戻してあげることで、少しずつですが、ぐらついていた足元に確かな感覚が戻ってきます。
過去のどの選択も、当時のあなたが持っていた精一杯の力で選んだ大切な道です。
たとえその結果、遠回りをしたように感じたとしても、失敗したように思えたとしても、その道を通ったからこそ出会えた感情や、出会えた優しさが必ずあなたのなかに蓄積されています。
完璧な選択なんて、この世には存在しません。
どんな道を選んでいても、やっぱり人は「もしも」を考えてしまう生き物だからです。
だからこそ、過去のシミュレーションを始めてしまったら、自分を責める代わりに「もう大丈夫だよ、今の私がちゃんと生きているからね」と、過去の自分に声をかけてあげてください。
あなたが今ここにいて、一生懸命に今日という日を生きていること自体が、何よりも尊くて素晴らしいことなんです。
足元がぐらつく日は、無理に歩き出そうとしなくて大丈夫です。
ただその場に立ち止まって、自分を労わりながら、今ここにある温もりをひとつだけ見つけてみてくださいね。
あなたの足元が、少しずつ温かくて確かな地面へと戻っていくことを、僕は心から応援しています。