大好きなあの人が自分の部屋に泊まり、楽しい時間を終えて帰っていった翌日の朝。
静まり返ったお部屋の中で、あなたの視線はある場所でピタッと止まってしまうことはありませんか?
それは、シンクの中にポツンと置かれた、あの人が使ったままのマグカップ。
あるいは、ベッドの上に少しだけ形が残っている、あの人が使った枕カバー。
普通なら、すぐに洗って片付けるのが当たり前なのかもしれないけれど、あなたにはどうしてもそれができないんですよね。
あえてそのままの状態で、2〜3日はじっと眺めてからじゃないと、お片付けを始めることができない。
もし今、このマグカップを綺麗に泡で洗ってしまったら。
もし今、この枕カバーを洗濯機に入れて回してしまったら。
あの人が確かにここにいて、一緒に笑い合っていたという「体温の証拠」が、世界から完全に消え去ってしまうような気がして、たまらなく怖くなってしまう。
洗うという行為が、まるで楽しかった思い出を自分の手で消去してしまうように感じられて、どうしても切なくなってしまうんですよね。
だから、心に押し寄せる寂しさを少しでも引き延ばすために、あえてお部屋のその部分だけを時間が止まったままのように、そっとしておく。
ちょっと不便かもしれないけれど、あの人の気配がまだふんわりと残っているその空間に包まれていることで、自分の心を一生懸命に守っている。
そんなふうに、残されたものに深く愛着を抱き、切なさを引きずってしまう自分に対して、「私はどうしてこんなに未練がましいんだろう」「早く片付けなきゃダメなのに」と、自分を責めてしまっていませんか?
心理カウンセラーとして、僕はその切なくて、どこまでも愛おしいあなたの行動を、そのまま優しく包み込んであげたい気持ちでいっぱいです。
繊細な気質を持っている方は、目に見える物だけでなく、その物がまとっている「空気感」や「大切な人のエネルギー」を、とても敏感に肌で感じ取る力を持っています。
あなたにとって、そのマグカップや枕カバーは、ただの「食器」や「寝具」ではないんですよね。
あの人がここに存在して、あなたに向けてくれた優しい眼差しや、一緒に過ごした愛おしい時間のすべてがギュッと詰まった、大切なタイムカプセルのような存在なんです。
だからこそ、それをすぐに片付けられないのは、あなたがそれだけ目の前の人を純粋に、そして自分のすべてをかけるくらい深く愛しているからに他なりません。
寂しさを無理にかき消そうとせず、その余韻を大切に味わおうとする姿は、とても人間らしくて、温かい心の持ち主である証拠ですよ。
心理カウンセラーとして、僕はあなたに、その2〜3日の時間を「愛おしい余韻の時間」として、自分に丸ごと許してあげてほしいなと思います。
早く片付けられない自分を「だらしない」なんて責める必要は、1ミリもありませんからね。
あの人の体温の証拠をそっと眺めながら、「楽しかったなぁ」「また会いたいなぁ」と、自分の心に素直に寄り添ってあげる時間こそが、あなたの豊かな感性を癒やす大切なプロセスになります。
そして、あなたの心が「よし、今日も頑張ろう」と自然に前を向けたときに、そのマグカップをゆっくりと洗ってあげればいいのです。
綺麗に洗ってピカピカになったマグカップは、消えてしまったわけではなく、また次の「楽しい時間」をあなたとあの人のために待ってくれる器へと生まれ変わるだけですよ。
目に見える証拠がなくなっても、あの人と紡いだ温かい記憶は、あなたの心のお城の中にずっと消えずに残り続けます。
それまでは、あなたのペースで、その優しい寂しさをゆっくりと抱きしめてあげてくださいね。