小学校の教壇に、二十年以上立ってきました。いまは教室を離れて、オンラインで一人の子とじっくり向き合う毎日です。数えてみると、これまで受け持った子どもは千人を超えていました。この場所を借りて、その二十年で見えてきたことを書いていきます。
何百人の子を見て、残った一つのこと
大きなクラスを何年も担任していると、子どものつまずき方には「型」があることに気づきます。九九が言えない、作文の一行目が書けない、文章題になると手が止まる。学校も学年も違う子たちが、驚くほど同じ場所で、同じようにつまずくのです。
そして、その子たちは決して怠けているわけではありませんでした。ノートを見れば、消しては書き直した跡がたくさん残っている。テストの裏に、こっそり計算をやり直した跡が残っていることもある。本人なりに、必死だったのです。ただ、その必死さが実を結ぶ方向へ向いていなかった、というだけでした。
「やる気がない」と片づけられてきたもの
「うちの子、やる気がなくて」というお話を、保護者の方から何度も聞いてきました。けれど教室でその子を見ていると、やる気の問題であることの方が、実際にはずっと少ない。多くは、やり方と順番が本人に合っていないだけでした。
たとえば九九が入らない子に、もう百回唱えさせても入りません。その子は、耳で聞くより「見て覚える」方が合っていた、というだけの話だったりします。七の段をカードに書いて壁に貼っただけで、すっと入った子が何人もいました。原因の場所が違えば、いくら努力を重ねても報われない。それを「やる気がない」の一言で終わらせてしまうのは、その子にとって、あまりにもったいないことです。
家庭で、今日からできること
もしお子さんが何かでつまずいていたら、叱る前に一度だけ、こう考えてみてください。「これは、やる気の問題だろうか。それとも、やり方の問題だろうか」。
この一呼吸があるだけで、かける言葉が変わります。「なんでできないの」ではなく「どこで止まってる?」と聞けるようになる。前者は子どもを黙らせますが、後者は子どもに自分のつまずきを説明させます。「ここまではわかるけど、ここからわからない」。その一言が出たら、もう半分は解決したようなものです。つまずきの場所さえ見えれば、手の打ちようはいくらでもあります。実際、教室でも、つまずきの場所を一つ特定できた子は、そこからの伸びが早い。逆に、場所があいまいなまま「全部やり直し」をさせると、できる問題まで何度も解かされて、時間ばかりかかり、子どもは疲れてしまいます。まず一点を見つける。それが遠回りに見えて、いちばんの近道です。
このブログで書いていくこと
教室の中で当たり前だったことは、保護者の方からは見えません。見えないからこそ、家庭は一人で悩んでしまう。だったら私が外に出て、現場で確かめてきたことを書けばいい。そう思って、このブログを始めました。
ここでは、二十年の教室で確かめてきた「つまずきの本当の理由」と、「家庭で今日できること」だけを書いていきます。むずかしい言葉は使いません。売り込みもしません。どうぞ気楽に、必要なところだけ読んでいってください。