note社の決算から考える、AIで浮いた時間の正しい使い方

note社の決算から考える、AIで浮いた時間の正しい使い方

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ビジネス・マーケティング

2026年7月7日、note株式会社(東証グロース、証券コード5243)の2026年11月期 第2四半期の決算説明会の書き起こしを読みました。

営業利益が前年同期比1,571%、16〜17倍。
決算サマリー1.png


数字だけ見て驚いて終わるところでしたが、決算説明会の中身を読むと、もっと大事な話がありました。



まず、伸びの中身を分解する

決算説明会には、1Qから2Qにかけての営業利益の増加要因を分解したウォーターフォールチャートが出てきます。
決算サマリー.png


その内訳が具体的でした。

売上高の増加:+9,700万円

売上原価(AI関連事業を除く)の増加:▲900万円

通信費・支払手数料の増加:▲1,100万円

人件費・業務委託費の増加:▲400万円

売上が9,700万円増えて、コストの増加は合計2,400万円程度。

つまり、増えた売上のうち7割以上がそのまま利益に残っています。

CFOの鹿島氏は、これを「限界利益率が高いビジネスモデル」だと説明していました。プラットフォーム事業は一度損益分岐点を超えると、売上が伸びてもコストがそれほど増えない構造になる、と。

「人を減らしている」わけではない
人員数の推移グラフを見ると、直近の四半期(1Q→2Q)で145人から149人へ、4人増えています。

人件費推移.png



CFOの鹿島氏はっきりこう言っています。

無理に人を削っているわけではなく、自然な流れでこうなっている、と。

採用方針についても、無理に絞っているのではなく、優秀な人材はきちんと迎えたいので厳選採用をしている、と説明しています。

長期的に見れば人員数は緩やかに減少傾向('23年1Qの184人がピーク)ですが、直近では増えている。

正確に言うなら「人を減らした」ではなく、「事業の成長スピードに対して、人を増やすペースを抑えられた」です。

CFOも質疑応答で、コスト削減の一番大きな要因は人件費そのものが減ったことではなく、人件費の伸び率が事業の伸びより小さく抑えられたことだと答えていました。

売上高人件費率は、'23年1Qの51.6%から'26年2Qには20.4%まで、継続的に下がり続けています。



本当に大事な質問は、Q&Aの中にあった

決算説明会の質疑応答で、ある投資家がこう聞いていました。

AIで生み出した余力は、利益率の改善に使うのか、それとも成長投資に再投資するのか。

CFOの答えは「どちらも」でした。

かなり絞って利益率だけを改善したのではなく、成長投資をしながら売上も伸ばし、結果として利益率も改善している、と。

これは二者択一の問題ではない、というのがnote社の立場です。

そしてCSOの深津氏は、AIへの投資について、儲かるかどうかより「次の時代のルールに参加するための切符を手に入れること」が重要だという趣旨の発言をしていました。

コスト削減か成長投資か、ではなく、両方を同時に取りにいく。それを可能にしているのが、先ほどの「限界利益率の高さ」です。



ここで、立ち止まって考えたいこと

正直に書きます。

この話を自分の事業にそのまま持ち込むのは、危険だと思っています。

noteのようなプラットフォームビジネスは、利用者が1人増えても、対応するコストがほぼ増えません。だからこそ、AIで生まれた余力を成長投資に回しても、利益率を落とさずに済みます。

でも、例えば1件ずつ相談に乗るタイプの事業はどうでしょうか。

顧客が1件増えれば、対応する時間もほぼ比例して増えます。限界利益率は、noteのように高くありません。

「では自分にその構造があるか、まず問いましょう」というのは簡単ですが、問うただけでは答えは出ません。

参考になる実例を探しました。



低い限界利益率から出発した会社の実例

三重県伊勢市、伊勢神宮の参道にある老舗食堂「ゑびや」の話です。

2012年、経営に入った小田島春樹氏が最初に着手したのは、そろばんと手書き帳簿から抜け出すことでした。2014年にPOSレジを導入し、2016年には過去の売上・天候・曜日・近隣の宿泊者数などから来客数を予測する「来客予測AI」を開発しています。

小田島氏はインタビューで、最初の目的は業務の効率化で自分の業務を楽にすることだったと語っています。家族経営の中小店舗は多忙で、情報収集や新しいことにまで頭が回らない。自分に余裕がなければ、新しい挑戦は生まれない、という理由です。

結果は数字に表れています。来客予測の的中率は95%を超え、食材の廃棄ロスは2016年からの3年間で72.8%削減。従業員の有給取得率は80%以上まで改善しました。日経ビジネスの取材(EBILAB引用)によれば、導入前と比べて売上は4倍、利益率は10倍になったと報じられています。

ここまでは「効率化でコストを削減した」という、note社の話と同じ構造に見えます。

でも、ゑびやの話にはもう1段階あります。

店舗運営で培った来客予測・データ分析のノウハウそのものを「EBILAB」という別会社に切り出し、他の飲食店・小売業向けにクラウドサービスとして外販するビジネスを始めたのです。

AIで浮いた時間を、最初は「今の店の効率化」に使い、その過程で蓄積したデータとノウハウという資産を、後から「外部にも売れる、限界利益率の高い商品」に変えた。そういう順番です。

飲食店という限界利益率の低い事業のままでは、noteのような伸び方はできません。でも、その事業の中で磨いたノウハウを切り出して製品化すれば、限界利益率の高い事業を後から作ることができます。

これが、労働集約型の小さな事業にとって、一番現実的な答えだと思っています。

【参考ソース】
・TECH PLAY「『予測的中率95%超』実現。データ解析の力で経営を改善した伊勢の老舗食堂『ゑびや』が『BEST DX COMPANY賞』を受賞」
・日本ICTテレコムユーザ協会「求められるデータを活用する知恵 DXの成否を決める分析力」EBILAB代表取締役CEO小田島春樹氏インタビュー
・EBILAB公式サイト・ニュース欄(日経ビジネス2019年10月11日号記事の引用紹介)


今のところの結論

AIで浮いた時間をどう使うか、という問いに、今のわたしが出している答えはこうです。

まず、今の顧客への提供価値を厚くすることに使う。

そして、その過程で溜まっていくノウハウ・型・判断基準を、いつか誰かに使ってもらえる形に育てられないか、頭の片隅に置いておく。

いきなり「限界利益率の高い事業を作ろう」と力むより、まず目の前の仕事を磨きながら、資産になりそうな部分を意識して残していく。それがゑびやの歩んだ順番であり、今のわたしにも一番現実的だと思っています。

とはいえ、ここまで読んで「うちの会社とは規模が違いすぎる」と思われた方も多いと思います。

その通りです。

ただ、ゑびやも最初から「データを外販しよう」と思って始めたわけではありませんでした。最初の目的は、自分の店の業務を楽にすることだったといいます。

資産化は、後からついてきたものです。

だとすると、今やるべきことは「今の顧客への提供価値を厚くする」ことであり、その一歩目は、自分の数字を外部の目で一緒に見てもらうことだと思っています。

これまで40件のご依頼をいただき、評価4.8〜4.9で運営してきた財務分析サービスの中で、直近の決算書を拝見し、数字から見える強み・気になる点、そして今の事業が「提供価値を厚くする段階」か「資産化を狙える段階」か、まで踏み込んでお伝えしています。

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