【前編】あつまるな、どうぶつの森 -心を守るための、不器用な生存戦略

【前編】あつまるな、どうぶつの森 -心を守るための、不器用な生存戦略

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コラム
あつまるな、どうぶつの森 ──心を守るための、不器用な生存戦略少しだけ耳を澄ませてみてください。寄せては返す波の音、風に揺れるパームツリーの葉のざわめき。

私たちが生きる現実の世界は、いつも誰かと繋がることを求め、集まることを美徳とします。朝の満員電車、会社の張り詰めた会議室、SNSの通知の嵐。「人の集団(コロニー)」から逃れられない現代において、私たちは常に他人の視線と同調圧力に晒されています。しかし、時にその「集まり」こそが、私たちの心を静かに、確実に蝕んでいく猛毒になることがあるのです。

現代社会を生きる私たちにとって、うつ病は決して遠い世界の他人事ではありません。それは、誰の身にも起こりうる「心の遭難」です。この病気は、遺伝や不運といったどちらか一方の理由だけで引き起こされるのではなく、生まれ持った「遺伝要因(体質)」と、生きる上で避けられない「不運(環境要因やストレス)」の双方が複雑に絡み合う「多因子遺伝疾患」であることが分かっています。

医学の世界において、うつ病の遺伝率は約30〜50%とされています。数字だけを見ると驚くかもしれませんが、うつ病そのものが100%親から子へ遺伝するわけではありません。受け継がれるのは、あくまでも「ストレスに対する脳の敏感さ」や「セロトニンなどの脳内物質を調節する仕組みの偏り」という、いわば心の繊細さのグラデーションです。

近年の東京都医学総合研究所などの最先端の研究では、さらに具体的なメカニズムも解明されつつあります。親から子へ知らず知らずのうちに伝搬する特定のマイクロバイオーム、すなわちヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)に含まれる『SITH-1(シスワン)遺伝子』。この小さな存在が、脳の視床下部に影響を与え、人がうつ病になりやすい体質を形作っているという驚くべき事実が明らかになりました。私たちは生まれながらにして、それぞれ異なる「心の取扱説明書」を渡されているのです。

心のバケツが溢れるときこの生まれ持った繊細さは、私たちの心の中に置かれた「透明なバケツ」をイメージすると、とても分かりやすいかもしれません。

【うつ病発症のイメージ】

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 │ 💧💧💧 │ ← 【環境要因】日常の不運・ハラスメント・急激な変化
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 │ │ ← 【遺伝要因】生まれつきの器のサイズ(ストレス耐性)
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 【許容量を超えて溢れ出たとき、脳のバランスが崩れ「発症」する】


                          沙門蒼俊   合掌
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