うつ病に直面したとき、多くの人は自責の念に深く苦しめられます。「なぜ自分がこんな目に遭うのだろう」「もっとできたはずだ」「自分の頑張りが足りないせいだ」「同期や先輩、後輩たちは生き生きと働いているのに」と、やるせない思いを抱えることもあるでしょう。
それもそのはずです。実は、うつ病にかかる人は、他人の気持ちを思いやり、自分よりも周囲を優先してしまうような「優しさ」を持っていることが多いのです。
しかし、どれほど悔やんだとしても、うつ病は立派な脳の機能障害です。
残念ながら、病気になる前の状態に時計の針を巻き戻すことは、極めて困難だと言わざるを得ません。
だからこそ、その優しさを自分自身にも向けて、新しい人生の歩み方を開拓していくことが何より望まれます。
では、いわゆる「うつ病のリアル」とはどのようなものなのでしょうか。
今回は、なかなか人には聞きづらい、少しセンシティブな問題にも触れてみたいと思います。
うつ病の急性期において、何より重要なのはとにかく「脳」を休ませることです。
まずは信頼できる心療内科医と出会い、適切なお薬を処方してもらい、「ひたすら眠る」ことに専念してください。
大げさでもなんでもなく、蒼俊も発症当時は1日に20時間近く眠っていました。
起きている残りの4時間も、基本的には「何もできません」。
食事をとり、トイレに行き、心療内科に通うのが精一杯です。
洗濯機を回すこともできず、ごみも捨てれず、お風呂にさえ入れないのです。
うつによる脳へのダメージは、私たちが普段当たり前に行っている「日常生活」を、いとも簡単に奪い去ってしまいます。
そのような姿を見れば、ご家族が心配するのは当然のことです。「お風呂に入ろう」「少し起きて散歩をしよう」「本でも読んだら」「気晴らしに映画でも見に行こうか」など、寄り添いたい一心で必死に声をかけてくれるでしょう。
しかし、当の罹患者にとって、その言葉はプレッシャー以外の何物でもありません。
急性期のご家族に求められるのは、「ただ見守る」という姿勢です。そして何より、食事をそっと提供したり、ゴミを捨てたり、シーツを取り替えたり、心療内科への受診をサポートしたりすることに集中していただければ十分なのです。
眠りによって脳がしっかりと休まり回復に向かい始めると、少しずつ着替えができるようになり、お風呂に入り、「髪を切りに行こうかな」と外出をする意欲が湧いてきます。
このように、回復への道のりは非常にゆっくりとしたものです。そのペースは、本人が思っている以上に時間がかかるものだと知っておく必要があります。
もしご本人が「3か月休みたい」と話していたとしても、実際には少なくとも半年、できれば1年以上の休養をとるべきです。
うつによる脳のダメージは、それほどまでに深く、回復には長い時間が必要なのです。
つづく 沙門蒼俊