「自分には何の価値もないのではないか」――。そんな風に心が暗闇に包まれてしまう瞬間は、誰にでも訪れるものです。
しかし、自分を責める必要はまったくありません。自分が無価値に思えてしまう背景には、私たちの「脳」という「生物学的な理由」と、現代を生きる「社会学的な理由」が複雑に絡み合っているからです。
心のなかの縦社会
私たちの「心」は、脳という器官が生み出している一つの現象です。
脳の仕組みを例えるなら、まるでひとつの「会社」のよう。一見すると横のつながりで動いているように見えて、実は厳格な縦社会だったりします。この会社の中では、異なる部署が時に協力し、時に反発し合っています。
「悲しいけれど、なぜか怒りが湧いてくる」「悲しみのなかに、ふと楽しさがある」。
そんな複雑な感情が生まれるのは、脳内で複数の部署が同時に意見を主張し合っているからなのです。
少し心を落ち着かせて「内省」をしてみると、自分の中に複数の感情や、異なる考え方を持つ「たくさんの自分」がいることに気づくはずです。
脳内の3つの部署とバランス
脳という会社には、主に3つの重要な部署があります。
報酬系の部署(ドパミンなど)
安心を司る部署(セロトニンなど)
意味を考える部署(前頭葉)
私たちの感情は、この3つの部署の連携によって作られますが、現代社会ではそのバランスが崩れがちです。
たとえば、強い刺激を求めすぎる「ドパミン中毒」の状態になると、日常の小さな幸せに「しみじみ」とする心の余裕が失われてしまいます。
刺激に慣れすぎた脳は、やがて生活に支障をきたすようになります。さらに、ドパミンが減って報酬系がうまく機能しなくなると、やる気が出なくなり、結果として「自分には価値がない」というストーリーを脳が勝手に作り出してしまうのです。
また、安心をもたらす「セロトニン」の部署が不足すれば、何をやっても楽しさを感じられなくなり、心はうつ状態へと傾いてしまいます。
続く 沙門蒼俊