「逃げる」という、命がけの選択

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コラム
 うつ病や適応障害といった精神疾患の苦しさは、ただ「疲れた」なんて言葉じゃ到底収まらない。
 それは、脳のブレーカーが強制終了するような感覚だ。体は鉛のように重くなり、朝起きることすら地獄になる。
 自分の意志ではどうにもできない恐怖と絶望が、24時間、暗闇の中からずっと襲ってくるのだ。
 もし今、そんな地獄な職場に片足を突っ込んでいる人がいるなら、私は声を大にして伝えたい。

今すぐ、全力でそこから逃げて、と。

 「本人が退職の意思を伝え、自らの足で去るのが筋だ」そんなことは分かっている。正論なんて、言われなくとも自分が一番よく知っている。
 けれど私には、忘れられない記憶がある。
 ある日、私の父が脳梗塞で倒れた。入院の手続き、予後の管理やこれからの手続きをすべて託され、目の前が真っ暗になっていたとき、職場から届いたのは「明日、必ず出社してください」という無慈悲な圧だった。

 家族の命か、それとも仕事か。天秤にかけるまでもない選択を迫られたとき、私は退職手続きのために動き回る気力すら残っていなかった。
 だから、退職代行を使った。結果として、あの選択は正しかったと今でも確信している。会社からの電話が鳴り止んだその瞬間、心にすっと風が通った。
 何より、父の予後や転院の手続きにすべてのエネルギーを注ぐことができ、父は後遺症もなく元気に過ごしている。

 世間は「逃げるのは甘えだ」と綺麗事を言うかもしれない。

 けれど、精神疾患や過度なストレスで心が完全に壊れてしまったら、元の自分を取り戻すまでに何年、何十年という大切な時間を失うことになる。周囲からどう思われようが、退職代行を使おうが、極論バックレだろうが、使える手段は何だって使えばいい。
 あなたの命と、あなたの大切な人の人生以上に優先すべき仕事なんて、この世に存在しない。どうか限界を迎える前に、恥じることなく、その場所から全力で逃げ切ってほしい。

                         沙門蒼俊  合掌
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