☆41【仲間の輪3】「任侠(にんきょう)御一行さん、梁山泊にようこそ!」
「すんごい、訳ありみたいな方々を連れてきましたけど」
「ごめん。なんかヤクザ同士の喧嘩みたいなのに出くわして、でも、
どう見ても多勢に無勢この人を亡き者をにしようとしてて、
それをこの子分みたいな人らが必死に守ってて涙ぐましいから、
つい助けちゃった。それに良いスタッフになりそうだし・・・」
「大丈夫だったんですか?」
「私も照ちゃんも大丈夫よ」
「違いますよ。相手方と後始末!」
「10人ちょっとは動けないようにして、2人ほど腹立ったので治療しないと治らないようにして、後始末はミュー君に任せた。あそこが使えなくなる事で攻撃性が出るか出ないかの実験としては面白いでしょ。クックック・・・」
「『飛んで火にいる夏の虫』状態ですか。あーあなんか気の毒な、
相手に同情します」
『ルカさんだけには逆らわないようにしよう。この世で一番強い
かもしれない』
と、思うテル。
2人の若い男はルカたちの話を聞きながら硬直状態。
ぐったりしている男を見て青也が、
「藪先生呼んだ方がいいですかね」
「そうね。でも多分 栄養失調と打撲だとは思うけど。一応藪先生に
連絡しといて」
「じゃあ、私お連れします」
「春香ちゃん、疲れているのに悪いね。後、終わったら私らも送ってほしいんだけど。特別料金付けるから上がりにしないでね」
「いいですよ」
「ダメ!こう言う事はちゃんとしないと、今は子育てだって金が
掛かるんだし」
「ありがとうございます!迎えに行ってきます」
「ところでルカさん、どこに運びます?」
「訳ありそうだし、一応地下のシェルターの方に運びましょうか?」
「私らで運べそうなのでテルー(2人を見て)この人たちと春香ちゃんの
食事と、彼は 経口補水液と重湯(おもゆ)からかな?
それと私らも軽く夜食、食べようかな?」
青也、照子を見るとうなずき、
「じゃあ、そう言うことでテルーお願い」
「了解、シェルターに持って行けばいい?」
「うん」
エレベーターに みんなで男を運び込み地下のシェルターに向かう。
「名前は?」
若い男達が話し始める。
「俺は千住哲男(センジュ・テツオ)」
「俺は御倉三郎(ミクラ・サブロウ)、兄貴は犬神水月(イヌガミ・
ミツキ)の兄貴・・・」
「みなさん、立派なお名前ですね」
「でも、呼び辛えし『苗字が偉そうだ』って、俺たちのことは哲とかサブとか、犬神の兄貴は嫌がってたけど、犬若(イヌワカ)とか犬頭(イヌガシラ)って呼ばれてました」
そこから2人がかりで事の顛末を話し始める。
桜木組は小さくても違法なことはせず、どちらかと言うと任侠的なところ
だったらしい。
5年前にはみんなの母親代わりでもあった組長の奥さんが亡くなったら
しいが、警察はちゃんと捜査せず事故扱いで済ませ、そして、
今度は組長が癌で本来なら犬神が跡目を継ぐ
話もあったが渋っている間に急死し、解散することにしたらしい。
そこから犬神が突如、行方不明になり、サブと哲が探しだしたところ
ホームレスになっていて、ほとんど食べておらず半ば気力を失ってたのを
何とかしようとしてた時に、ライバル関係で、その辺一帯を治めたがって
いて、犬神に邪魔された恨みのあった牛田組と出くわし、先ほどの
ことだったらしい。
「抵抗しなかったのも栄養失調だけじゃなく、気力を失ってたんですね」
5人がかりで犬神をシェルター内に運び込む。
地下のシェルターは大きい分厚い鉄の扉は開いており、中は広めの
フロアで大き目の食卓テーブルがあり、シェアハウスの共有部分のように
なっている。一段上がった雑魚寝できる広いスペース、
雑魚寝スペースの下や壁が収納になっていて必要な物が設置されていた。
「部屋のようにしたければこの仕切りを組み立てれば個室になります。
布団寝袋はここ、着替えはこれ、犬神さんのサイズ合うかな?
後で用意しますね。トイレはこことここ、お風呂はここで、
何かあったらこのインターフォンで言って下さい。
ここは誰でも分かるようになっているので、分からない事があったら
誰にでも聞いてください」
「シェルターってすごいっスね」
「このシェルターは、核シェルターとまではいかないんだけど水害・地震・
火災などの災害と外敵対応のパニックルームにもなってて、
上に子供らもいるから全員が一ヶ月くらいは避難できるようになって
いるけど。実はまだ、試作品で、ビルや家全体が災害防犯対策の
普段使いできないか?室内でそれが出来ないか?の実験中なんだ」
「外敵対応の?パニックルーム??」
「どんな敵が来るか分からないでしょ。3人ともここに居れば取りあえず
大丈夫だと思うよ。敵が核でも撃ち込まない限りはね」
「敵?いくら牛田組でも核までは・・・それと実験中?」
「この親子は実験マニアで、」
「さっきも”実験””って言ってた」
「申し遅れましたが、私は風間青也、私達はアイデアや企画の仕事を
しています。よろしくお願いします」
「私は風間ルカ(龍火)『親子』って、私の父と私が実験マニア、
実験して結果出てからじゃないと
どうなるか分からなくて怖いでしょ。ってことで、よろしく」
「私は天野照子です。よろしくお願いします」
2人はおずおずと
「よ・よろしく・・・お願い・・します」
「ルカさん、何かありますか?」
考え込んでいたルカが
「うん、呼び名は犬神水月イヌガミ・ミツキさんだからミッキー、
千住哲男(センジュ・テツオ)君は千ちゃん、
御倉三郎(ミクラ・サブロウ)君はミック、
ミッキー兄貴は言いにくいかな?ミッキッキー?ミキ兄さんかな?
ところで千ちゃん、ミック歳いくつ?」
「20歳です『ミキ兄さんに千ちゃん?哲よりいいか?』」
「19です『ミック?なんか、カッコイイ』」
笑う照子、青也は、哲男と三郎に向かって
「ルカさんは個人名覚えるのが苦手なので、気にしなくていいです」
「ここに来たら、あだ名と鍛錬はセットのルーティーンです」
「鍛錬?」
「それはおいおいで、千ちゃんとミック、藪先生が来る前にミキ兄さんを
お風呂に入れて、青君手伝ってあげて」
ぐったりしている犬神に向かってルカが、
「私達も多かれ少なかれ気力を失うような辛い目に遭って、
ここに集まってンだから分からないじゃないよ。だけど、あんたの命は私らが
拾ったんだ。少しはしゃんとしな!」
「姐さん?」
その言葉に驚いたようにビクっとして、犬神が少し動く。
「ルカさんじゃないみたいだったですよ」
「私も私じゃないみたいだった。なんか降りてきたような??」
「それじゃあ私、布団用意しますね」
「私は・・浴衣あったかな?」
風呂から出た犬神に浴衣を着せようと、背中に立派な龍と女神のような
綺麗な刺青。
「これは素晴らしい。芸術品。刺青云々言う奴がいるけど、ヤクザだろうが、なんだろうが綺麗なものは綺麗だよね」
「驚いたり、怖がったりしねンですね?」
「綺麗で驚くけど怖くはないですね」
「どこが怖いの?・・・」
照子とルカで、浴衣を着せて犬神を布団に寝かせ、
「海外では俳優さんでも入れているし、自分の体をキャンバスみたいに
彫りまくっている人もいます。部族によっては魔除けや戦士の証の刺青もある。海外には海外の文化伝統があるのだから『外国観光客に来て欲しい』と
言うなら刺青も受け入れるべきだと思います」
「そうですよね。『インバウンドには来て欲しいけど刺青は嫌だ』なんて、公系とその関係者らは欲張りで自分の都合のいいようにしか考えてませんね」
「インバウンドに来て欲しいのなら刺青もセットなんだから、
四の五の言わずに温泉でも何でも受け入れればいいのに、『刺青隠せ』とか、そこじゃなくて、刺青があろうが、なかろうが、乱暴働いたり、トラブったら
どうするかが問題のはず。この国で、とやかく言う人間はとことんポイントが
ズレていて、それを正しいかのように押しつけるのが本当に嫌だワ」
「でも、デカデカと”台所”って彫った人見た時は、笑いましたけどね」
そこに藪先生と春香がやってくる。
「また訳あり拾ってきたんだって」
そう言いながら犬神の診察を始める。
「藪先生、人聞きが悪い、犬猫じゃないんだから『拾って来た』じゃなくて
『連れて来た』です」
「ルカさん、さっき『また拾ってきちゃった』って言ってましたよ」
「テヘペロ」
「あーこれは栄養失調だね。随分ご飯食べてないんじゃないか?
このままだったら餓死してたよ。あとは打撲、骨は折れてないね。
湿布貼ってと。 少しずつ食事とって2~3日すれば動けるように
なると思うけど、何かあったらまた連絡して」
そこにテルが 食事を運んでくる。
「おーすげーな、テルの料理プロ並みに美味いンだよなー」
「藪先生も食べてきます?」
「少しご相伴(ごしょうばん)にあずかっちょおかなー」
「治療費から差っ引いていい?」
「ルカ君、厳しいこと言わないでよ」
「人が悪いなルカさんも、大丈夫ですよ。多めに作ってきたし、
気にせず食べて下さい。エーと、この人達は?」
「この人が犬神水月(イヌガミ・ミツキ)さんでミッキー又は、ミキ兄。
こっちの若いのが千住哲男(センジュ・テツオ)君で千ちゃんと
御倉三郎(ミクラ・サブロウ)君でミック」
「もう、ニックネーム付けたんだ」
「で、この人は国守照虎(クニモリ・テルトラ)事、テルーこの
カラオケ梁山泊のオーナー兼コック長、この人は「IIGO」の運転手の
近藤春香(コンドウ・ハルカ) さん事、春香ちゃんシングルで2人の子持ち」
「それいらなくないですか?」
「で、こちらが名医で口が堅いが食い意地張った藪 信一
(ヤブ・シンイチ)先生」
「食い意地は余計だ。ただの名医だ。だが、俺の世話になるなよ!
今『藪医者のやぶじゃなくて、本当に藪って言うんだ』と思っただろう?」
千ちゃんとミックがうなずく。
「冷めちゃう。ほら、春香ちゃん、先生、千ちゃんとミックもこっち来て、
ガッツリ食べたい人はこっちね。照ちゃん、青君、ルカさんの軽い夜食系は
こっち、私はミッキーさんに、先に経口補水液飲ませてからテールスープで
大丈夫かな?先生大丈夫ですよね」
藪先生、口いっぱいほおばりながら
「この棒棒鶏(バンバンジー)絶品!あっテル君、それで大丈夫です」
「でも、余り飲まないですね」
ルカが来て、
「早く元気になって、やってもらいたい事は山ほどあるんだから!」
それを聞くと犬神の目に光がともり、そこに照子が、
「3人ともここにいれば見つからないと思うし、その間、心の傷も
身体の傷もゆっくり治していけばいいです。私もそうでしたから」
それを聞いて、更に少しずつ飲み始める。
「千ちゃんとミックはしばらくミキ兄さんの世話とここの掃除、
汚れ物の洗濯などの家事してもらって、その後の話はみんなで
相談して決めるから。大丈夫、あなた方の仕事くらいなんとか
なるから気にしないで、テルー念の為に、地下のシェルターの方で
寝泊まりさせてあげて、
千ちゃんとミックは困った事はテルーに聞いてね」
「明日の予定は・・・」
「根津社長とあさひ食品さんとの打ち合わせが・・」
「じゃあ、それが終ってから顔出すので、テルー後の事はよろしく」
「何かあったら連絡下さい。飛んできます」
「了解」
「腹いっぱいだ。俺も帰るぞ」
「じゃあ、春香ちゃん、うちらも一緒に乗っていくので先生降ろした後、
風間家に行ってくれる」
「分かりました」
「遅くなって悪いね。超過分請求してよ」
「いつもすみません。通常勤務の方がもっとハードなので、気心知れた
ルカさん関係の仕事は楽なくらいです。それに子供らも見てもらっているし、大丈夫ですよ。安心して仕事できます」
千ちゃんとミックが不安げに、
「俺たちを受け入れてくれて・・こんなに親切にしてくれて ・・・ここは何かの宗教団体なンすか?」
「違うよ。宗教団体ではないけど、世の不条理に対して闘う政党を
つくろうとしている政治団体モドキ?」
テルがすっくと、
「政治団体と言うより義侠(ぎきょう)の集まりです!」