時代を超えるテーマ

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いきなりですが、日本国内で最も読まれた(売れた)本は何だと思いますか? 答えは黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』。少し調べてみたのですが、様々な機関・WEBサイトがランキングを出していて、信頼できる決定的数字はありません。それを総合すると、1位についてはこの本で間違いなさそうです。(ちなみに世界で読まれた日本人作者の本では、人間失格、ノルウェイの森、宮本武蔵が別格で存在)。

『窓ぎわのトットちゃん』は1981年出版、累計売上数約580万部。私は、もちろん本の存在は知っていましたが、読んだことはありませんでした。ということでこの機会に購入し、実際に読んでみました。その感想は、「じんわり心に響くよい本」。この本、フィクションではありません。実話、実名、自筆なので創作とは違う温度感があります。ミリオンセラーになったのは、発売時の時代背景も影響していると思います。1981年(昭和56年)は校内暴力の全盛期。警察庁発表の検挙・補導人数が過去最大の年で、その85%が中学生でした。

一方、この年2番目に売れた本は田中康夫氏の「なんとなくクリスタル」で、ブランドかぶれの大学生が注目されました。荒れ狂う思春期の暴走、軽薄なお洒落崇拝という、複雑な時代だったんですね。若者の成長や教育のありたい姿を一人ひとりが考えた時期だったのかもしれません。この時私は高校生。荒れる中学生とかっこつけた大学生のはざまで、ふつうの高校生やってました。「窓ぎわのトットちゃんなんてかっこ悪いよな」てな感じでした。

今考えると、親の世代が多く読んで、子供たちに推薦したのかもしれません。素直に、自分らしく、愛情を受けて育ってほしいという願いもあったのかな。当時の時代背景もさることながら、多くの人に長く読まれたのは、一過性のブームとは違う本質的な要素があったからだと思います。トットちゃんの自由な生き方と、周囲の人々、特にトモエ学園の小林校長先生とのふれあいが印象的。ここから先はご興味のある方は実際に読んでみてください。

繰り返しになりますが、全てが実話なので体温を感じるんです。私たちはともすると、自分の役に立つ啓発本・ノウハウ本、あるいは気晴らしになるエンタメ本・流行小説ばかり読んでしまいます。しかし、時代を超えて読み継がれる、語り継がれるテーマに触れることも時には大切なのかもしれません。それが本でも、映画でも、それ以外でも。そんな気がします。

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