「明日は学校に行く」
昨日の夜、子どもはそう言っていた。
ところが朝になると、布団から出られない。
声をかけても返事がない。何とか起きてきても、学校へ行く準備が進まない。
「昨日は行くって言ったじゃない」
つい、そんな言葉が出そうになる。
でも、本人も苦しそうにしている。
叱ってよいのか、励ましてよいのか、それとも何も言わずに見守るべきなのか。
子どもの将来を思えば思うほど、どうすればよいのか分からなくなる。
不登校のお子様を持つ保護者の中には、このような日々を過ごしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私たちは、そんなご家庭にお伝えしたいことがあります。
学校に行けないという状態だけで、子どもの気持ちを判断しないでほしいのです。
その子の心の中では、大人が想像する以上に複雑な気持ちが交錯しているかもしれません。
1.「学校に行きたい」と「行くのがつらい」は、同時に存在する
不登校という言葉から、「学校が嫌い」「勉強したくない」「友達と会いたくない」といった姿を想像する方もいるかもしれません。
もちろん、そうした気持ちを持つ子どももいます。
しかし、すべての子どもがそうではありません。
学校が好き。
友達にも会いたい。
授業にも参加したい。
それでも、学校に行こうとすると、心や体が思うように動かなくなる。
そんな子どももいます。
なぜでしょうか。
学校生活では、授業を受けることだけでなく、友人関係、集団行動、周囲への気遣い、先生との関係など、さまざまなことにエネルギーを使います。
周囲からは問題なく過ごしているように見えても、本人にとっては大きな負担になっていることがあります。
頑張りたい気持ちと、もう頑張れないという気持ち。
その両方を抱えている子どもに必要なのは、「行きたいのか、行きたくないのか、はっきりしなさい」と迫ることではないでしょう。
まずは、その複雑な気持ちを理解しようとする姿勢ではないでしょうか。
2.学校で頑張っていた子ほど、周囲が気づきにくいこともある
学校生活に困難を感じる子どもが、必ずしも目立った問題を起こすとは限りません。
友達に優しく、周囲に気を配れる。
先生に頼まれた仕事を一生懸命にこなす。
行事ではリーダーを務める。
そんな子どもが、ある日突然、学校に行けなくなることもあります。
大人から見ると、突然の変化に思えるでしょう。
しかし、本人はそれまで、周囲の期待に応えようと無理を重ねていたのかもしれません。
私たちは、学校でどれだけ活躍していたかということだけで、その子の心の状態を判断してはならないと考えています。
「できていること」と「無理なくできていること」は、同じではないのです。
子どもの能力だけでなく、その力を発揮するためにどれほどの負担を感じているのか。
そこにも目を向ける必要があります。
3.知的能力が高い子どもにも、学校生活の難しさがある
ギフテッド傾向のある子どもについても、同じことがいえます。
知的理解が早い。
特定の分野に非常に強い興味を示す。
大人と対等に議論できるほどの知識を持っている。
そうした子どもであっても、集団生活や人間関係に難しさを感じる場合があります。
例えば、授業内容をすぐに理解してしまい、学習への意欲を保つことが難しい子ども。
周囲の感情や出来事に敏感で、他の子が叱られている場面にも強い負担を感じる子ども。
得意なことには集中できても、興味の持てない活動や急な予定変更に苦手さを感じる子ども。
ただし、こうした特徴があるからといって、必ずギフテッドであるわけではありません。また、ギフテッド傾向が不登校の原因になると一概にいえるわけでもありません。
大切なのは、診断名や能力の高さだけで子どもを理解しようとしないことです。
その子は何に困っているのか。
何をしているときに安心できるのか。
どのような学び方なら、好奇心を発揮できるのか。
私たちは、一人ひとりの違いに丁寧に向き合いたいと考えています。
4.子どもを休ませることは、何もしないことではない
学校に行けない日が続くと、保護者は学習の遅れや進路が心配になるでしょう。
「このまま何もしなかったら、将来どうなるのだろう」
そう考えるのは自然なことです。
しかし、子どもが強い疲労や不安を抱えているときには、まず休息や安心できる環境が必要な場合もあります。
休むことは、学びを諦めることではありません。
心身の状態を整えながら、次の一歩を考えるための時間にもなり得ます。
ただし、休んでいれば必ず回復するという単純なものでもありません。
睡眠や食事、体調、気持ちの変化などを見守り、必要に応じて医療機関や専門の相談機関の力を借りることも大切です。
また、学習を再開するときも、最初から学校と同じ時間割に合わせる必要はないかもしれません。
好きな本を読む。
興味のあることを調べる。
何かを作ってみる。
誰かと少し話してみる。
そうした小さな活動が、本人にとって大切な時間になることもあります。
大切なのは、大人が考える理想的な回復の順序を、すべての子どもに当てはめないことです。
5.「学校に戻ること」だけをゴールにしない
学校に戻れるようになることを願う保護者の気持ちは、尊重されるべきです。
そして、本人が学校に行きたいと望んでいるなら、その思いも大切にしたいものです。
しかし、学校に戻ることだけを唯一の目標にしてしまうと、子どもが別の場所で見せている成長を見落とすおそれがあります。
以前より自分の気持ちを話せるようになった。
好きなことに取り組める時間が増えた。
少しずつ人と関わることができるようになった。
自分で今日の過ごし方を選べるようになった。
こうした変化も、子どもにとって意味のある成長です。
学校に戻る道も、学校以外の場所で学ぶ道も、その子の状況や希望に応じて考えていく必要があります。
学校か、学校以外か。
どちらか一つを急いで選ばなければならないわけではありません。
学校、家庭、学校外の教育施設、相談機関などが、それぞれの役割を生かして子どもを支えることができればと考えています。
6.保護者の方も、一人で抱え込まないでください
不登校が続くと、保護者自身も大きな負担を抱えることがあります。
学校への連絡。
学習の遅れへの不安。
進路の心配。
家族との意見の違い。
周囲からの何気ない言葉に傷つくこともあるかもしれません。
子どもを支えたいのに、自分自身にも余裕がなくなってしまう。
そんなとき、保護者が相談できる場所を持つことも大切です。
そして、相談するときには、最初から正しい答えを用意する必要はありません。
「何が原因なのか分からない」
「本人が何を考えているのか分からない」
「学校に行かせた方がよいのか、休ませた方がよいのか迷っている」
そんな状態からでも、一緒に状況を整理していくことには意味があります。
子どもを理解するためには、保護者の方のお話にも丁寧に耳を傾ける必要があると、私たちは考えています。
7.ホッとルームが大切にしていること
東京都文京区本郷にある「ホッとルーム」は、学校生活に困難を感じている子どもたちのための居場所です。
私たちが大切にしているのは、次のようなことです。
安心できること。
何かを頑張らなければ、その場所にいてはいけないわけではありません。
自分のペースを尊重されること。
学習する、読書する、創作活動をする、休息する。本人の気持ちを聞きながら、一日の過ごし方を考えます。
自分で選べること。
大人がすべてを決めるのではなく、子ども自身の意思を大切にします。ただし、必要なときには一緒に考え、支援します。
その子らしい学びを大切にすること。
ギフテッド傾向を含め、多様な学習ニーズや個性への理解を大切にしています。
ホッとルームは、子どもを無理に学校へ戻すための場所ではありません。
かといって、学校とのつながりを否定する場所でもありません。
学校や家庭、必要に応じて関係機関とも協力しながら、本人にとって望ましい道を考えていきたいと思っています。
私たちは、子どもの能力を伸ばすことだけでなく、その子が安心して、自分の人生を歩んでいけることを大切にしています。
8.まずは、保護者の方だけでお話ししませんか
「子どもが外に出たがらない」
「知らない大人と会うことに抵抗がある」
「本人にどう説明すればよいのか分からない」
そのような場合、最初からお子様と一緒に来ていただく必要はありません。
まずは保護者の方だけで、お話を伺うこともできます。
すぐに入会を決める必要もありません。
お子様が今どのような状況にあり、どのようなことに困っているのか。
ご家庭では、どのようなことを心配されているのか。
ホッとルームでどのような支援が考えられるのか。
一緒に整理するところから始められればと思っています。
学校に行けた日だけが、子どもの成長した日ではありません。
安心して笑えた日。
自分の気持ちを言葉にできた日。
好きなことに少し夢中になれた日。
そうした時間にも、大切な意味があると私たちは考えています。
すべては子どもの成長と幸せのために。
私たちは、一人ひとりの子どもと、そのご家庭に丁寧に向き合っていきたいと思います。
🌷 ホッとルーム|保護者相談・見学のご案内
「まだ子どもを連れていける状態ではないけれど、相談だけしてみたい」
そのような保護者の方も歓迎しております。
学校に行きづらいお子様のこと、学習や生活のこと、ギフテッド傾向や個性への対応など、お気軽にご相談ください。
フリースクール「ホッとルーム」
所在地:東京都文京区本郷2-23-12 ユニーク本郷2階
運営:株式会社NEXUS