■『悪魔の証明』とは?
「無いことを証明する」ことは極めて難しく、通常ではほぼ不可能であることを意味する『悪魔の証明(ラテン語:probatio diabolica、英語:devil's proof)』。
何かが「ある」ことを証明するためには、実際の事例を挙げればよいのですが、「ない」ことを証明するためには、想定される可能性すべてを挙げなければならないため、通常ではほぼ不可能と言えます。
『未知証明』とも呼ばれている『悪魔の証明』は、「~が存在しないこと」「~していないこと」を証明することが不可能もしくは非常に困難な事象であることから「悪魔」に例えられています。
◆「証明責任(立証責任)の転嫁」
「〇〇がないと証明できないのであれば、〇〇は存在する」という論法である『悪魔の証明』。
「ない」ことを証明するためには、「ある」可能性をすべて潰さなければならないことから、ほぼすべての事柄で不可能と言えます。
この論法を利用した、本来は自身が証明しなければならないにも関わらず、その証明する責任を相手に「転嫁」し、相手が証明できないと「やはり自分の理屈が正しい」と主張する「証明責任(立証責任)の転嫁」は、ビジネスシーンにおいてもよく見受けられます。
■身近な『悪魔の証明』の発生例
「在ること(存在すること)」よりも「無いことを証明する」ことは難しく、ほぼ不可能であることを意味する『悪魔の証明』。
身近で生じるケースとしては、特に「オカルト」を信じている人がこの論法を用います。典型的な例は以下の通りです。
●「UFO」は存在するのか?
●「幽霊」は存在するのか?
●「ネッシー」は実在するのか?
●「死後の世界」はあるのか?
●なぜ「陰謀論」は無くならないのか?
●「奈良のシカを蹴る外国人」はいない?
◆「UFO」は存在するのか?
「UFO(未確認飛行物体)が存在しない」と証明できるか。このケースも『悪魔の証明』の典型例です。
「UFOが存在する」ことを証明するためには、これまでのUFOの目撃事例を挙げればよいのですが、「存在しない」ことを証明するには、宇宙の隅々まで調査しなければならないため、事実上不可能です。
つまり、「UFOは存在しない」という断定的な証拠を提示することはできないため、「存在しない可能性がゼロでないのであれば存在する」という理屈に落ち着いてしまいます。
◆「幽霊」は存在するのか?
「幽霊は存在しない」と証明できないのも『悪魔の証明』の典型例の一つです。
「幽霊は存在する」ことを証明しようとすれば、目撃事例などの証拠を一つでも挙げればよいのですが、「幽霊は存在しない」と証明するためには、心霊現象はすべて錯覚であるということを科学的・論理的に説明しなければならず、このケースも事実上不可能です。
◆「ネッシー」は実在するのか?
イギリスのネス湖に生息するとされる未確認動物(UMA)の通称である「ネッシー」。
このネッシーが存在しないことを証明するのが非常に難しいことも、『悪魔の証明』の典型的な例として挙げられます。
仮に「ネッシーはいる」ことを証明するには、ネッシーを探し出せば証明できますが、「ネッシーはいない」ことを証明するには、ネス湖全域をくまなく捜索する必要があります。
UFOや幽霊と比べるとできそうな印象を受けますが、長さが約35キロメートル、幅が約2キロメートル、水深は最大で約230メートルという規模のネス湖の全域を余すことなく調査することはさすがに現実的とは言えません。
◆「死後の世界」はあるのか?
「死後の世界は存在しない」ことを証明できないのも、『悪魔の証明』の例の一つです。
「死後の世界が存在しないことを証明するために死んでみる」という人はいませんし、「死んでみたけど、死後の世界はなかった」と証明できる人はいないので、「100%死後の世界はない」と証明することは不可能と言えます。
◆なぜ「陰謀論」は無くならないのか?
『悪魔の証明』とセットで展開されることの多い「陰謀論」。陰謀論者が自説を補強し、反論を封じるために用いられることがあります。
「△△という組織が世界の経済を牛耳っている」という陰謀論者に対して批判や反論をしようとしても、「△△という組織が世界経済を牛耳っていない」ことの証明は事実上不可能であり、「証拠がないことが証拠」であるかのように陰謀論が「正しい」かのような錯覚が生じてしまうのです。
◆「奈良のシカを蹴る外国人」はいない?
2025年10月21日に第104代内閣総理大臣に就任した 高市 早苗 氏が9月の自民党総裁選で、奈良公園で外国人観光客が鹿に蹴るなどの乱暴な行為をしていると発言しました。
SNS上にアップされた動画や高市 氏自身の目撃談に基づくとされていますが、「外国人観光客によるもの」と断定できる根拠が不足しているとして、波紋を呼ぶことになりました。
このケースも『悪魔の証明』に該当します。「奈良公園の鹿を蹴る人がいた」ことを証明するためには、その現場を1件でもおさえれば成立しますが、「蹴った人はいない」ことの証明にはいくら証言を集めたとしても不可能です。
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