失敗しない翻訳者探しの3ポイント

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少子化、グローバル化、成長を続けるためには、海外進出は大企業だけのテーマではなくなりました。そのためには英語で発信する必要があります。誰に翻訳を依頼すればいいのか?英語ができる人なら、社内でも誰かいるはず。そもそも、Google翻訳で内容がある程度わかればいいのではないか?そう考えるところから、翻訳者探しは始まります。
それでも、最後は結局プロに頼む、となるのはなぜでしょうか?そして、翻訳者探しを後悔しないために、依頼者さんが考える大事なことを3つ、お伝えします。逆に言えば、機械翻訳を含めた選択肢の中から、この3つを満たすものを選び取るのが皆さんの問題解決になります。

1つ目 翻訳は、言葉の意味だけではなく、言外の意味や文化、最終的には話者の目的も翻訳する
翻訳という仕事は、言葉を別の国の言語に変換する、というだけではありません。実は文化や習慣なども一緒に翻訳をしないと、意味が伝わらないのです。
突然ですが、タイに行ったことはありますか?私が初めて行ったのは15年以上前のバンコクです。まだまだ蒸し暑い夕方、ホテルに戻る前に、現地のコンビニで何気なくペットボトルの緑茶を買いました。部屋に戻って飲んでみると、「え?なにこれ?・・・甘い。しかも超甘い・・・」。日本のペットボトルの緑茶は基本的に無糖ですよね。日本茶と言えば緑茶、私たち日本人は、爽やかな風味や、かすかな渋みなど、お茶本来の味を楽しみ、喉と心を潤します。しかし、同じ緑茶商品でも、タイでは全く異なります。もし、あなたが、日本的なお茶の爽やかな渋み、という内容を伝えたいとしましょう。日本人に伝える感覚で、言葉の意味をそのままタイ語に翻訳したとしても、タイの人には半分も意味が分かりません。爽やかさ、というのは甘味の後に来る感覚かな?と思われてしまうこともあるでしょう。このようにお茶のようなちょっとしたものでも、人間は習慣、文化、歴史というコンテンツの中から、意味を引き出して、言葉にしています。
こんな時、私たちプロの翻訳者はどうするのか?文化的差異、意味的な齟齬が起こりそうな部分を見つけた場合、意味が通りやすいように文章に仕掛けを施します。お茶の場合で言えば、もともとの文章にお茶本来の味と爽やかさに関する記述があれば、「爽やかさ」と「お茶本来の味」の関係を、接続詞や選ぶ単語で工夫して、読んでいる人に、「この爽やかさというのは、我々の思う爽やかな感覚とは異なるようだ」ということを明示的に伝えるようにします。場合によっては、許可を頂いてから、説明文を加えたりもします。この辺りはまだまだ機械翻訳にはできない、人間だけの判断能力が必要でしょう。文化や習慣の話をしましたが、翻訳者も色々で、ITに強い、医療に強いなど、経歴は様々です。依頼者は自分たちがどのような社会集団、専門集団に属していて、誰に何を伝えようとしているのかを明確にするだけでも、どんな経歴の翻訳者を選べばいいか、分かるようになるでしょう。反対に、そもそもの誰に、何を伝えるのか、がぼやけた状態で探し始めると、ミスマッチの可能性も上がります。

2つ目 翻訳とは、基本的に外国語の理解、プラス、ライティング技術
翻訳者、というと外国語に精通している人、というイメージがあると思います。しかし、相手に伝わる、動かす翻訳文をかける人は、外国語に精通しているだけではなく、書く技術そのものに優れいている人なのです。
どういうことか?英語を日本語の文章に翻訳する時のことを想像してみてください。2つの翻訳文があるとします。

1つは、英語として正しく翻訳できている文章です。
もう1つは、日本語として読みやすい文章です。

皆さんはどちらを読みたいと思いますか?
ほとんどの場合、後者の文章を読みたい、と思うのではないでしょうか?
正しく翻訳できることは大切です。しかし、どんなに正しくても、読みにくい文章では、多くの人に読んでもらえません。もとは英語とはいえ、読む人は日本人、最終的には日本語として良い文章になっているかどうかが、成果物としての価値に直結します。このことは実はあまり多くの人は意識せずに発注しているように思います。恐らく日本の語学教育の在り方に原因があると思います。日本の語学教育、国語教育は文の意味を「知ること」を重視し、「理解すること」を軽視しています。つまり、答えはあらかじめ用意されている、または文法的なルールから組み合わされる答えとなる訳文が存在し、それを知ることが目的です。しかし、翻訳というのは、意味を知るのは第1ステップです。その後に、考える、理解する、再構成する、という4段階あります。海外の教育ではreadingとwritingはセットです。文章として分かりやすく、論理的に相手を説得できるか、というところまで訓練します。

話を戻すと「じゃあ原文の意味なんて無視して日本語として分かりやすければいいんじゃないの?」という意見もあると思います。これは1つ目の「言外の意味や文化も翻訳する」というポイントと時に衝突します。あるべき姿は当然、最終的な成果物である「日本語として分かりやすい文章」です。しかし、もともとの文章は日本語ではなく英語という全く違う言語で書かれた文章です。あるべき姿と現実、その間を埋めるのが翻訳の仕事です。多くの翻訳者は、原文の意味をくみ取りつつ分かりやすく伝える、にはどうすればいいかと葛藤しながら仕事をしています。

発注する時は、誰に何を伝えるのか、読む側の立場にたって、翻訳者の文章が読みやすいかどうかを意識すると評価しやすいと思います。

3つ目 それは納期です。
当たり前だろ、と思うかもしれません。ですがとても重要です。締切に間に合わない、という翻訳者は意外と多いのです。前の2つのポイントの通り、翻訳は答えが1つの仕事ではありません。言語の意味やつながりをどう解釈するかでアウトプットは変わってきます。解釈と迷いの袋小路に入って、最後まで訳しきれずにお茶を濁す、という人は結構います。一人前の翻訳者は迷いの袋小路に入らずに、時間内に完成度を上げるための自分なりの仕事術を持っています。
たとえば、私の場合には、とりあえず間違っていても、最後までまず訳してしまう、という方法を取ります。この時点では完成度は2割です。実はここが一番苦しいのです。ただ、最後までやりきると、何を言いたいのか、クライアントにとって重要な部分はどこか、読者に何を伝えるべきか、ようやくあるべき姿と現実のギャップ、つまり「課題」が見えてきます。そしてようやくいわゆる文章を練る作業に入っていきます。ここは結構楽しいのです。全体が見えないまま闇雲に文章を整えようとすると、迷いの袋小路にはまり、時間を浪費します。実はこの納期をしっかり守れるか、というのは単にこだわるのかどうか、というよりも、翻訳の質自体に直結する場合が多いので、納期を守っていない、という評価が続いている翻訳者は要注意です。

他にも色々あるとは思いますが、とりあえずこれらのポイントを押さえている翻訳者なら、後はトライアルで200字くらい翻訳してもらって、出来で判断すればいいのではないかと思います。いずれ、文章の出来のどんな点を評価すべきか、というのも記事にしたいと思いますが、今日はここまで。
皆さんが公開の無い翻訳者選びができるよう、祈っています。

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