法人口座を作れないとどうなる?仕事ができなくなる?

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ビジネス・マーケティング
会社を興す際にやるべきことはたくさんありますが、その1つが「法人口座の開設」です。
ただ個人口座の開設ほど簡単ではないので、場合によっては「会社を興したのに
法人口座が作れない」といったことも無いとは言えません。
では法人口座を作れないとどうなるのか、
法人口座を作るにはどうすれば良いのかなどを詳しく見ていきましょう。

法人口座が無くても取引ができないわけではない

法人口座が作れないと会社として取引ができない、といったことはありません。
別に民法や会社法などの法律で「法人は法人口座を持っていなければいけない」と
定めされていることはないです。
取引する相手が納得すれば、会社同士の取引で個人名義の使うことは可能です。
実際に個人事業主やフリーランスは法人口座を作れませんから、
個人名義の口座を取引に使っています。
ですから、最初に取引相手に「法人口座が作れていないので、
個人名義の口座を使わせてください」とお願いしておけば良いわけです。
事業がある程度軌道に乗って、
法人口座が作れるようになるまで個人名義の口座でしのぐのも1つの方法ですよ。

法人口座が作れないことにはデメリットもある

法人口座が無くても取引ができますが、
「法人口座が作れないこと」には少なからずデメリットもあります。
1つは信用の問題で、
法人口座が作れないと会社の「社会的信用が上がりにくい」のです。
法人口座を作る際には金融機関の審査があり、
それをパスしないことには法人口座を作ることができません。
法人口座が作れない=金融機関の審査がパスできないということですから、
取引相手に「会社に何かしら問題があるのか?」と疑われてしまいます。
また、会社の売り上げを社長やその親族の個人口座に振り込ませるといった手口で
「脱税」を行うケースが少なからずあります。
ですから個人口座で取引すると、取引相手に「やましいことをしようとしてるのでは?」
とこれまた疑われることも考えられます。
会社によっては、コンプライアンス上の問題などで、
個人名義の口座を使う相手とは取引しないことがあったりします。
そのため個人口座を使うことで、新規の取引が難しくなり、
事業の拡大ができにくくなってしまう恐れもあります。

融資の相談がしにくい

会社経営をしていると、自己資金だけでは足りず、
どうしても金融機関の融資を利用せざるをえないといった状況に陥ることがあります。
そういった場合に、法人口座を持っていないと金融機関に融資の相談がしにくいです。
金融機関によっては付かないこともありますが、
法人口座を作ると担当者が1人付いてくれます。
いくら金融機関相手とは言っても、
「お金を貸してほしい」という相談はそもそもしにくいものです。
しかしある程度密な関係となる担当者が居れば、
本来はしにくい相談も比較的しやすくなります。

振込手数料を値下げしてもらえない

法人口座を持っていると、
口座のある金融機関に「振込手数料の値下げ」をお願いすることができます。
個人口座だと1人の振込手数料を安くすると、顧客間の不公平を無くすために、
全員の手数料を下げないといけなくなってしまいます。
なので個人口座だと振込手数料値下げのお願いはできません。
しかし法人口座は取引金額や取引回数が多くなりますから、
振込手数料だけでも結構な金額になります。
そこで「毎月これだけの取引をするから、
振込手数料を少し下げてほしい」と金融機関にお願いするわけです。
ただ、法人担当クラスで判断できる問題ではなく、支店長クラスと交渉することになり、
簡単に値下げしてもらえないことも十分に考えられます。
失敗したとしても振込手数料が変わらないだけでリスクはありませんから、
交渉する価値はあります。
実際に値下げをお願いする際には、
自社と同規模の会社の振込手数料をリサーチしておくと良い交渉材料になりますよ。

法人口座を作るには

法人口座が無いと何かとデメリットが生じますから、
作れるのであれば法人口座は作っておいた方が良いです。
金融機関の審査をパスして法人口座を作るには
 ・審査の厳しい金融機関を避ける
 ・バーチャルオフィスを利用しない
 ・資本金を50万円以上にする
 ・事業目的をハッキリさせる
といった点に注意する必要があります。
まず「審査の厳しい金融機関は避ける」ですが、
金融機関ごとに法人口座開設の際の審査基準が違います。
ですから、全く同じ内容で法人口座開設を申し込んでも、
「A銀行は審査に通らなかったけどB銀行は審査に通った」ということもあるのです。
いわゆるメガバンクと言われて全国展開している「都市銀行」は審査が厳しめで、
地域密着型の「地方銀行」は都市銀行に比べると審査が甘めです。
法人口座開設に条件が設けられていて、中小企業の法人口座開設に特化している
「信用金庫」は地方銀行よりもさらに審査が甘いとされます。
信用金庫よりもさらに審査が甘めなのが、
実店舗を持たずにネット上での取引を中心とする「ネット銀行」です。
審査が甘めとは言え、
地方銀行でも信用金庫でも法人口座を作るのは低いハードルではありません。
法人口座を作るハードルの高さと得られる社会的信用は比例するので、
都市銀行で法人口座が作れるのがベターです。
しかし実際には起業したての会社が都市銀行に法人口座を持つことは難しいですから、
最初は信用金庫やネット銀行で法人口座を作るのが現実的ではないでしょうか。
ちなみに「ゆうちょ銀行」で法人口座を作るという選択肢もありますが、
大規模企業ならともかく、中小企業の場合はおすすめできません。
ゆうちょ銀行には中小企業向けの融資制度が無いので、
中小企業がゆうちょ銀行で法人口座を作っても融資が受けられないのです。
なので、中小企業でも融資が受けられるゆうちょ銀行以外の金融機関で法人口座を
作る方が良いというわけです。

バーチャルオフィスを利用しない

「バーチャルオフィス」を利用していると、金融機関の審査をパスしにくく、
法人口座を作ることが難しくなります。
ちなみにバーチャルオフィスは、簡単に言うと、ビルなどの一室ではなく「住所のみ」を
借りられるサービスのことです。
会社宛ての郵便物の受け取り先にしたり、
固定電話やFAXの転送サービスを利用したりといった使い方をします。
バーチャルオフィスの住所を本社住所として登記することが可能で、起業の際に
一時的にバーチャルオフィスを本社とする個人事業主や小規模業者も少なくありません。
バーチャルオフィスは法律による規制を受けており、
現状では違法行為に利用される危険性は低くなっています。
しかし法人口座開設の審査においてはバーチャルオフィスの信用性は低く、
審査をパスできない要因の1つとなってしまいます。
(「バーチャルオフィスだから」という理由のみで審査に落とされることは無い)
ですから、起業の際に一時的のバーチャルオフィスを利用するのは良いですが、
法人口座を作る際には登記住所と事業所の場所が一致するようにしておきましょう。

法人口座開設を申し込む前に支店の管轄エリアを確認しておく

住所関連のことでもう1つ、法人口座開設を申し込む時には
事前に金融機関の支店の管轄エリアを確認しておいた方が良いですよ。
実は各金融機関は支店ごとに「管轄エリア」を設けていて、
管轄エリア内にある会社でないと法人口座開設ができないようになっています。
ですから、本社の近くにある金融機関の支店に法人口座開設を申し込んでも
管轄エリア外だと断れてしまうのです。
たとえ「管轄エリア外」が理由だとしても、「断れた」という事実だけが残ってしまい、
同じ金融機関の別支店で申し込んでも審査をパスできない可能性が高くなります。
なので申し込む前に管轄エリアを確認しておき、
本社が管轄エリアに入っている支店に申し込むようにした方が良いわけです。

資本金を50万円以上にする

現在では資本金1円でも株式会社を作ることができますが、
法人口座を作るには資本金は50万円以上にしておくのが望ましいです。
「50万円」はあくまで目安で、50万円以下だからダメ、
50万円以上だからOKというわけではないので注意してください。
資本金の額面と社会的信用も比例しますから、
資本金の額面が大きいほど法人口座開設の審査をパスしやすくなります。
反対に資本金の額面が小さすぎると、「本当に事業を継続する気があるのか?」
「ペーパーカンパニーじゃないか?」と疑われて法人口座を作らせてもらえないのです。

事業目的をハッキリさせる

会社を興す際に「定款」を作りますが、その定款に「事業目的」が
ハッキリ記載されていることが法人口座開設の審査では重要な要素となります。
事業目的が曖昧な表現になっていたり、
必要以上に盛り込みすぎていたりすると法人口座開設の審査ではマイナスです。
法人口座開設の審査では、
「事業継続が可能か」「事業の将来性があるか」などが見られます。
事業目的が曖昧では継続可能かどうかや将来性の有無が判断できませんから、法人口座開設を断られてしまう恐れがあるわけです。
事業目的を盛り込みすぎていると、「何をする会社なのか」「何がしたのか」が分からず、事業実態が把握できずに断れる理由となってしまいます。
まずは定款で事業目的をハッキリさせておき、
さらに事業計画をしっかり作っておくことが法人口座開設では重要ですよ。

事業目的が法人口座開設に適していること

事業目的で言うと、法人口座開設に事業目的が適していることも重要な要素です。
登記が認められる事業目的であっても、
法人口座開設の審査で「不適格」とされる場合があります。
実際にあった例としては、
本社住所が都心なのにも関わらず事業目的が「農園経営」だったというものです。
本社を都心に置いて、地方にある農園を経営するといったことは可能ですが、
法人口座開設の審査では「都心に農園を作るのか?」と思われてしまうようです。
また「占い」や「恋人紹介」、「貸金業」といったものが事業目的に含まれていると、
審査をパスできない可能性が高くなります。
もちろんこれらの事業自体には何の問題もありませんが、
金融機関では「法人口座開設には適さない」という判断になってしまうのです。

許認可が必要な事業を行う場合は事前に許認可を受けておく

事業目的に届出や許認可が必要なものが含まれている場合は、
事前に届出を済ませたり許認可を受けておかないといけません。
届出や許認可の受領が済んでいないと、
金融機関としては「本当に事業を行う気があるのか?」と疑わざるをえません。
また「届出が受理されない、許認可が受けられないことが分かってるのでは?」
といった疑いもかけられてしまいます。
そうなると、法人口座を良からぬことに使われる恐れが大きくなり、
結果的に「不適格」とされてしまうわけです。
なので必要な届出や許認可の申請は、
法人口座開設を申し込む前に済ませておきましょう。
ちなみに、「理美容業」「クリーニング業」「有料駐車場業」などは
それぞれ管轄機関への「届出」が必要です。
「ペットショップ」「貸金業」「電気事業」「解体工事業」などは、
各機関への「登録」が必要となっています。
「運転代行業」「自動車分解整備業」は「認可」、
「質店」「建設業」「飲食店業」「運送業」などは「許可」を受ける必要があります。

ホームページがあると法人口座開設に有利?

一般的に「ホームページがあると法人口座開設に有利」と言われることがあります。
ホームページがあるだけで法人口座が開設できるわけではないですが、
審査において多少の有利になることはあるようです。
法人口座開設の申し込みに必要な書類の中に、「会社の実態が確認できる資料」
「事業内容が確認できる資料」というものがあります。
実態が確認できる資料としては、
「法人設立届出書(控)のコピー」や「登記簿謄本」などが挙げられます。
事業内容が確認できる資料は、
「会社案内」「商品やサービスのチラシ」「許認可証」などです。
しかし自社ホームページがあれば、
会社の実態と事業内容を確認する資料としてホームページが使えます。
金融機関としてもホームページで全て確認できるので、
多くの資料に目を通さずに済むというメリットがあります。
ホームページがあれば法人口座が作れるわけではないものの、
無いよりはある方が審査で有利になる可能性が高いと思います。
ただし、金融機関が法人口座開設の審査に必要とする情報が、
ホームページに全て掲載されていなければいけません。
ですからホームページを作る際には、少なくとも
 ・会社概要(法人名、本社住所、連絡先、代表者氏名など)
 ・事業内容
 ・取り扱っている商品やサービス
 ・許認可情報(必要な場合のみ)
などは掲載しておきましょう。
まとめ
法人口座が作れないからと言って、
取引ができずに仕事にならないといったことはありません。
ただ法人口座が無いことを理由に取引を断る企業もあるので、
円滑に事業を進めるには法人口座がある方が良いでしょう。
紹介した法人口座開設に必要なことや金融機関の審査内容を確認して、
法人口座開設申し込みに向けてしっかり準備してくださいね。

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