こんにちは、Yuta Kuwamuraです。法人営業を9年経験したあと、いまは企業向けに生成AIの研修と導入支援をしています。
「AIに提案書を作らせてみた。でも、どこかで見たような中身と見た目になってしまう」
研修や導入支援の場で、よく聞く声です。
構成はそれらしく並んでいる。文章も整っている。それなのに、ぱっと見て「AIが作ったな」と分かってしまう。結局、自分で一から作り直した。そうしたご相談も少なくありません。
AIの性能の問題に見えます。ですが多くの場合、原因は頼み方にあります。「提案書を作って」とだけ伝えると、AIはいちばん無難な形を返してきます。どこかで見たような資料になるのは、AIが「平均的な正解」を出そうとするからです。
裏を返せば、「どういう資料にしたいか」と「どういう資料にしたくないか」を先に渡せば、仕上がりは変わります。ここでは、私が実際に使っている3つのやり方を、そのまま使える指示文と一緒にお伝えします。
① お手本の資料からデザイン指針を逆算する
やり方
「見やすい資料にして」と頼んでも、AIには何が見やすいのかが伝わりません。そこで、見やすいと感じた資料そのものをAIに見せて、ルールを書き出させます。
完成品を分解して、作り方を逆にたどる方法です。ものづくりの世界では「リバースエンジニアリング」と呼ばれます。
手順は次のとおりです。
・良いと思った資料を3〜5枚選び、画像やPDFにしてAIに添付する(画像やPDFを読み込めるAIを使います)
・配色、文字の大きさ、余白、1枚あたりの情報量、見出しの書き方を書き出させる
・あわせて「なぜ読みやすいのか」を言葉にさせる
3つ目が大事です。「青と白を使っている」だけでは、まねはできても応用ができません。「強調したい数字だけに色を使っているから、目が迷わない」のように理由まで書かせると、別の資料にも当てはめられるルールになります。
書き出されたルールは、自社用の「デザイン指針」として文書にまとめて保存してください。例えば、次のような短い文の集まりで十分です。
・色は基本の2色と強調の1色まで。強調色は、いちばん伝えたい数字にだけ使う
・見出しは1行で言い切る。「〜について」で終わらせない
・1枚の主張は1つ。補足は下に小さく添える
次に資料を作らせるときは、その指針を最初に渡してから頼みます。毎回お手本を探し直す必要がなくなり、資料ごとの見た目のばらつきも抑えられます。
そのまま使える指示文
添付した資料は、私が「読みやすい」と感じた提案資料です。この資料から、【自社名】の提案書づくりに使えるデザイン指針を作りたいと考えています。
次の項目ごとに、資料に共通するルールを書き出してください。
・配色(使っている色の数、どこに色を使っているか)
・文字の大きさ(見出し・本文・注釈の大きさの差)
・余白(どこを空けているか、詰めすぎていない理由)
・1枚あたりの情報量(主張の数、文字量、図や表の数)
・見出しの書き方(言い切りか、問いかけか、数字を入れているか)
それぞれのルールについて、「なぜそれで読みやすくなるのか」を1〜2文で説明してください。
最後に、【業種・資料の種類(例:中小企業向けの研修提案書)】に当てはめるときのルールとして、10項目以内の箇条書きにまとめてください。
注意点
学ぶのは「なぜ読みやすいか」というルールであって、資料そのものではありません。他社の資料の表現や図をそのまま写して使うことはしないでください。指針として言葉にしたうえで、自社の中身に合わせて作り直すのが前提です。
また、社外秘の資料や、お客様からお預かりした資料は添付しないでください。何をAIに入れてよいかは、社内の入力ルールに従います。お手本には、次の②で紹介するような、もともと公開されている資料を使うのが安心です。
② お手本が集まっている場所を知っておく
やり方
①を試そうとすると、「そもそもお手本になる資料が手元にない」という壁に当たります。実は、見やすい資料は意外と身近に公開されています。
・会社紹介資料:企業が営業や採用のために、事業内容をまとめて公開しているもの
・採用向けの説明資料:働く環境や事業の魅力を、社外の人に伝えるために作られたもの
・決算説明資料:上場企業が投資家向けに公開している業績の説明資料(IR資料とも呼ばれます)
・官公庁の公開資料:審議会や検討会の配布資料など。デザインより、論点の並べ方の参考になります
どれも「社外の、事情を知らない人に伝える」ために作られているので、提案書のお手本に向いています。特に決算説明資料は、限られた枚数で数字の変化を伝える工夫が詰まっています。
探すときは、検索の言葉を工夫します。例えば次のような言葉です。
・「【業種名】 会社紹介資料」
・「【業種名】 決算説明資料」
・「採用ピッチ資料」
・「【テーマ】 検討会 資料」
自分の業種に近い会社の資料を見ると、お客様が見慣れている言葉づかいや図の形も分かります。
そのまま使える指示文
添付した資料は、公開されている【資料の種類(例:決算説明資料)】です。提案書づくりのお手本として、次の観点で分析してください。
・表紙:何が書かれていて、何が書かれていないか
・1枚目:結論をどこに、どの順番で置いているか
・数字の見せ方:どの数字を大きく見せ、比較の相手を何にしているか
・流れ:全体を何枚・何段階で構成しているか
分析した内容をもとに、【自社名】が【お客様の業種】に出す提案書で、まねしたい工夫を3つ、まねしないほうがよい点を1つ挙げてください。まねしないほうがよい点は、お手本の目的(投資家向け・採用向けなど)と提案書の目的の違いから考えてください。
注意点
見るときは、全体を眺めるより、ポイントを絞ったほうが学びが残ります。私がよく見るのは次の3つです。
・表紙に何を書いているか(社名と題名だけか、一言の主張まで入れているか)
・1枚目で結論をどう置いているか(最初に答えを言っているか)
・数字をどう見せているか(前年と比べているか、単位をそろえているか)
なお、お手本の資料にも著作権があります。①と同じく、学ぶのは考え方までにとどめ、図や文章をそのまま使わないようにしてください。
③ 「やってほしくないこと」を先に決めて、AIに検査させる
やり方
①②は「こういう資料にしたい」という方向の話でした。③はその逆で、「こういう資料にはしたくない」を先に決めておくやり方です。
私は、資料ごとに次のようなNGリスト(やってほしくないことの一覧)を持っています。
・1枚に主張を3つ以上入れない
・根拠のない数字を書かない
・「絶対」「必ず」などの断定表現を使わない
・文字を詰めすぎない(1枚の文字量の上限を決める)
・専門用語を説明なしで使わない
作らせるときにこのリストを渡すのはもちろんですが、効くのは作ったあとです。でき上がった資料を、このNGリストで検査させます。「違反している箇所と、その直し方を一覧で出して」と頼むと、自分で読み返すより短い時間で、引っかかる箇所の候補が並びます。
さらに、作るAIと検査するAIを分けると、見落としが減ります。同じ会話の中で「検査して」と頼むと、AIは自分が作ったものを甘く見がちです。新しい会話を開いて、資料とNGリストだけを渡して検査させてください。私自身も、成果物を検品するときは、作る係と確かめる係を分けています。人の仕事でも、書いた本人よりほかの人のほうが誤字に気づきやすいのと同じです。
そのまま使える指示文
添付した資料は、【お客様の業種】向けに作った【資料の種類(例:研修の提案書)】です。次のNGリストに照らして、資料を検査してください。
・1枚に主張を3つ以上入れない
・根拠のない数字を書かない(出典や計算の根拠が資料内にない数字)
・「絶対」「必ず」などの断定表現を使わない
・1枚の文字量が【上限(例:200字)】を超えない
・専門用語に説明がない状態で使わない
・【自社で追加したいNG項目】
結果は、「ページ番号」「違反しているNG項目」「該当する文や箇所」「直し方の案」の順に、1件ずつ箇条書きで出してください。違反がないページは「問題なし」とだけ書いてください。判断に迷う箇所は、違反と決めつけず「要確認」として分けてください。
注意点
検査の結果は、あくまで候補です。AIは違反を見落とすこともあれば、問題のない箇所を違反と言うこともあります。最後は、出てきた一覧を見ながら人が判断して直してください。
NGリストは、最初から完璧である必要はありません。お客様や上司に指摘された点を、そのつど1行ずつ足していくと、自分たちの資料に合ったリストに育っていきます。
まとめ
3つの裏技を並べると、次のとおりです。
1. お手本の資料を見せて、デザイン指針をAIに書き出させる
2. 会社紹介資料や決算説明資料など、公開されているお手本の探し方を知っておく
3. NGリストを先に決めて、作るAIとは別の会話で検査させる
どれも、AIに「良い資料とは何か」を考えさせるのではなく、こちらの基準を渡すやり方です。基準があれば、AIが出す下書きの質がそろいやすくなり、手直しも「基準に合っているか」で判断できるようになります。
全部を一度に試す必要はありません。手元に気に入っている資料が1つでもあれば、①から始めてみてください。
毎回の指示を省きたい方へ
とはいえ、資料を作るたびにデザイン指針を貼り、NGリストを渡し、別の会話で検査を頼むのは、続けるうちに手間になってきます。
そうした方に向けて、ココナラで「営業・事務専用のAIアシスタントを作ります」(20,000円)を出品しています。デザイン指針やNGリストを最初から覚えさせた、提案書づくり専用のアシスタントを作ることもできます。毎回の指示を省いて、いつもの基準で下書きと検査を任せられる形を一緒に整えます。
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