EERの追加説明

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マネー・副業
先日のコラムで、トレーディングシステムの安定性を評価する指標として、EER(Efficiency to Error Ratio)なるものを提案しました。
この値が大きいほど、リスクが小さく効率が高いシステムであるといえます。

また、売買完全対称のシステムであれば、EERの絶対値が大きいほど高効率・低リスクのシステムであるといえます。買い建てでEERを算出して結果がマイナスになった場合は、売り建てで計算し直せば符号を逆転することができるわけです。 

もちろん、これは手数料等を考慮していませんが、EERが十分大きければ、それらを差し引いても安定した収益を得ることができるでしょう。 

さて、ここでEERの意味についてもう少し突っ込んで考えてみます。 

今、EER=4のシステムがあるとします。 
これは、期待効率が4円/株日で標準誤差が365円なのかもしれないし、期待効率が8円/株日で標準誤差が730円なのかもしれません。

ここで、最初のシステムをシステムA、2番目のシステムをシステムBと呼ぶことにします。 
今、最大許容損失を100万円とした時、それが標準誤差の2倍×株数となるようにトレードを行うものとしましょう。

すなわち、1株当たり資産が標準誤差の2倍分下落したらシステムを停止し、その時の損失が最大許容損失を超えないようにするわけです。なお、株数は100株単位とします。 

システムAの場合、株数は1,300株となり、1日当たり5,200円の期待収益となります。一方、システムBの場合は株数600株で、1日当たり4,800円の期待収益となります。 
株数を100株単位としたためシステムAとBとで1日当たり期待収益に若干の差がありますが、本質的にはシステムAとBは同等であるといえます。

以上のように、EERは普遍的・客観的な指標であり、異なるシステム間の性能を比較するのに適していることが分かります。 

また、先日のコラムで述べたように、株価推移をシステムと見なして様々な銘柄の株価の安定性を評価・比較することもできるでしょう。 
EERの高い銘柄なら、中長期的な保有に向くといえるわけです。

例えば、上場している全銘柄に対して、同一期間でEERを算出し、それらを比較して最も高い部類のEERを持つ銘柄を長期保有してもおもしろいかもしれません。 

ストップ基準は、回帰直線の推定値から標準誤差の2倍分下落した価格に設定し、株数×標準誤差の2倍が最大許容損失以内となる株数を買い付けることになります。 

なお、上記の回帰直線等は株価推移を単利リターンに置き換えて算出する必要があることは、昨日述べた通りです。 

また、EERは先日触れたタグチメソッドにおけるSN比として用いることも可能かもしれません。 
SN比はその定義から必ず正の値を持たなければならないのですが、EERは売買完全対称システムであれば、売買を逆転することにより、常に正の値となるようにすることができるからです。

それならば、最初からEERの絶対値を用いても支障はなく、そうであればタグチメソッドにおけるシグナルとして使用できる可能性があるわけです。 

EERはその定義からしてSN比との整合性が高く、様々な条件やノイズ下でEERを評価し最適条件を見出すことにより、堅牢なトレーディングシステムの構築が可能になると考えます。 

このように、様々な応用が考えられるEERですが、課題がないわけではありません。 
EERの絶対的な意味合いについては今後の研究を待つ必要がありますが、最大の課題はその算出期間をどのように設定するかということでしょう。この期間の取り方によって、EERの値はいかようにも変化します。

安定したトレーディングシステムであれば、算出期間の違いによるEERの差異は大きくはないかもしれません。しかし、株価推移に関しては、算出期間による差異は避けられないものとなります。 
これは、自分の投資スタンスと相談して決めるしかなく、どうしても主観的な要素が入り込むことになってしまいます。

いずれにしても、トレーディングシステムの開発においては、EERを如何に大きくできるか、また算出期間の違いによってEERの値にバラツキがないか、等が重要となります。 
しかし、様々な指標が入り混じったシステム評価の中で、EERという単一指標だけで評価できることの意義は、非常に大きいのではないでしょうか。

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