年収を上げて転職したのに、満足できないのはなぜか|給与は「不満を消す」要因です

年収を上げて転職したのに、満足できないのはなぜか|給与は「不満を消す」要因です

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IT・テクノロジー
現役エンジニア × 国家資格キャリアコンサルタントの yoshi_career です。日系企業から外資系IT企業に移り、いまも現場でエンジニアとして働いています。福岡在住です。
「年収は上がったんですが、どうも気持ちが乗らなくて」
転職から半年ほど経った方から、ときどき聞く言葉です。条件は良くなっている。それでも、何かが足りない。
最近読んだ本に、この状態をうまく説明している理論が出てきました。クレイトン・M・クリステンセンの『イノベーション・オブ・ライフ』です。序盤に、ハーズバーグの二要因理論が紹介されています。
先にお伝えしておくと、この記事は「給与を気にするな」という話ではありません。 むしろ逆です。

給与は、意識すべき大事な条件です


まずここをはっきりさせておきます。
生活が回らなければ、仕事は続きません。 どれだけ仕事の中身が良くても、毎月の収支が苦しい状態で働き続けるのは無理があります。
私は、年収を下げる転職は原則として勧めていません。一度下げた額は次の転職の基準になりますし、「いずれ上がる」は入ってみないと分からないからです。
給与を軽視する話ではない、という前提で読んでください。そのうえで、給与だけを基準にすると何が起きるか、という話をします。

ハーズバーグが見つけたこと


フレデリック・ハーズバーグという心理学者が、1950年代末に研究を発表しています。
「どんなときに仕事で満足したか」「どんなときに不満だったか」を聞いて回ったところ、満足の理由と不満の理由が、別の項目で並んでいたのです。
不満の理由として挙がったもの
・給与・労働条件・会社の方針や管理のされ方・人間関係・雇用の安定性
満足の理由として挙がったもの
・達成したこと・認められたこと・仕事そのものの内容・任された責任・成長している感覚
前者は衛生要因、後者は動機づけ要因と呼ばれています。
ここからが面白いところです。衛生要因は、足りないと不満になりますが、満たしても満足にはなりません。
給与が低ければ不満になります。では給与を上げれば満足するかというと、不満が消えるだけです。そこから先の満足は、別のところから来ます。
ハーズバーグはこう言っています。満足の反対は不満ではなく、「満足が無い状態」である。

クリステンセンが、この理論をどう使ったか


クリステンセンは、この理論を仕事の選び方に当てはめています。
報酬で仕事を選び続けた人が、なぜ行き詰まるのか。理由は単純で、計測しやすいものが、計測しにくいものを押しのけてしまうからです。
年収は数字で出ます。比べられます。人に説明もできます。
一方で「仕事の中身が面白いか」「任される範囲が広がっているか」は、数字になりません。比べにくく、説明もしにくい。
比べやすいほうで決める。それ自体は自然なことですが、そうやって選び続けた先で、「条件は良いのに気持ちが乗らない」という状態になります。

自分の場合を振り返って


私は日系SIerから外資のITコンサル、いまは外資のITサポートエンジニアという経歴で、エンジニアとして13年ほど働いています。
転職を決めるとき、給与は確かに大きな判断材料でした。それは間違っていなかったと思っています。
ただ、この本を読んで振り返ってみると、同じくらい強く働いていた動機が、もうひとつありました。
「技術が上がっている感覚があるかどうか」です。
新しい領域を任されたとき、分からなかったことが分かるようになったとき。そういう時期は、条件の良し悪しに関係なく、仕事が面白かった。逆に、給与が上がっても同じ作業が続く時期は、どこか物足りなさがありました。
当時は言語化できていませんでしたが、動機づけ要因が効いていたということだと思います。

給与だけで選ぶと、何が起きるか


相談を受けていて、繰り返し見る形が3つあります。
① 不満は消えるのに、満足が来ない
入社直後は条件が良くなった実感があります。ところが半年ほど経つと、「何か違う」が出てきます。不満は消えたが、満足は増えていない状態です。
② 次も給与でしか動けなくなる
給与を軸に選んだ経験しかないと、次に迷ったときも給与で比べることになります。判断の軸が1本のままだと、同じ結果を繰り返します。
③ 上がった額に、慣れる
これがいちばん見落とされます。上がった年収は、数か月で基準になります。そして基準になったあとは、不満を消す力も無くなります。

面接で、動機づけ要因を確かめる


給与の話は、どの会社でも出ます。問題は、もう一方を聞かないまま決めてしまうことです。
面接で聞けます。
達成 この職種では、何をもって「成果を出した」とされますか
成長 1年目と3年目で、任される範囲はどのように変わりますか
責任 自分で判断できる範囲は、どこまでありますか
承認 評価は、どなたが何を見て決まりますか
4つとも、条件交渉ではありません。業務内容の確認です。聞いて不自然な質問ではありません。
答えが具体的に返ってくる会社は、そこを設計しています。曖昧なら、入ってから動機づけ要因を得にくい可能性があります。

この理論の限界も、書いておきます


二要因理論には批判もあります。
1959年の研究で、対象は特定の地域の会計士とエンジニアでした。また、過去を思い出して語ってもらう方法を取っているため、「良かったことは自分の手柄、悪かったことは環境のせい」という形に寄りやすい、という指摘があります。
ですから、そのまま当てはめられる法則ではありません。
それでも紹介したのは、相談の場で同じ形を何度も見るからです。条件は良くなったのに気持ちが乗らない、という状態は、実際によく起きています。説明のつく枠組みがあると、本人も整理しやすくなります。

結局、どう使うか


給与と、動機づけ要因。どちらかを選ぶ話ではありません。
順番としては、こうです。
① 生活が回る水準を満たしているか(ここが欠けると、他が良くても続きません)② そのうえで、動機づけ要因があるか
①だけで決めると、半年後に戻ってきます。②だけで決めると、生活が持ちません。
両方を見るために、②を言葉にしておくことをおすすめします。自分にとっての動機づけ要因が何なのかは、人によって違います。成長かもしれませんし、裁量かもしれませんし、誰かに必要とされることかもしれません。
私の場合は、技術が上がっている感覚でした。それに気づいたのは、正直なところ、この本を読んでからです。
「自分にとっての動機づけ要因は何か」は、一人で考えると抽象的になりがちです。過去の仕事を振り返りながら言葉にしていく作業は、聞き役がいたほうが進みます。

まとめ


・給与は意識すべき大事な条件。生活が回らなければ仕事は続かない・ただし二要因理論では、給与は衛生要因に分類される・衛生要因は足りないと不満になるが、満たしても満足にはならない・満足を生むのは動機づけ要因(達成・承認・仕事の内容・責任・成長)・クリステンセンの指摘は、計測しやすいものが、計測しにくいものを押しのけること・給与だけで選ぶと①満足が来ない ②次も給与でしか動けない ③上がった額に慣れる・面接で達成・成長・責任・承認を聞いておく・順番は①生活が回る水準 → ②動機づけ要因。どちらか一方では決めない


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