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◯キャラクターについて
主人公とヒロインのやりとりに、粋な言葉遊びの面白さが散りばめられている点が、本作を読み進めさせる推進力になっています。類型キャラを描くことが得意で、読者の脳内イメージをくすぐってキャラを伝える技術が高い作者です。
一方、類型の分かりやすいイメージに頼りすぎて、「本作のこのキャラ」までは立たせられていません。
例えば、最序盤で「ただコンビニに寄っておにぎりを買う」という行動に五行(約150文字)を使っている割には、「本作のこのキャラ」を描けていないため、非常にもったいないと言えます。何のためにコンビニに寄らせておにぎりを選ばせたのか、作者にとっての「目的」「ねらい」がなければ、無意味な情報になってしまいます。
店員への態度、支払い方法、貧乏なのか裕福なのか、大食いなのか普通なのか少食なのか、なぜサンドイッチではなくおにぎりを選んだのか、おにぎりの具は何が好きなのか、おにぎりが売り切れていたらどんな反応をするのか、最後のひとつに手を伸ばしたとき他人と手が触れそうになったら丁寧に譲るのか眉間をよせて喧嘩を売るのか子供っぽくジャンケンで決めようと持ちかけるのかなどなど、ただコンビニに寄るだけでも、キャラによって描ける内容、描くべき内容が変わってきます。
こうした「ねらい」を洗い直した上で、序盤の無駄を削って、キャラと設定の伝達を速やかに行うことで、本作の「面白さの一口目」の提供が早まりますし、であればこそ、本作の魅力をもっと磨いていくことができそうです。
とくに第一話序盤において、主人公が設定説明をするための独り言が目立ち、誰に語るともなく(読者に語っているのですが)つぶやいているので、わざとらしい雰囲気が出ています。
基本的には、敵やバディやヒロインなど、その場面での会話の相手役を用意するだけでも変わってきます。情報を「知っているキャラ」から「知らないキャラ」へ説明・教授させることで、自然に読者への設定伝達も済ませることができるわけです。
本作の場合、独自設定の多い特殊な職業を扱っているため、「熟練者(知っているキャラ)と初心者(知らないキャラ)」に分けたバディものにすると、設定伝達がスムーズにいきそうです。主人公を初心者にするなら、相棒や導き手は熟練者。主人公を熟練者にするなら、相棒は初心者です。
この際、一石二鳥の工夫として、どちらかを保守的・常識的にして、もう片方を業界の凝り固まった価値観に新風を送る革新派として描くことで二人の対立・対比も描けます。本作の場合は主人公が「熟練者・保守的」なので、相手役は「初心者・革新的」な立場を取らせると、物語全体にピリッとした空気が流れますし、この対立と対比を軸にして、テーマを描きやすくもなります。鉄板で行くならヒロイン、あるいは第一話で登場するオペレーターあたりを相棒・バディポジションに格上げして、上記のような関係を描くことをおすすめします。
孤高の戦士を描きたいのでバディものにするのはちょっと抵抗がある、という場合なら、設定伝達にオペレーターを活用するのは最序盤のみにしつつ、実はあのオペレーターこそが因縁の幼馴染だったのだ、という活用も可能です。
この場合、序盤の設定伝達役と中盤以降のラスボス役を統合できるので、読者の頭を圧迫しにくくなる効果もあります。完結させた後でもいいので、序盤部分に伏線を仕込むのもおすすめです。
物語の冒頭は、「この主人公に今すぐ注目しなくてはいけない理由」を伝えてほしい部分です。その点、「最愛の父を殺したのは、十二歳の誕生日だった。」という一文が序盤にあるため、強い興味を引けています。
ただ、この一文に至るまでが(コンビニに寄るといった)特筆すべき情報のない日常風景なので、そこまでが退屈です。第一話の一行目にこの情報を置いてインパクトを与え、その後に幼馴染との会話に入る方法もあります。最愛の父を殺した理由と幼馴染の存在が終盤の重要な伏線にもなっているため、なるべく早く情報伝達しておくことで、続く第一話でバディを組む相手を描くための展開もスムーズになりそうです。
序盤の話運びに無駄が多いので、伝えるべき情報を徹底的に速やかに・コンパクトにまとめることで、本作の魅力を伝えやすくなります。
◯主人公の主人公性について。
本作の、そして本作の主人公の最も大きな弱点は、主人公がいなかったとしても物語が成立していたことです。組織の存続を守ったわけでも、父のカードを見つけてヒロインの心を救ったわけでもないためです。
設定伝達要員であったり、ヒロインに戦い方を教える存在であったりと、主人公の存在がまったくの無意味なわけではありません。しかし、それは主人公その人である必要性がありませんでしたし、主人公がサブキャラの立ち位置であったとしても同じ結末になっていたと思います。
『とある魔術の禁書目録』一巻の主人公は上条当麻以外にあり得ませんし、『ソードアート・オンライン』『涼宮ハルヒの憂鬱』などもそうです。主人公が主人公のキャラクター(能力や性格や行動や目的や手段など)を持っていたからこその物語が構築されています。この違いが、本作の致命的な弱点です。
主人公が「悪人は全員殺す」という極端な意志を持っている状態ですが、「だからこそ」この問題が起こる、「だからこそ」あの問題を解決できる、といった仕組みが用意できるか否かで、物語の必然性や独自性が強化されていきます。
また、「最後のシュート」は主人公の重要な役目です。問題解決にあたっての最後の一撃をカッコよく決めることは、こと男性向けラノベや漫画においては大切な主人公性です。
第一話のクライマックスでは、ちゃんと主人公がカッコいいシュートを決めて敵を倒していました。しかしそれ以後はサブキャラがシュートを決めることが多く、主人公はアシストもしていないケースもあるため、「この主人公はなんのためにいるんだろう?」という疑問を抱かせてしまいます。最後のクライマックスでは重要なアシスト役を務めていますが、やはり物語の最後は主人公にシュートを決めてほしいところです。
「決定的なアシスト」を担うキャラも、物語の中で強い印象を与えることができます。アシスト役は基本的にはヒロインや導き手に任せて、主人公は最後のシュートを撃って敵に引導を渡す役割であると切り分けると、主人公も仲間もしっかり立たせることができます。
◯ストーリーについて
一話完結型の構成で、短い文量で一定の面白さを提供するスタイルです。
各ストーリーを魅力的に描けてはいるのですが、「一冊の本」「一本の映画」としての大局的な視点が必要だと感じます。公募用ではないウェブ小説として書いていくとしても、この意識があると役に立ちます。「一冊の本」として見た際の、ここまでが導入、ここからが新たな展開、ここがミッドポイントでここからはクライマックスで、といった視点があると、一話完結型の中でも全体のうねりを出せるためです。
各話完結型の特徴として、一話ごとのゲストキャラが問題を持ち込んでくる傾向にあります。それ自体はいいのですが、「一冊の本」の面白さと両立させるにあたり、ゲストキャラが各話だけで退場してしまう現状はもったいないです。
例えば、第二話で登場する一那が、四話の古藤の娘であると発覚し、二話で張っておいた伏線を四話内で回収する(一那も登場する)といった具合に運ぶと、物語全体に因果関係やまとまりを出せます。完全な一話完結型で受賞するケースは稀ですし、なるべく全体に芯が通るように構成を見直していくことをおすすめします。
話運びの基本は「コレが起きたからアレに繋がって、アレの対処をしてたらソレの問題が起きて」という、因果関係の繰り返しです。各話を完全に分離したものと考えるのではなく、二話の事件があったからこそ三話の敵に目をつけられたとか、三話で組織の上層部に喧嘩を売ることになったからこそクライマックスに向けた大問題に繋がるといった「つなぎ」が必要です。
◯設定について
「人間の能力をカードに変える存在がおり、そのカードを使用することで他人の能力を使うことができる」「この世には超能力者が実在し、カード化の能力者によって様々な超能力カードが闇社会に流通している」という二本柱の独自設定が魅力です。ただ、冒頭の日常シーンが長すぎることで、その独自性をアピールする機会を逃してしまっています。
また、設定伝達の肝は「論より証拠」「百聞は一見に如かず」です。地の文でコレコレコウイウ設定ですよと伝えるのではなく、その設定が今まさに表出している様子を描くことでこそ、設定を分かりやすく・面白く伝えることができます。
以上のことから、主人公とヒロインの出会いを早めて、その場で何かしらのカードを使用して「論より証拠」で設定を魅せ、同時に「情報を知らないヒロイン(と読者)に、情報を知っている主人公が教える」形で台詞と地の文で補足、次に敵と出会ってヒロインを巻き込みつつバトルを描くと、第一話が過不足なくスムーズに進みそうです。
第一話の騒動が一通り終わった後で、結末部分に引きとして「実はヒロインはカードの存在を知っており、殺されて奪われた父親のカードを集めようとしている」「実はそのカードの一枚は主人公が所持している」という情報を伝えることで、「父のカードは集まるのか?」「主人公は、ヒロインの父のカードを持っている事実を伝えるのか?」といった疑問を与えると、第二話以降の話を読み進める原動力になります。
カード化の能力者は死んだものとされていますが、実はラスボスがその能力者なのだと判明するくらいの意外性、ひいては「もったいぶらなさ」があってもいいと思います。物語のすべての元凶なので、「一冊の本」のラスボスとしてはこれ以上ない適役です。カード化の能力者を先々で登場させたいなら、この10万文字内のラスボスはカード化能力者だと匂わせておいて、倒した後で「コイツはカード化能力者じゃない。本物は別にいる」と判明させるのも手です。
◯文章について
・死を見たせいか、世界の見え方が変わった。
「死を目の当たりにしたせいか」のほうが雰囲気を出せそうです。
「見る」「言う」は小説において便利すぎる言葉で、気をつけないと際限なく増えてしまいがちです。本作の場合、「言う」は場面によって表現を書き分けたり、うまく省略されたりしていますが、「見る」がやや多用されています。目撃、発見、目に入る、視線を向ける、視界に入る、目を見張る、目を疑う、見つめる、観察する、脳裏に焼き付けるといった具合に、「見る」に類する語彙を増やしていくことで、その場面に適当な表現を選ぶことができます。
・俺が思うに、敵が潜んでいるのは確かだと思う。アイツの性格も考えると、この状況を楽しんでる気配があるようにも思うぞ。
ここでは「思う」が多いので、
・俺が思うに、敵が潜んでいるのは確かだ。アイツの性格からして、この状況を楽しんでやがるぞ。
あたりに改稿したほうが良さそうです。「僕が思うに、敵が潜んでいる可能性は高い」「どこか楽しんでる気配を感じる」などでも自然です。
この文章の他にも、「分かってると思うけど」「思っていたより楽勝だった」「いないと思うよ」「どう思ったのかな」など、「思う」は全体的に多用されています。
同じ言葉の連続は文章において悪手とされています。一度「見」と「思」の一文字ずつを原稿内で検索して、それぞれの使用率が四~三分の一以下になるように調整すると、小説全体がグッと読みやすくなると思います。
・「佐原の意見は興味深いね」
嫌味なエリートである古藤にしてはかなり素直な感想であり、褒めているとも取れるレベルです。この時点の古藤からすれば、佐原は組織の落ちこぼれであるため、もう少し皮肉めいた言葉が出てきそうです。あるいは、珍しく肯定的な言葉に困惑する佐原の反応を見せるなどすると、台詞が馴染みます。
・古藤の忠告を受けて、俺はグラウンドに行ってみることにした。
「忠告を受けた後、それとは関係なしに(なんとなく)グラウンドへ行ってみることにした」
「忠告を受けたために、グラウンドへ行ってみることにした」
の二つの意味に読めそうです。普通に読むと後者しかありませんが、一方で古藤は「グラウンドへ向かえ」という内容の忠告はしていないので、文の前後で意味が通じなくなります。「古藤の忠告をどんなふうに解釈したからグラウンドへ向かったのか」が伝わっていないので、ここの思考の流れを書いておくと自然です。
・あの地獄を生き残った者は、すべからく最強の戦士だ。
「すべからく」は誤用されがちな言葉です。字面でイメージされがちな「すべて」という意味ではなく、「必ず・無論のこと・当然のこととして、◯◯をするべき」といった意味を持ちます。漢字では「須く」であり、「必須」という言葉を思い出すと分かりやすいと思います。
例文としては「上達したい人は、すべからく見るべき動画だ」「スポーツの前には、すべからく準備運動すべきだ」「親とは、すべからく子の体調を気にするものだ」「今はすべからく結婚せよという時代ではない」などです。
・デーブルに置いたグラスには、濡れた氷だけが煌めいていた。
テーブルの「テ」に濁点がついています。誤字脱字などのミスはこの箇所だけでした。文量に対して、非常に誤字の少ない作者だと言えます。
会話に顕著ですが、文章表現を工夫しようという努力はあちこちに光っているので、「見る」「思う」に気をつけて地の文を改善すれば、更に文章が磨かれていきそうです。
以上が、10万文字を拝読した際にお伝えする指摘内容のサンプルです。
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