「なんとなく違和感があるけど、女性だから大丈夫だろう」
そう感じて、打ち消してしまったことはありませんか。
同性の相手には、つい気が緩んでしまうことがあります。
特に女性の場合、「同じ女性だから、わかり合える」「自分と似た価値観を持っているはずだ」そう感じるのは、当然のこと。むしろそう感じない方が不自然なくらいです。
でもその「わかり合える」という感覚は、自分の価値観を相手に重ねた「投影」である場合があります。
実際、エプスタイン事件の被害者の多くが語っていることがあります。入口は、エプスタインの相棒の女性:Ghislaine Maxwellへの信頼でした。「こんな素敵な女性が」と感じたから、警戒が解けてしまったのです。
「同性だから安全」は必ずしも正しくありません。むしろその思い込みが、最大の盲点になることがあります。
犯罪学者・行動分析家・弁護士として30年以上にわたり犯罪学を研究し、CNNなどで活躍するDr. Casey Jordan。
彼女はCrimeConの講義でこう語っていました。
Dr. Casey Jordan
男性の連続殺人犯の動機が性的衝動・スリル・権力支配であるのに対して、女性の場合は金銭的な利益、生活の安定、そして自分にとって都合の悪い問題や人物を「静かに排除すること」が主な動機だと言います。
被害者は見知らぬ他人ではなく、身近な人物であることが多く、毒殺など目立たない手段を使う傾向があります。
「高度に組織的で、目立たない」——これが女性の犯罪者の最大の特徴です。発覚しにくく、気づいた時には深く関係が進んでいることが多いのも特徴の一つです。
主なタイプ
いくつかのタイプに分類して特徴を見てみましょう。
ブラックウィドウ
夫や家族を保険金目的で毒殺するタイプです。貧困や虐待の背景を持つことが多く、長期間にわたって周囲に気づかれないまま犯行を続けるケースがあります。表では、悲劇のヒロインを演じているから誰も疑わないのです。
死の天使(介護者型)
看護師・介護士として患者を殺害するタイプです。支配欲や注目欲求が動機となっており、「献身的な介護者」という仮面の下に隠れています。背景にはメサイヤコンプレックス(救世主願望)が潜んでいることもあります。「自分がこの人を苦しみから解放してあげている」という歪んだ救済意識が、犯行を正当化します。誰かが気づいて声を上げても、「あんなに患者さんに優しい人がそんなことをするはずがない」と周囲に信じてもらえない——それがさらなる被害を生むのです。
共犯パートナー型
男性パートナーと共に犯行を行うタイプです。単独では動かず、パートナーの影響下で行動することが多いです。ただしここで注意したいのは、全員が自らの意志で動いているわけではないということです。コアーシブコントロール(強制的支配)のもとで動かされているケースもあります。虐待や脅迫により、逆らえば自分の身に危険が及ぶと感じている場合、犯罪に加担せざるを得ない状況に追い込まれることがあるのです。
「なぜ逃げなかったのか」と問われても、トラウマボンディング、認知の歪み、経済的な依存——逃げられない理由は一つではありません。加害者と被害者の境界線は、外から見るほど単純ではないのです。
精神疾患型
統合失調症や双極性障害、境界性パーソナリティ障害など、重篤な精神疾患を抱えるケースです。このタイプは他のタイプと比べて比較的まれです。精神疾患そのものが犯行の直接的な原因とは言い切れませんが、現実の認識や感情のコントロールに困難を抱えていることが多く、支援の届かない環境が背景にあるケースも少なくありません。
ミュンヒハウゼン代理症候群型
同情や注目を得るために、子どもを意図的に傷つけたり、病気にさせたりするタイプです。目に見える身体的な傷だけとは限りません。実際には存在しない症状を医師に訴えて不必要な治療を受けさせる、薬を過剰投与する、栄養を意図的に制限する——さらには、心理的・精神的な症状を「演出」して子どもを精神科治療に引き込むケースもあります。「心配する親」を完璧に演じながら子どもを支配するため、医療従事者でさえ気づきにくいのが特徴です。
権力掌握型(社交的捕食者)
これは、Dr. Jordanの講義にはなかったタイプです。私自身が、「これは独立したタイプとして」認識したものです。
社会的地位・人脈・カリスマ性を武器に、ターゲットを探し・信頼を得て・取り込むタイプです。表向きは「特別な機会を与えてくれる人」「導いてくれる存在(メンター)」として振る舞います。
このタイプの特徴は、女性であることへの無警戒を巧みに利用する点です。男性の加害者には警戒する被害者も、同性の女性には「安全だ」と感じやすい——その盲点を突いてきます。
冒頭で触れたGhislaine Maxwellはまさにこのタイプです。社会的地位とカリスマ性を持ち、「素敵な女性」として被害者の警戒を解き、信頼を得た上でエプスタインの犯行に引き込んでいきました。エプスタインという男性パートナーと共に動いていたという点では共犯パートナー型と重なりますが、自ら権力構造の中心として動いていた点がこのタイプの特徴です。
思い込みの罠
ここまで極端な例を挙げてきましたが、こうした心理的傾向は、犯罪にまで至らなくても日常の人間関係の中に潜んでいます。
たとえば先日も日本でニュースにあった「死の天使」。これは医療・介護の現場に限った話ではありません。職場で「自分がいなければ回らない」と周囲に思わせる人、献身的なふりをしながら相手を依存させる人——職業や立場が違っても、同じ心理的傾向を持つ人物は身近に存在することがあります。
「こんなに優しい人がそんなことをするはずがない」
「普通の人だろう」という思い込みが、気づきを遅らせます。そしてその思い込みは、相手が同性である時に特に強く働きます。
同性の相手には、無意識に「自分と同じ価値観を持っているはずだ」と感じやすいものです。自分の感覚や価値観を相手に重ねてしまう——これが「投影」です。でも相手が実際にどんな価値観を持っているかは、その人の行動が積み重なって初めて見えてくるもの。
「同性だから安全」「同じ感覚を持っているはず」——その思い込みが、最大の盲点になることがあります。
身近な関係の中で、違和感を感じたら——その感覚を、打ち消さないでください。
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